母子家庭のお子さんの大学進学を支える無償化制度の条件と申請方法

「子どもを大学に行かせたいけど、お金のことを考えると不安…」このような悩みを抱えている母子家庭のお母さんは多いのではないでしょうか。教育費の負担は大きく、特に大学進学となるとさらに費用がかかります。でも、ご安心ください。現在は「高等教育の修学支援新制度」をはじめとする様々な支援制度があり、条件を満たせば大学の授業料が無償化されたり、給付型奨学金を受け取ったりすることができます。この記事では、母子家庭のお子さんが利用できる大学無償化制度の条件や申請方法について、分かりやすくご説明します。どのような条件が必要なのか、どうやって申請すればいいのか、一緒に確認していきましょう。

目次

母子家庭が利用できる大学無償化制度の基本

大学進学を考えるとき、気になるのはやはり費用のこと。特に母子家庭では、教育費の負担が大きな壁になることがありますよね。でも実は、2020年4月から始まった「高等教育の修学支援新制度」によって、一定の条件を満たす家庭のお子さんは、大学や専門学校の授業料が減免されたり、返済不要の給付型奨学金を受け取ったりすることができるようになりました。特に母子家庭は所得条件を満たしやすく、この制度の恩恵を受けられる可能性が高いんです。この章では、母子家庭のお母さんが知っておきたい大学無償化制度の基本について、分かりやすく解説していきます。お子さんの将来のために、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。

高等教育修学支援制度とは

高等教育修学支援制度は、2020年4月からスタートした国の制度で、家計が厳しい状況にある学生を対象に、大学・短大・専門学校などの高等教育機関における修学をサポートするものです。この制度は「授業料・入学金の減免」と「給付型奨学金の支給」の二本柱で構成されています。

特に母子家庭にとって嬉しいのは、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象となっており、母子家庭は一般的に所得が低いケースが多いため、この条件に該当しやすいということ。それまでは、大学進学を諦めるか、返済が必要な奨学金を借りるかの選択しかなかった方も多かったと思いますが、この制度により返済不要の支援を受けることができるようになりました。

支援の内容は世帯の所得に応じて3段階に分かれており、最も支援が手厚い「第Ⅰ区分」の場合、授業料と入学金の全額が免除され、さらに給付型奨学金も最大で年間約91万円(自宅外通学の場合)支給されます。「第Ⅱ区分」では授業料と入学金の2/3、「第Ⅲ区分」では1/3が免除されます。奨学金の金額も区分に応じて変わってきます。

この制度の特徴は、従来の貸与型奨学金とは異なり、返済する必要がないこと。お子さんが卒業後に返済の心配をすることなく、新しい生活をスタートできるのは大きな安心ですよね。

母子家庭が対象となる支援の種類

母子家庭のお子さんが利用できる大学進学のための支援は、高等教育修学支援新制度だけではありません。様々な制度を組み合わせることで、より手厚い支援を受けることが可能です。ここでは、母子家庭が活用できる主な支援制度をご紹介します。

母子家庭が利用できる主な教育支援制度
  • 高等教育の修学支援新制度(授業料等減免・給付型奨学金)
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金(修学資金・就学支度資金)
  • 日本学生支援機構の貸与型奨学金(第一種・第二種)
  • 各大学独自の授業料減免制度
  • 自治体独自の母子家庭向け教育支援制度

母子父子寡婦福祉資金貸付金の活用法

母子父子寡婦福祉資金貸付金は、母子家庭のお母さんが子どもの教育のために利用できる重要な支援制度です。この制度には「修学資金」と「就学支度資金」の2種類があり、大学進学に際して大きな助けとなります。

修学資金は在学中の授業料や教科書代などに充てることができ、就学支度資金は入学時に必要な入学金や制服、パソコンなどの購入費用に利用できます。高等教育修学支援新制度で不足する部分を補うことができるため、併用することでより経済的な負担を軽減できるでしょう。

