奨学金は、経済的に厳しいけれど進学したい、大学で学びたいと望む若者にとっては大変助かる制度です。
近年は奨学金の返済問題なども取り上げられていますが、奨学金によって意欲のある若者が救われていることもまた事実でしょう。
そして奨学金制度を利用する家庭のなかに、一定数以上の母子家庭が含まれています。これは一般的にみても、やはり母子家庭は経済的に余裕がないことの表れなのでしょう。
奨学金を利用するには申請をする必要があります。申請に際しては、申請理由を書かなければなりません。そしてこの申請理由が何なのかによって、奨学金をもらえるかどうか大きく影響してきます。
しかし、これまでに学校などでこのような書き方の指導を受ける機会はありませんでした。そのため、いざ申請理由を書こうとしても何を書いてよいのかわからない、というケースが多くみられます。
就職や転職で必要な履歴書については、書き方や重要なポイントなど、ネットで調べれ数えきれないほど出てくるし、書籍も沢山あります。でも奨学金の申請理由の書き方などを指南してくれる本や、ネットのサイトは数えるほどでしょう。
そこでここでは、奨学金を申し込むときに最も大切で、審査の結果を左右する申請書の書き方、ポイントについて解説していきます。母子家庭でこれから奨学金の利用を考えられている方は、是非参考にして下さい。
奨学金理由、文字数どれくらいがいい?
奨学金を申請する理由は色々とあるでしょう。家庭によってはいくつもあるかもしれません。しかし、その理由を長々と書いても意味はありません。
後に例文を掲載しますが、基本的に奨学金の申請理由は、190文字以上200文字以内で書き上げるようにします。
また、返済の必要がない給付型奨学金を運営しているJASSの申し込みでは、スカラネット下書き用紙が用意されており、その中に「家庭事情情報」として申請理由を記入する欄が設けられていますが、そのマス数がまさしく200文字になっています。
このことから、ほかの奨学金の申請でも、200文字以内が申請理由の目安になるでしょう。
奨学金理由、書く内容のポイントは5つ
奨学金の申請理由は、思いつくままに書きすすめていても思うような内容にはなりません。基本の流れとしては「今自分がおかれている経済状況(収入・支出)」「学ぶことへの熱意」、そして最後に「奨学金を受けたいという意思」で締めくくります。
さらに具体的にいうと「今自分がおかれている経済状況」とは、奨学金の必要性を訴える最も重要な項目です。そのため親の年収やローンなど、経済的にどのくらい苦しい状況なのかを伝えることが必要です。
そしてこの観点からいくと母子家庭は、同様にひとり親世帯である父子家庭と比較しても収入が少ない傾向にあり、審査をする側を説得しやすいといえます。
もちろん、そこに学ぶことへの熱意が感じられなければ奨学金を受けることができないため、進学への意欲も重要になってきます。
これらのことを踏まえ、短い文字数の中で、奨学金を申請する理由を簡潔に、要点を絞ってわかりやすく伝えるには、次の5つのポイントに留意する必要があります。
- 何の為の文章か忘れない
- 起転結を明確に
- 内容を具体的に
- 面接で見破られるような事は書かない
- 一つ一つの文章は短く書く
何の為の文章か忘れない
「なるほど、あなたに奨学金を給付して、勉強させてあげたい」と相手に思わせるのが目的です。
起転結を明確に
短い文章なので、起承転結の承は省略します。
- 起:学費が確保出来ない理由
- 転:でもこんな事を勉強したい、将来こうなりたい
- 結:だから奨学金を貰いたい
内容を具体的に
短い文章ですので、基本的な部分は似てしまうので、エピソードで個性を出します。
家の収支がいくらぐらいで学費が出せないのか、子供が何の為に何を勉強したいのか、細部を伝えましょう。
面接で見破られるような事は書かない
嘘や建前だけの事は、面接でボロが出ます。
一つ一つの文章は短く書く
