離婚後も子どもと家に住み続けたい母子家庭へ|住宅ローン借り換えのポイント

電卓と「借り換え」と書かれた吹き出し、ペンが置かれた机の上に、住宅ローン借り換えに関するメッセージが重ねられている画像

離婚を考えている、または離婚が決まった方にとって、「子どもと一緒に今の家に住み続けられるのか」は非常に重要な問題です。慣れ親しんだ環境で子どもを育てたい、学校を変わらせたくない、そんな思いを抱えながらも、住宅ローンの名義や支払いについて不安を感じていらっしゃることでしょう。

この記事では、離婚後も母子家庭として現在の家に住み続けるために知っておきたい住宅ローンの借り換えについて、具体的な方法と注意点を丁寧に解説いたします。一人で抱え込まず、まずは正しい知識を身につけることから始めましょう。

この記事でわかること

  • 離婚後も家に住み続けるための2つの選択肢
  • 名義変更と借り換えの違いと注意点
  • 母子家庭でも住宅ローンを借り換える方法
  • 借り換えできないときの代替策
  • 無料で使えるシミュレーションと相談窓口
目次

離婚後の住宅ローン問題:母子家庭にとっての現実とは?

離婚を決意したとき、多くの女性が直面するのが住宅ローンの問題です。結婚時に購入した家は夫婦の共同名義になっていることが多く、離婚後もそのままの状態にしておくと、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。

家を出るか、住み続けるかで大きく違う生活設計

離婚後の住まいについて、多くの方が「家を出て新しい生活を始める」か「子どもと一緒に今の家に住み続ける」かで悩まれます。家を出る場合は、新たな住居費用や引っ越し費用、子どもの転校手続きなど、多くの負担が発生します。一方で、今の家に住み続けることができれば、子どもの生活環境を変えずに済み、経済的な負担も軽減できる可能性があります。

しかし、住み続けるためには住宅ローンの問題を解決する必要があります。夫が家を出て行く場合でも、ローンの名義が夫のままであれば、支払いが滞ったときに家を失う危険性があります。また、将来的に家を売却したり、リフォームしたりする際にも、元夫の同意が必要になってしまいます。

共同名義・連帯保証のままだと起きるトラブル

住宅ローンが夫婦の共同名義や連帯保証になっている場合、離婚後もその関係は続きます。例えば、元夫がローンの支払いを滞らせた場合、連帯保証人である妻にも支払い義務が生じます。また、元夫が別の借金を作った場合、共同名義の不動産が差し押さえの対象になる可能性もあります。

さらに、元夫が再婚した場合、新しい配偶者との関係で家の処分を求められることもあります。このような状況を避けるためにも、離婚時には住宅ローンの名義を整理し、できる限り自分名義に変更することが重要です。ただし、名義変更には金融機関の同意が必要で、収入などの条件を満たす必要があります。

母子家庭が家に住み続けるための選択肢

離婚後も家に住み続けるためには、いくつかの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

夫が出ていき妻子が住む場合の対応パターン

最も一般的なパターンは、夫が家を出て、妻と子どもが住み続けるケースです。この場合、住宅ローンの支払いを誰が行うかが重要な問題となります。離婚協議書や公正証書で、元夫がローンの支払いを続けることを約束しても、法的な拘束力には限界があります。

元夫がローンの支払いを続ける場合でも、将来的に支払いが困難になったり、再婚などの理由で家の売却を求められたりする可能性があります。また、元夫が亡くなった場合、団体信用生命保険によってローンは完済されますが、家の所有権は元夫の相続人に移る可能性があります。

このような不安定な状況を避けるためには、可能な限り妻名義での借り換えを検討することをおすすめします。借り換えが難しい場合でも、少なくとも名義の整理や将来的な対応策について、離婚時にしっかりと話し合い、書面で取り決めを残しておくことが大切です。

名義変更+ローン借り換えで「自分名義」にする

最も安全で確実な方法は、住宅ローンを自分名義で借り換えることです。これにより、家の所有権も自分のものになり、将来的な不安を解消できます。借り換えには、金融機関の審査をクリアする必要がありますが、近年は働く女性やシングルマザーへの支援も充実してきています。

借り換えの際には、現在のローン残高や金利、返済期間などを確認し、複数の金融機関で条件を比較することが重要です。また、借り換えには諸費用がかかりますので、総合的な負担を考慮して判断する必要があります。

自分名義での借り換えが成功すれば、元夫との金銭的な関係を完全に断ち切ることができ、精神的な負担も大幅に軽減されます。ただし、借り換えには一定の収入や勤務実績が必要になりますので、事前に条件を確認し、必要に応じて準備を整えることが大切です。