この貸付金は無利子または低金利で、返済期間も長めに設定されているので、返済の負担も比較的軽いんですよ。お住まいの自治体の福祉課や母子・父子自立支援員に相談してみてくださいね。

各大学には独自の授業料減免制度もあります。成績優秀者を対象としたものや、経済状況に応じたものなど様々なタイプがあるので、志望校のホームページや募集要項で確認してみることをおすすめします。

修学支援新制度で受けられる具体的な支援内容

高等教育の修学支援新制度では、世帯の所得に応じて支援額が決まります。具体的にどのくらいの支援が受けられるのか、イメージがわきにくいという声もよく聞きます。ここでは、実際の金額を例に挙げて説明しますね。

この制度では「授業料等減免」と「給付型奨学金」の二つの支援が受けられます。授業料等減免は、文字通り大学や専門学校の授業料と入学金が減免される制度です。国公立大学と私立大学では支援額に違いがあります。一方、給付型奨学金は日本学生支援機構から毎月支給されるお金で、返済不要です。

支援区分授業料減免(国公立)授業料減免(私立)給付型奨学金(自宅)給付型奨学金(自宅外)
第Ⅰ区分(非課税)約54万円約70万円月約3.8万円月約7.6万円
第Ⅱ区分約36万円約47万円月約2.5万円月約5.1万円
第Ⅲ区分約18万円約23万円月約1.3万円月約2.5万円

例えば、第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)に該当する母子家庭のお子さんが、私立大学に自宅から通う場合、年間約70万円の授業料減免と月約3.8万円(年間約46万円)の給付型奨学金を受けることができます。これを4年間続けると、総額で約460万円もの支援を受けられる計算になります。

また、自宅外通学の場合は給付型奨学金の額が増え、月約7.6万円(年間約91万円)となります。一人暮らしでかかる家賃などの生活費の負担を考慮した設計になっているんですね。

大学無償化を受けるための所得条件

大学無償化制度を利用するにあたって、最も重要なポイントの一つが「所得条件」です。母子家庭の多くは、この所得条件を満たしやすい傾向にありますが、具体的にどのような基準があるのか、しっかりと確認しておくことが大切です。住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象となりますが、「うちは該当するのかな?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。この章では、大学無償化制度を受けるための所得条件について詳しく解説します。お子さんの進学を考える前に、ぜひ自分の家庭が対象になるかどうか、チェックしてみてください。

住民税非課税世帯の基準

高等教育の修学支援新制度を利用するための最も基本的な条件は、「住民税非課税世帯またはそれに準ずる世帯であること」です。では、住民税非課税世帯とはどのような世帯なのでしょうか?

住民税非課税世帯とは、その名の通り世帯全員の住民税(市町村民税・都道府県民税)が課税されていない世帯のことを指します。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、前年の所得が一定額以下であれば非課税となります。

母子家庭の場合、一般的な目安として、お母さんとお子さん2人の3人世帯であれば、年間の収入が約200万円以下であれば住民税非課税世帯となる可能性が高いです。ただし、これはあくまで目安であり、扶養家族の人数や各種控除によって変わってきます。

「非課税かどうかわからない」という方は、お住まいの市区町村役場の税務課や、住民税の納税通知書で確認することができます。納税通知書に「均等割」と「所得割」の両方が0円と記載されていれば、非課税世帯です。

なお、住民税非課税世帯でなくても、「それに準ずる世帯」として支援の対象となる可能性があります。次の「世帯年収の目安と支援区分」で詳しく見ていきましょう。

世帯年収の目安と支援区分

高等教育の修学支援新制度では、世帯の所得に応じて支援額が3段階に分かれています。ここでは、それぞれの区分の目安となる年収を見ていきましょう。

世帯構成別の支援区分の目安
  • 第Ⅰ区分(満額支援):住民税非課税世帯
  • 第Ⅱ区分(2/3支援):住民税非課税世帯に準ずる世帯(年収目安:~約300万円)
  • 第Ⅲ区分(1/3支援):住民税非課税世帯に準ずる世帯(年収目安:~約380万円)

