母子家庭や父子家庭、ひとり親世帯など、親が父母のどちらかしかいない、いわゆる片親の世帯の場合、総じて経済的に困窮になることが多く、そのため、そういった世帯を支援するために様々な制度が用意されています。
そのような制度は色々な呼び方をされますが、そのうちのひとつが片親手当です。実際に片親手当という手当があるわけではありませんが、片親の世帯を経済的に支援してくれる制度の総称として、使われることがあります。
片親世帯になる理由、原因は様々ですが、最も多いのは、離婚によって母子家庭になる、というケースでしょう。
少し古いですが、厚生労働省の平成28年度の調査では、母子家庭は約123万世帯に対し父子世帯は18.7万世帯と、母子家庭の方が約7倍も多くなっています。
そして母子家庭でよく問題になるのは、やはり経済的な困窮でしょう。子育てをしながら働くことになりますが、女性の社会的基盤は今でも強くなく、収入等の面で男性より苦労する家庭は少なくありません。
先の調査でも、母子家庭の平均年収は約243万円、父子家庭は約420万円で大きな差があります。
ただしかし、片親手当の多くはその受給条件に収入、所得があります。大雑把に言えば、収入が少ない世帯に限定しているのです。そのため、収入の多い父子家庭の利用は少なく、多くは母子家庭で利用されています。
ここでは、片親手当には具体的にどのような手当があり、支援の内容や受給のための条件などについて、詳しく見ていきます。
片親手当にはどんな種類がある?
片親手当の中でも、まず一般的に知られているのは児童手当や児童扶養手当です。
児童手当
児童手当は、0歳から中学校卒業までの子供を扶養している人に支給される手当です。
支給額は子供の年齢で異なり、子供一人につき、3歳未満は一律1万5,000円、3歳以上から小学校修了までは1万円で、3人目からは1万5,000円、中学生になると一律1万円になります。
受給者の所得が限度額以上の場合は、子供一人につき一律5,000円となっています。
児童扶養手当
次に児童扶養手当です。
児童扶養手当は、ひとり親世帯で養育されている子供の生活の安定のために支給される手当です。親の所得額によって、全部支給または一部支給、支給されないに分かれます。
対象者は、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子供、もし障害がある場合は、20歳未満です。一般的には、高校3年生を卒業するまでの子どもが対象ということになります。
支給額は、養育する子供の人数や、親の所得額で変わってきます。
養育する子供が1人の場合、全部支給なら4万3,160円、一部支給なら1万180円~4万3,150円、2人目は全部支給は1万190円、一部支給は5,100円~1万180円、3人目以降は1人につき全部支給で6,110円、一部支給で3,060円~6,100円となります。
一部支給に金額の幅があるのは、所得額によって変わるからです。基本、所得が増えるに従い、支給額は少なくなります。
この2つの手当の他に、片親手当には児童育成手当もあります。
児童育成手当
児童育成手当も児童扶養手当と同じように子供の養育が目的ですが、受給対象や支給額などが異なります。
受給の対象になるのは、18歳までの子供を養育する母子家庭です(子供に障害がある場合は20歳未満)。児童扶養手当はひとり親が対象でしたので、こちらは母子家庭に限定されている、という違いがあります。
支給額は子供1人あたり1万3,500円、障害手当は1万5,500円です。こちらも申請者の所得制限があり、また自治体によってはこの制度自体がないこともあります。
ひとり親家庭住宅手当
片親手当の場合、子供のための支給だけでなく、住宅手当として「ひとり親家庭住宅手当」があります。
ひとり親家庭住宅手当というのは、ひとり親世帯で18歳または20歳未満の子供を養育している人が受けられる手当金で、家賃の一部を援助してもらえます。
こちらも自治体ごとにない所もあり、手当金額も異なってます。
ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親家族等医療費助成制度は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子供、または障害のある子供は20歳未満を養育しているひとり親が受けられる助成制度で、親や子どもが医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担を自治体が助成します。
ただし所得制限があり、限度額以上の人は受けられません。
乳幼児や義務教育就学児の医療費制度
乳幼児や義務教育就学児の医療費制度は、子供が医療機関を受診した時に支払う医療費のうち、自己負担分を助成してくれる制度です。
幼稚園児・保育園児だと「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」、小学校1年から中学3年は「義務教育就学児医療費助成制度(マル子)」となります。
この制度も、自治体によっては制度がないところがあったり、対象年齢・親の所得制限が違います。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、障害がある子供の福祉増進を図るため、20歳未満の障害児を養育している親に手当を支給する制度です。
支給額は、1級は5万2,500円、2級が3万4,970円ですが、親の所得によっては支給されないこともあります。
障害児福祉手当
特別児童扶養手当と似た制度に、障害児福祉手当があります。
こちらは、20歳未満の重度の障害のある子供を養育している親などが支給の対象で、支給額は1万4,880円です。
ただし、受給する親などの前年の所得が一定額以上だと受け取ることはできません。
遺族年金
遺族年金には基礎年金と厚生年金があり、亡くなった人が自営業やフリーランスなら基礎年金、会社員や公務員なら厚生年金となります。
遺族年金で支給される金額は、なくなった人が保険料をいくら納付していたかで変わってきます。またどちらとも、受給要件や受給対象者などが決まってます。
生活保護
生活保護は、生活に困っている人に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障して自立をサポートするもので、受けるには援助をしてくれる人がいないこと、資産が全くないなど条件が決まってます。
具体的には生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭扶助などがあって、受給額は住んでいる地域と収入、家族構成で違います。
この制度は特に片親手当というわけではなく、一般の家庭も対象になっています。
片親手当のほとんどは申請が必要です
以上、片親手当について、どのような種類があるか見てきました。条件はありますが、経済的に支援してくれる制度は沢山ありますよね。
ただし利用に際しては、そのほとんどは、自分で申請しないと支給は受けられません。みなさんの家庭の状況は、黙っているだけでは自治体や役所にはつたわらないからです。
また、支援が必要な世帯かどうかについても、ご自身が手をあげなければわかりません。
申請は、基本的に申請用紙に必要事項を記入し、自治体や役所などから指定された書類を揃えて担当の窓口に提出します。
申請自体はそれほど難しくないのですが、一緒に提出する資料を準備するのが結構手間かもしれません。
どの制度が利用できるのか、あらかじめ自治体や役所のホームページや窓口で確認し、提出書類は同じものになる制度もあるので、一気に揃えると、効率よく申請できるでしょう。