財産分与と住宅ローンの整理を同時に考える

離婚に際しては、財産分与と住宅ローンの整理を同時に検討することが重要です。家の時価とローン残高の差額(オーバーローンかアンダーローンか)によって、取るべき対応が変わってきます。

アンダーローンの場合(家の価値がローン残高を上回る場合)は、家を売却して現金を分割する方法もあります。一方、オーバーローンの場合(ローン残高が家の価値を上回る場合)は、売却しても借金が残ってしまうため、住み続けることを前提に考える必要があります。

財産分与の一環として、元夫が住宅ローンの支払いを続けることを条件に、他の財産の分与を調整することもあります。ただし、この場合も将来的なリスクを十分に検討し、可能な限り書面で取り決めを残しておくことが大切です。

住宅ローンを借り換えるための条件と手続き

住宅ローンの借り換えを成功させるためには、金融機関の審査をクリアする必要があります。シングルマザーの場合、収入面での不安を感じる方も多いでしょうが、適切な準備と対策により、借り換えを成功させることは十分可能です。

借り換えに必要な収入・勤務形態

一般的に、住宅ローンの借り換えには年収300万円以上が目安とされていますが、金融機関によって基準は異なります。正社員として安定した収入がある場合が最も有利ですが、契約社員や派遣社員でも、勤務期間が長く収入が安定していれば審査に通る可能性があります。

パートタイムで働いている場合は、年収が低くても、勤務先の安定性や勤続年数が評価されることがあります。また、児童手当や児童扶養手当などの公的給付も、一部の金融機関では収入として認められる場合があります。

自営業や個人事業主の場合は、確定申告書や決算書などで収入の安定性を証明する必要があります。収入が変動しやすい職業の場合は、過去3年間の平均収入や、将来の収入見込みを丁寧に説明することが重要です。

シングルマザーが使える支援制度と審査対策

シングルマザーが住宅ローンの借り換えを行う際には、いくつかの支援制度を活用できます。まず、住宅金融支援機構のフラット35は、勤続年数の条件が緩やかで、シングルマザーでも利用しやすい制度です。

また、自治体によっては、母子家庭向けの住宅資金貸付制度や利子補給制度を設けている場合があります。これらの制度を利用することで、金利負担を軽減できる可能性があります。

審査対策としては、まず信用情報を確認し、もし過去に支払い遅延などがある場合は、その理由を説明できるよう準備しておくことが大切です。また、頭金を用意することで、借入額を減らし、審査に通りやすくなります。さらに、収入証明書類を整備し、安定した収入があることを明確に示すことも重要です。

必要書類と実際の流れ

住宅ローンの借り換えには、多くの書類が必要になります。主な必要書類には、本人確認書類、収入証明書類(源泉徴収票、給与明細書、確定申告書など)、勤務証明書、現在のローンの残高証明書、物件の登記事項証明書、固定資産税評価証明書などがあります。

離婚に伴う借り換えの場合は、離婚協議書や調停調書、財産分与協議書なども必要になることがあります。また、連帯保証人を立てる場合は、保証人の収入証明書類も必要です。

実際の流れとしては、まず複数の金融機関で事前審査を受けることをおすすめします。事前審査では、大まかな借入可能額や金利条件を確認できます。条件の良い金融機関を選んで本審査を申し込み、審査に通れば契約手続きを行います。契約後は、現在のローンの完済手続きと新しいローンの実行を同時に行います。

母子家庭におすすめの住宅ローン借り換え先とは?

シングルマザーが住宅ローンの借り換えを検討する際は、金利の低さだけでなく、審査の通りやすさや諸費用、サポート体制なども総合的に判断することが重要です。それぞれの金融機関には特徴がありますので、ご自身の状況に最も適した選択肢を見つけましょう。

フラット35など公的融資の活用

住宅金融支援機構のフラット35は、シングルマザーにとって非常に有力な選択肢です。フラット35の最大の特徴は、勤続年数の条件がなく、転職直後でも申し込みが可能であることです。また、全期間固定金利のため、将来的な金利上昇リスクを心配する必要がありません。

フラット35では、年収に占める年間返済額の割合(返済負担率)が重要な審査基準となります。年収400万円未満の場合は30%以下、400万円以上の場合は35%以下という基準がありますが、この計算には児童手当なども含めることができる場合があります。

さらに、フラット35子育て支援型という制度もあり、子育て世帯に対する自治体の支援策と連携して金利を優遇する仕組みもあります。お住まいの自治体でこのような制度があるかどうか、事前に確認してみることをおすすめします。

金融機関別の特徴と選び方(地銀・ネット銀行など)