母子家庭の場合の年収目安

母子家庭の場合、扶養する子どもの人数によって目安となる年収が変わってきます。例えば、母親と子ども1人の2人世帯の場合と、母親と子ども2人の3人世帯では、支援区分の年収目安が異なります。

2人世帯(母親と子ども1人)の場合、第Ⅰ区分は年収約160万円以下、第Ⅱ区分は年収約250万円以下、第Ⅲ区分は年収約320万円以下が目安となります。3人世帯(母親と子ども2人)の場合は、第Ⅰ区分が年収約200万円以下、第Ⅱ区分が年収約300万円以下、第Ⅲ区分が年収約380万円以下が目安です。

ここで紹介している金額はあくまで目安ですので、実際にどの区分に該当するかは、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターで確認してみるといいですよ。インターネットで「JASSO 進学資金シミュレーター」と検索すれば簡単に見つかります。

また、世帯年収だけでなく、家計の状況も考慮されます。例えば、家計が急変した場合(失業や病気などで収入が大幅に減少した場合)には、前年の所得ではなく、現在の所得見込みで判定されることもあります。このような事情がある場合は、必ず申請時に相談するようにしましょう。

所得条件の確認方法と必要な書類

自分の家庭が大学無償化制度の対象になるかどうか、具体的にどうやって確認すればいいのでしょうか?ここでは、所得条件の確認方法と、申請時に必要となる書類について説明します。

まず、日本学生支援機構(JASSO)のホームページで公開されている「進学資金シミュレーター」を利用すると、簡単に自分の家庭が対象になるかどうかの目安がわかります。このシミュレーターでは、世帯構成や収入を入力するだけで、支援区分や受けられる支援額の目安が表示されます。

より正確に知りたい場合は、市区町村の税務課で「所得証明書」または「課税証明書」を取得することで、住民税の課税状況を確認できます。これらの証明書は、申請時にも必要となる重要な書類です。

STEP
進学資金シミュレーターで確認

JASSOのホームページにアクセスし、「進学資金シミュレーター」で世帯構成や収入を入力して、支援対象となるかどうかの目安を確認します。

STEP
市区町村役場で証明書を取得

お住まいの市区町村役場で「所得証明書」または「課税証明書」を取得します。取得の際は、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要です。

STEP
証明書の内容を確認

取得した証明書で「均等割」と「所得割」の両方が0円であれば住民税非課税世帯です。金額が記載されていても、一定の基準内であれば準ずる世帯として支援対象となる可能性があります。

申請時に必要な書類としては、一般的に以下のものが挙げられます:

申請時に必要な所得関係の書類
  • マイナンバー関係書類(申込者本人と生計維持者のもの)
  • 所得証明書または課税証明書(申込者の生計維持者全員分)
  • 母子家庭であることを証明する書類(児童扶養手当証書のコピーなど)
  • 源泉徴収票または確定申告書の控え(所得を証明する追加書類として)

母子家庭の場合、生計維持者はお母さん一人となりますので、お母さんの所得証明書等が必要です。母子家庭であることを証明するために、児童扶養手当証書のコピーなども用意しておくと安心です。

申請に必要な手続きと注意点

「条件は満たしていそうだけど、申請の手続きはどうすればいいの?」というのは、多くのお母さんが抱える疑問だと思います。大学無償化制度の申請は少し複雑に感じるかもしれませんが、ステップを一つずつ確認していけば大丈夫です。申請時期を逃してしまうと支援が受けられなくなる可能性もあるので、しっかりとスケジュールを押さえておくことが大切です。この章では、申請の流れや必要な書類、よくある質問などについて解説します。申請の際に困らないよう、事前にチェックしておきましょう。

申請の流れとスケジュール

大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)の申請は、基本的に日本学生支援機構(JASSO)への給付型奨学金の申請と、進学予定の学校への授業料等減免の申請の2段階で行います。ここでは、申請の流れとスケジュールについて詳しく見ていきましょう。