文章は多く書いて短く削っていきましょう。少ないところに盛っていくと、構造が崩れます。
奨学金理由、母子家庭の場合の例文
先にあげた5つのポイントを意識し、母子家庭の場合の一般的な例文です。
〇年前に父が他界しました。母は家事と両立させる為パート勤務が限界で、毎月の収入は生活費で消え余裕のない状況です。私は幼少時から○○に興味があり、〇〇の研究を大学でより深く行いたいと考えています。希望の大学の学費は月〇〇円ほどです。自分のアルバイト収入で賄おうとすると、週〇日程度働く必要があり、学業との両立に不安があります。母にこれ以上の負担をかけず、学業に専念するため、奨学金の給付を申請します。
(199文字)
これを起転結で分解すると、
起
- 母子家庭になった経緯(父の死亡/離婚)
- 現在の家庭の収支で余裕がない(収入だけではない)事と、その根拠
転
- どんな理由で何を勉強したいのか、具体的に
- そのためにいくら必要になるのか、具体的な金額
- 自分の努力で支払う事ができない根拠
結
- 母のため
- 学業に専念するため
- 奨学金を申請します
となります。
これにあなたの家庭の事情に合わせて修正、取捨選択をしていきます。勉学にそれほど興味が持てないなら、大学進学を就職に繋がる過程として、母に楽をさせたい、という観点で展開しても良いでしょう。
書き方のポイントはわかりました。例文もあります。ではこの申請書は誰が書くべきなのでしょうか?親でしょうか、それとも子供でしょうか?
奨学金理由を親が書くのはやめた方がいい?
次に問題になってくるのが、この「奨学金の申請理由を書くのは誰なのか」という点です。
これまでに紹介した家庭の経済状況が重要になるという観点からいくと、これらを正確に把握している親が書くのがベストだと思うかもしれません。
また子供の方も、「若い自分では説得力のある文章を200文字以内で完成させるのは無理だ」と考えるかもしれません。
しかし結論からいうと、奨学金の申請理由を書くのは子供でなくてはなりません。なぜならば、奨学金とは一種の借金であり、基本的に将来は返済する必要があるからです。
そしてその返済は決して楽なものではないでしょう。そのため申請書類を準備したり、申請理由を書く過程において、徐々に自分の覚悟が決まってくるという行程は省くべきではありません。
また、実際に奨学金を必要としているのも進学を希望しているのも自分自身であり、本人の言葉が読む人の心を動かすからです。代わりに書くのが親だったとしても、どんなに上手く文章を書き上げることができたとしても、本人から出た言葉に勝つものはありません。
それでも自分の文章力に自信がない方のために、もうひとつ簡単な例文を紹介します。
母子家庭にはそこに至るまでの経緯があります。両親の離婚だったり死別、母親が未婚で出産したなど理由は様々です。母子家庭で奨学金の申請理由を書く際は、この「母子家庭になった経緯」を書くとよいでしょう。
そうすると読む側にも、今の経済状況が苦しいことがしっかりと伝わります。
たとえば、「両親は私が〇〇歳の時に離婚しました。それ以来母は私を女手ひとつで育ててくれました…」となり、次に「しかし年収は〇〇万円と決して生活に余裕があるわけではありません…」などと経済状況の説明に続きます。
また学費が生活を圧迫することが予想され、母親の負担を減らしたいことなど、母親に対する気持ちも書くとよいでしょう。
奨学金理由は、読む側に正確に伝わることが一番重要
奨学金理由は様々で、例文では全く当てはまらない場合もあるでしょう。
子供に強い情熱があれば、そのままぶつければ伝わる可能性もありますが、思うがままに書いた文章は思いを伝えられないこともあります。それを補ってくれるのが、今回紹介しました5つのポイントです。
上手に書こうとする必要はありません。なぜ奨学金が必要なのか、どのくらい学ぶ意欲があるのかなど、読む側に正確に伝わることが一番重要です。