地方銀行は、地域密着型のサービスを提供しており、個別の事情に応じた柔軟な対応が期待できます。シングルマザーの場合、収入や勤務形態に不安があっても、長年の取引実績があれば優遇してもらえる可能性があります。また、地方銀行では女性向けの住宅ローン商品を提供している場合も多く、金利優遇や手数料割引などの特典があることもあります。

ネット銀行は、一般的に金利が低く設定されており、諸費用も抑えられていることが多いです。ただし、審査基準が厳しく、収入や勤務形態に条件がある場合があります。申し込みから契約まですべてオンラインで完結できるため、仕事や育児で忙しい方には便利ですが、対面での相談ができないため、不明な点は事前にしっかりと確認しておく必要があります。

信用金庫や労働金庫も、地域密着型の金融機関として、個別の事情に応じた対応をしてくれることがあります。特に労働金庫では、勤労者向けの住宅ローンとして、比較的審査が通りやすい商品を提供している場合があります。

無料相談窓口・シミュレーションサイトの紹介

住宅ローンの借り換えを検討する際は、まず無料の相談窓口を活用することをおすすめします。住宅金融支援機構では、全国に住宅ローン相談窓口を設置しており、専門のアドバイザーが無料で相談に応じてくれます。また、各自治体でも住宅相談窓口を設けている場合があります。

インターネット上には、多くの住宅ローンシミュレーションサイトがあります。これらのサイトでは、現在の借入条件と借り換え後の条件を比較し、どの程度の効果が期待できるかを簡単に確認できます。ただし、シミュレーション結果はあくまで目安であり、実際の審査結果とは異なる場合があることを理解しておきましょう。

また、住宅ローンの専門家であるファイナンシャルプランナーに相談することも有効です。多くのファイナンシャルプランナーが初回相談を無料で行っており、個別の状況に応じたアドバイスを受けることができます。

🏠 借り換えできるか不安な方へ

「収入」「世帯状況」などの条件を整理して、借り換えの可能性を確認しましょう。

借り換え条件をチェック(母子家庭向け)

借り換えに失敗した場合の対応策

住宅ローンの借り換え審査に通らなかった場合でも、諦める必要はありません。いくつかの対応策がありますので、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。

名義を変更できないときの対応(共有名義のまま)

借り換えによる名義変更ができない場合は、現在のローンを維持しながら、できる限りリスクを軽減する方法を検討します。まず、離婚協議書や公正証書で、住宅ローンの支払い責任や将来的な処分方法について明確に取り決めを残しておくことが重要です。

共有名義のまま住み続ける場合は、定期的に元夫とコミュニケーションを取り、ローンの支払い状況を確認することが大切です。また、元夫が支払いを滞らせた場合の対応策についても、事前に話し合っておく必要があります。

さらに、将来的に収入が安定したり、勤続年数が長くなったりした段階で、再度借り換えを検討することも可能です。一度審査に通らなかったからといって、永続的に借り換えができないわけではありません。状況の変化に応じて、定期的に見直しを行いましょう。

売却・賃貸という選択肢も視野に

借り換えが困難で、元夫との共有名義を続けることにも不安がある場合は、家の売却や賃貸も選択肢として考える必要があります。売却する場合は、現在の住宅ローン残高と家の市場価値を比較し、売却益が出るかどうかを確認します。

オーバーローンの場合(ローン残高が家の価値を上回る場合)は、売却しても借金が残ってしまいますが、それでも将来的なリスクを考えると、売却して新しいスタートを切る方が良い場合もあります。売却後の住居については、賃貸住宅や公営住宅などを検討することになります。

一方、家を第三者に賃貸に出して、その家賃収入でローンの一部を賄うという方法もあります。ただし、この場合は大家としての責任が発生し、管理の手間やコストも考慮する必要があります。また、賃貸収入は不安定な場合もありますので、慎重に検討することが重要です。

事例紹介:離婚後に借り換えを成功させた母子家庭のケース

実際に離婚後の住宅ローン借り換えを成功させた事例をご紹介します。これらの事例は、同じような状況にある方にとって、具体的な参考になることでしょう。

年収250万円・子1人:公的支援を活用して借り換え成功

Aさん(35歳)は、離婚時に8歳の子どもと一緒に家に住み続けることを決めました。パートタイムで働いており、年収は250万円でした。住宅ローンの残高は1,800万円で、元夫との共有名義となっていました。

Aさんは、まず自治体の住宅相談窓口で相談し、母子家庭向けの住宅資金貸付制度があることを知りました。この制度を利用することで、金利負担を軽減できることが分かりました。また、勤務先に相談して勤務時間を延長し、年収を300万円まで上げることができました。