申請のタイミングには、進学前の高校3年生の時点で行う「予約採用」と、大学等に入学した後に行う「在学採用」の2種類があります。特に母子家庭の場合は、経済的な見通しを立てやすくするためにも、予約採用での申請をおすすめします。

STEP
高校での説明会に参加

高校3年生の5〜6月頃、高校で奨学金に関する説明会が開催されます。この説明会で申請書類を受け取り、申請方法について詳しい説明を聞きましょう。

STEP
申請書類の準備と提出

必要書類(マイナンバー関係書類、所得証明書など)を揃え、高校の指定する期日までに提出します。通常、7月頃が締め切りとなることが多いです。

STEP
採用候補者決定の通知を受け取る

10月頃、審査結果が通知され、採用候補者となった場合は「採用候補者決定通知」が交付されます。この通知書は大切に保管しておきましょう。

STEP
大学等への進学後に手続き

進学した大学等で、採用候補者決定通知をもとに、進学後の手続きを行います。大学等からの指示に従って授業料等減免の申請も忘れずに行いましょう。

「在学採用」の場合は、大学等に入学した後、4月頃に大学等で行われる説明会に参加し、そこで案内される手順に従って申請します。春の在学採用の締め切りは5月頃、秋の在学採用の締め切りは9月頃が一般的です。

また、家計が急変した場合(失業や病気などで収入が大幅に減少した場合)には、「家計急変採用」という特別な申請区分もあります。こちらは随時申請が可能なので、家計急変の事由が発生したらすぐに大学等の学生課や奨学金窓口に相談しましょう。

必要書類の準備と提出先

大学無償化制度を申請するためには、いくつかの重要な書類を準備する必要があります。ここでは、申請に必要な書類と提出先について詳しく説明します。

申請書類は主に以下のものが必要となります。特に母子家庭の場合は、母子家庭であることを証明する書類も必要になるので注意しましょう。

申請に必要な主な書類
  • 給付奨学金確認書(誓約書)
  • マイナンバー提出書類セット(申込者本人と生計維持者のもの)
  • 所得証明書または課税証明書(生計維持者全員分)
  • 母子家庭であることを証明する書類(児童扶養手当証書のコピーなど)
  • 通帳のコピー(本人名義のもの)
  • 在留カードのコピー(外国籍の場合)
  • 授業料等減免申請書(大学等に入学後)

母子家庭であることを証明する書類の入手方法

母子家庭であることを証明する書類としては、児童扶養手当証書のコピーが最も一般的です。児童扶養手当を受給していない場合は、以下のいずれかの書類で証明することができます。

・戸籍謄本(父親の欄が空欄になっているもの、または父親との離婚が記載されているもの)

・住民票(世帯主がお母さんで、父親が同一世帯に含まれていないもの)

戸籍謄本や住民票は、申請日から3ヶ月以内に発行されたものが必要です。早めに市区町村の窓口で取得しておきましょう。

これらの書類の提出先は、申請のタイミングによって異なります。「予約採用」の場合は在学中の高校、「在学採用」の場合は進学先の大学等の奨学金窓口(学生課など)に提出します。マイナンバー書類のみ、専用の送付用封筒で日本学生支援機構に直接郵送する場合が多いです。

書類の提出期限は厳格に設定されていることが多いので、必ず高校や大学等から案内される期限を守りましょう。提出書類に不備があると審査が遅れたり、最悪の場合は不採用になったりする可能性もあります。わからないことがあれば、早めに高校の担任の先生や進路指導の先生、大学等の奨学金窓口に相談するようにしましょう。

申請時によくある質問と回答

大学無償化制度の申請に関して、多くのお母さんが疑問や不安を抱えています。ここでは、申請時によくある質問とその回答をQ&A形式でご紹介します。

予約採用と在学採用はどちらがおすすめですか?

特に母子家庭の場合は、経済的な見通しを立てやすくするためにも「予約採用」をおすすめします。高校3年生の時点で申請することで、大学等への進学前に支援を受けられるかどうかが分かります。これにより、進学先を検討する際の参考にすることができます。また、予約採用で採用候補者になっていれば、進学後の手続きもスムーズです。

パート収入や児童扶養手当も所得に含まれますか?

はい、パートやアルバイトの収入も所得に含まれます。児童扶養手当も非課税所得ではありませんので、所得に含まれます。ただし、非課税所得(遺族年金、障害年金など)は所得に含まれません。所得の計算方法は複雑ですので、日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」を利用して、自分の家庭が対象になるかどうかの目安を確認することをおすすめします。

申請した年度と進学した年度で所得が変わった場合はどうなりますか?

予約採用で申請した時点では前年度の所得で判断されますが、進学時には改めてその時点での最新の所得で支援区分が確定します。そのため、高校3年生の時に予約採用で第Ⅰ区分と判断されても、所得が増えた場合には支援区分が変更されたり、条件を満たさなくなったりする可能性があります。逆に、所得が減少した場合には、より手厚い支援が受けられる可能性もあります。

申請書類の記入で気をつけるべきポイントはありますか?

申請書類の記入には細心の注意が必要です。特に以下の点に気をつけましょう。「氏名・住所・電話番号などの個人情報は正確に記入する」「収入・所得に関する情報は証明書類と一致させる」「通帳のコピーは口座番号が明確に分かるようにする」「訂正する場合は二重線で消して訂正印を押す(修正液・修正テープは使用不可)」「署名・捺印が必要な箇所は忘れずに行う」もし記入方法に不安がある場合は、高校の先生や大学等の奨学金窓口に相談するとよいでしょう。

申請に関する不明点は、高校の担任の先生や進路指導の先生、大学等の奨学金窓口(学生課など)に相談するのが最も確実です。また、日本学生支援機構のホームページには詳しい情報やQ&Aが掲載されているので、そちらも参考にしてみてください。

無償化制度の対象となる学校と学部

大学無償化制度を利用するにあたって、もう一つ重要なポイントが「対象となる学校」です。実は、すべての大学や専門学校が無償化制度の対象になっているわけではありません。お子さんが希望する進学先が対象校かどうか、しっかりと確認しておくことが大切です。また、同じ大学でも学部や学科によって対象外となる場合もありますので注意が必要です。この章では、無償化制度の対象となる学校や学部について詳しく解説します。進学先を検討する際の参考にしてください。

対象となる大学・短大・専門学校の条件

高等教育の修学支援新制度の対象となるのは、「確認大学等」と呼ばれる文部科学省の確認を受けた大学・短期大学・高等専門学校・専門学校です。すべての学校が対象となるわけではないため、進学を検討している学校が対象校かどうか確認することが重要です。

対象となる学校の条件としては、以下のようなものがあります:

対象校の主な条件
  • 実務経験のある教員による授業科目が一定数以上あること
  • 厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること
  • 社会で自立し活躍できる人材育成を目的としていること
  • アドミッションポリシー、ディプロマポリシー、カリキュラムポリシーを適切に策定・公表していること
  • 財務・経営状況が健全であること

基本的には、ほとんどの国公立大学と多くの私立大学・短期大学・専門学校が対象となっていますが、一部対象外の学校もあります。特に私立の専門学校の場合は、対象外の学校もあるので注意が必要です。

対象校かどうかは、文部科学省や日本学生支援機構のホームページで確認することができます。また、各学校のホームページでも、無償化制度の対象校であることが記載されていることが多いです。不明な場合は、直接学校に問い合わせるのが確実です。

母子家庭のお子さんが進学を考える際は、学校選びの段階から対象校かどうかを意識することで、経済的な負担を軽減することができます。特に私立大学や専門学校を検討している場合は、必ず確認するようにしましょう。