フラット35の審査を申し込んだところ、勤続年数は短かったものの、安定した収入と自治体の支援制度の活用により、審査に通ることができました。借り換えにより、元夫との共有名義を解消し、安心して子どもと住み続けることができるようになりました。

共有名義から単独名義にした流れと工夫

Bさん(40歳)は、正社員として働いており、年収は400万円でした。離婚時に住宅ローンの残高は2,200万円で、夫婦の共有名義となっていました。Bさんは、子ども2人と一緒に家に住み続けることを希望していました。

借り換えの準備として、Bさんは過去の家計簿を整理し、安定した支出管理ができることを示す資料を準備しました。また、勤務先から将来の昇進・昇給の見込みについて証明書を発行してもらい、収入の安定性をアピールしました。

複数の金融機関で事前審査を受けた結果、地方銀行で良い条件を提示されました。女性向けの住宅ローン商品を利用することで、金利優遇を受けることができました。借り換えの諸費用については、財産分与の一部を活用して準備しました。

よくある質問(FAQ)

住宅ローンの借り換えについて、多くの方が抱く疑問や不安にお答えします。

Q. 離婚しても夫の名義のままで住み続けられますか?

法的には、離婚後も元夫の名義のまま住み続けることは可能です。しかし、この状況にはいくつかのリスクがあります。まず、元夫がローンの支払いを滞らせた場合、家が差し押さえられる可能性があります。また、元夫が家の売却を求めた場合、法的に対抗することが困難になる場合があります。

さらに、元夫が亡くなった場合、家の相続権は元夫の相続人に移ります。元夫が再婚していた場合は、新しい配偶者や子どもが相続人となり、家を失う可能性もあります。

このようなリスクを避けるためには、離婚協議書や公正証書で住居の使用権について明確に取り決めを残しておくことが重要です。ただし、最も安全な方法は、可能な限り自分名義での借り換えを行うことです。

Q. 借り換えできなかったらどうなりますか?

借り換えができなかった場合でも、いくつかの選択肢があります。まず、現在のローンを維持しながら、元夫に支払いを続けてもらう方法があります。この場合は、支払い状況を定期的に確認し、滞納が発生しないよう注意する必要があります。

また、将来的に収入が安定したり、勤続年数が長くなったりした段階で、再度借り換えを検討することも可能です。金融機関によって審査基準は異なりますので、複数の選択肢を検討することが大切です。

どうしても借り換えが困難な場合は、家の売却や賃貸も選択肢として考える必要があります。売却益が出る場合は、その資金で新しい住居を確保することができます。オーバーローンの場合でも、将来的なリスクを考えると、売却して新しいスタートを切る方が良い場合もあります。

Q. シングルマザーでも審査に通る方法はありますか?

シングルマザーでも、適切な準備と対策により、住宅ローンの審査に通ることは十分可能です。まず、安定した収入を証明することが重要です。正社員として働いている場合は最も有利ですが、パートタイムや契約社員でも、勤続年数が長く収入が安定していれば審査に通る可能性があります。

また、頭金を用意することで、借入額を減らし、審査に通りやすくなります。さらに、信用情報に問題がないことを事前に確認し、もし過去に支払い遅延などがある場合は、その理由を説明できるよう準備しておくことが大切です。

公的な支援制度を活用することも有効です。フラット35や自治体の住宅資金貸付制度などを利用することで、審査に通りやすくなったり、金利負担を軽減できたりします。複数の金融機関で事前審査を受けることで、最も条件の良い借り換え先を見つけることができます。

まとめ:母子家庭が家に住み続けるために今できること

離婚後も、子どもと安心して住み慣れた家で暮らし続けたい——そんな願いを叶えるためには、住宅ローンの名義や借り換えの手続きに早めに着手することが鍵です。

自分名義に借り換える方法や支援制度を理解し、今後の生活設計に備えておくことで、金銭的な不安だけでなく、精神的なストレスも大きく軽減できます。

もし「借り換えできるか不安」「何から始めればいいかわからない」と感じているなら、今すぐできる無料シミュレーションや、自治体の相談窓口の確認から始めてください

一歩踏み出すことで、これからの暮らしを前向きに変えていけます。

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📚 参考・出典

監修佐藤 美佳(さとう みか)

住宅ローンアドバイザー / ファイナンシャルプランナー(AFP)

全国のシングルマザー家庭への住宅ローン相談実績を多数持つ専門家。母子家庭特有の資金計画や、名義変更・借り換えの支援に詳しい。

この記事の執筆者:Y.U

母子家庭の支援情報を発信する「快適生活支援ナビ」運営者

自身の経験をもとに、母子家庭の生活設計、住宅支援、就労支援、教育支援に関する情報を発信中。行政の支援制度を実際に活用してきた立場から、読者に寄り添った内容を届けています。

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