対象外となる学校や学部

大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)は多くの学校を対象としていますが、いくつかの学校や学部は対象外となっています。ここでは、対象外となる主な学校や学部について説明します。

まず、学校の種類としては以下のものが対象外となります:

対象外となる学校の種類
  • 大学院
  • 専攻科・別科
  • 予備校・各種学校
  • 海外の大学(留学先の大学)
  • 文部科学省の確認を受けていない専門学校

注意すべき対象外となる学部・学科

また、確認大学等であっても、一部の学部・学科は対象外となることがあります。特に注意が必要なのは以下のようなケースです。

まず、通信教育課程は基本的に対象外です。ただし、一部の放送大学の科目等履修生は例外的に対象となることがあります。

また、夜間部や定時制の課程も、学校によっては対象外となる場合があります。特に、社会人向けの夜間部プログラムなどは対象外となることが多いので注意しましょう。

私立の専門学校の中には、いわゆる「美容系」や「調理系」など、特定の分野の学校で対象外となっている場合もあります。専門学校を検討されている方は、必ず事前に確認してくださいね。

さらに、「留学生枠」で入学する場合や、「科目等履修生」「研究生」などの正規学生ではない場合も対象外となります。

対象外となる学校・学部に進学する場合でも、日本学生支援機構の貸与型奨学金(第一種・第二種)や、各大学独自の奨学金制度、母子父子寡婦福祉資金貸付金などを利用することは可能です。経済的な支援策を複合的に検討することをおすすめします。

進学先選びで確認すべきポイント

お子さんの進学先を選ぶ際には、大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)の対象校かどうかを含め、いくつかのポイントを確認することが重要です。ここでは、母子家庭のお母さんが進学先選びで確認すべきポイントについて説明します。

まず、基本的なポイントとして、進学を検討している学校が無償化制度の対象校かどうかを確認しましょう。前述のように、すべての学校が対象となるわけではありません。

進学先選びで確認すべきポイント
  • 無償化制度の対象校かどうか
  • 授業料以外の費用(教材費、実習費、施設費など)
  • 学校独自の奨学金制度や授業料減免制度の有無
  • 通学にかかる交通費
  • アルバイトと学業の両立のしやすさ

授業料以外の費用も考慮する

無償化制度は授業料と入学金を対象としていますが、大学生活では他にも様々な費用がかかります。たとえば、教科書や教材費、実習費、施設設備費などの学校納付金、そして通学費や生活費などです。

特に注意が必要なのは、学部や学科によっては実習費や教材費が高額になるケースがあることです。医療系や芸術系の学部・学科では、専門的な機材や材料を使用するため、追加費用が発生することがあります。

また、通学にかかる交通費も重要な検討ポイントです。自宅から通える範囲の学校を選ぶことで、一人暮らしの費用を抑えることができます。ただし、通学時間が長すぎると、学業や学生生活に影響が出る可能性もあるので、バランスを考えることが大切です。

さらに、学校独自の奨学金制度や授業料減免制度についても調査しましょう。多くの大学や専門学校では、国の制度とは別に独自の支援制度を設けています。特に母子家庭を対象とした特別な支援制度を持っている学校もあります。

最後に、お子さんがアルバイトをする可能性を考慮する場合は、カリキュラムの密度やスケジュールにも注目しましょう。授業や実習が過密なスケジュールだと、アルバイトの時間を確保することが難しくなります。オープンキャンパスや学校説明会で、先輩学生の話を聞くことも参考になるでしょう。

母子家庭向け追加支援制度との併用

大学無償化制度は大きな支援ではありますが、それだけではカバーできない費用もあります。特に母子家庭の場合は、経済的な余裕が少ないことが多いので、できるだけ多くの支援制度を活用したいものです。実は、大学無償化制度は他の支援制度と併用することができ、上手に組み合わせることでより手厚い支援を受けることが可能になります。この章では、母子家庭が利用できる追加の支援制度と、大学無償化制度との併用方法について解説します。ぜひ、お子さんの進学のために、複数の制度を組み合わせて活用してください。

児童扶養手当と大学無償化の関係

母子家庭のお母さんにとって、児童扶養手当は重要な収入源の一つです。では、お子さんが大学に進学し、大学無償化制度を利用することになった場合、児童扶養手当はどうなるのでしょうか?

まず、児童扶養手当の支給対象は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童(いわゆる高校生まで)を養育している母子家庭などです。ただし、児童が障害を有する場合は20歳未満まで延長されます。

つまり、通常は子どもが高校を卒業すると児童扶養手当は受給できなくなります。これは、大学無償化制度を利用するかどうかに関わらず同じです。

ただし、複数のお子さんがいる場合は状況が異なります。例えば、上のお子さんが大学に進学し、下のお子さんがまだ18歳未満であれば、下のお子さんについては引き続き児童扶養手当を受給することができます。

また、児童扶養手当の受給資格があることは、大学無償化制度の申請において有利に働く場合があります。児童扶養手当の受給証明書は、母子家庭であることの証明として使用でき、申請手続きがスムーズになることがあります。

さらに、児童扶養手当を受給している(または過去に受給していた)ことで、各種の母子家庭向け支援制度を利用しやすくなる場合もあります。例えば、母子家庭の子どもを対象とした民間の奨学金では、児童扶養手当の受給証明書が申請条件になっていることがあります。

お子さんが大学に進学する際には、児童扶養手当が終了することを前提に家計の見直しを行い、大学無償化制度や他の支援制度をどのように組み合わせて活用するか、計画を立てておくことが大切です。

母子父子寡婦福祉資金の教育資金との組み合わせ

母子父子寡婦福祉資金貸付金は、母子家庭のお母さんが利用できる重要な支援制度の一つです。この制度には「修学資金」と「就学支度資金」があり、大学無償化制度と組み合わせて利用することで、より手厚い支援を受けることができます。

「修学資金」は、大学などの授業料や教科書代、通学費などに充てるための資金です。一方、「就学支度資金」は、入学金や制服、パソコンなどの購入費用に利用できる資金です。どちらも無利子または低金利(連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合は年1.0%)で借りることができます。

資金の種類貸付限度額(国公立)貸付限度額(私立)返済期間
修学資金(大学)月額67,500円月額79,500円20年以内
就学支度資金(大学)500,000円500,000円20年以内
母子父子寡婦福祉資金と大学無償化制度の組み合わせ例
  • 大学無償化制度:授業料と入学金の減免+給付型奨学金
  • 就学支度資金:パソコンや教科書などの初期費用
  • 修学資金:授業料減免で足りない分や、研究費、実習費など

効果的な組み合わせ方の具体例

母子父子寡婦福祉資金と大学無償化制度を効果的に組み合わせる方法を具体的に見ていきましょう。例えば、私立大学に進学する場合を考えてみます。

まず、大学無償化制度の第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)に該当した場合、授業料と入学金が全額免除され、給付型奨学金も最大額が支給されます。しかし、大学によっては授業料以外に施設設備費や実験実習費などの費用が必要です。また、パソコンや専門書など、学習に必要な機材や教材を購入する初期費用もかかります。

こういった大学無償化制度ではカバーされない部分を、母子父子寡婦福祉資金でサポートするという組み合わせ方が効果的なんですよ。特に入学時の出費が大きい時期に就学支度資金を活用すると、経済的な負担を大きく軽減できます。

母子父子寡婦福祉資金の申請は、お住まいの都道府県や市区町村の福祉事務所や子育て支援課などで受け付けています。申請時には、世帯の収入や進学先の情報などが必要になります。大学無償化制度と併用する場合は、どちらの制度でどの費用をカバーするのか、事前に計画を立てておくことをおすすめします。

また、この制度は貸付金なので返済が必要ですが、お子さんが大学を卒業後、一定期間(6ヶ月)の据置期間があり、その後最長20年かけて返済していくことになります。計画的に利用することで、返済の負担を軽減することができます。

自治体独自の母子家庭向け教育支援制度

国の制度だけでなく、各自治体でも独自に母子家庭向けの教育支援制度を設けていることがあります。これらの制度は地域によって大きく異なりますが、大学無償化制度と併用できる場合が多いので、ぜひチェックしてみてください。

自治体独自の支援制度には、主に以下のようなものがあります:

自治体独自の主な支援制度
  • 母子家庭の子ども向け給付型奨学金制度
  • 母子家庭向け教育費補助金
  • ひとり親家庭学習支援事業
  • 母子家庭の子ども向け無利子貸付制度
  • 母子家庭自立支援教育訓練給付金

例えば、東京都では「東京都母子及び父子福祉資金」という貸付制度があり、国の母子父子寡婦福祉資金貸付金に上乗せして利用できる場合があります。また、大阪市では「大阪市こども医療費助成制度」が高校生まで拡大されており、医療費の負担が軽減されています。

さらに、一部の自治体では、母子家庭の子どもを対象とした大学進学のための給付型奨学金制度を設けています。例えば、「ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」や「ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金等事業」などがあります。

これらの制度は、大学無償化制度と併用できるケースが多いですが、一部の制度では併用に制限がある場合もあります。詳細はお住まいの自治体の福祉事務所や子育て支援課、教育委員会などに問い合わせてみてください。

また、民間団体や企業が提供する母子家庭向けの奨学金制度もあります。例えば、「交通遺児育英会」「あしなが育英会」「大学女性協会」などの団体が、母子家庭の子どもを対象とした奨学金制度を設けています。

自治体や民間の支援制度は、申請期間や条件が限定されている場合が多いので、お子さんが高校2年生くらいから情報収集を始めることをおすすめします。早めに計画を立てておくことで、より多くの支援を受けることができるかもしれません。

支援継続のための条件

大学無償化制度は、一度採用されれば卒業まで自動的に継続されるわけではありません。一定の条件を満たし続ける必要があります。せっかく支援を受けられるようになっても、途中で条件を満たさなくなると支援が打ち切られてしまうこともあるのです。これは母子家庭にとって大きな問題になる可能性があります。この章では、支援を継続するために必要な条件について詳しく解説します。学業成績や出席状況、家計の変化など、様々な面から継続条件を確認し、支援が途切れることのないよう注意しましょう。

在学中の成績・単位に関する条件

大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)を継続して受けるためには、学業成績や単位取得状況に関する条件を満たす必要があります。これは、支援を受ける学生に対して、しっかりと学業に取り組むことを求めるための条件です。

具体的には、以下のような条件があります:

学業関連の継続条件
  • GPA(成績平均値)が下位4分の1に属さないこと
  • 修得単位数が標準単位数の6割以上であること
  • 出席率が5割以上であること
  • 学生本人の学習意欲があると認められること

特に注意が必要なのは、GPA(Grade Point Average)と修得単位数です。GPAは各科目の成績を点数化して平均を取ったもので、多くの大学で採用されています。自分の大学でのGPAの計算方法や、どの程度のGPAが「下位4分の1」に該当するのかを確認しておくことが大切です。

修得単位数については、各学年で取得すべき標準的な単位数の6割以上を取得することが求められます。例えば、1年間で40単位が標準とされる大学であれば、少なくとも24単位以上取得する必要があります。

ただし、これらの条件に満たない場合でも、災害や傷病、その他やむを得ない事由があると認められる場合は、例外的に支援が継続されることがあります。何か困ったことがあれば、早めに大学の学生課や奨学金窓口に相談することをおすすめします。

また、各大学によって具体的な基準や適用方法が異なる場合があるので、入学後に必ず大学の学生課や奨学金窓口で確認するようにしましょう。成績不振で支援が打ち切られると、その後の学業継続が難しくなる可能性があるため、日頃から授業にしっかり出席し、計画的に単位を取得することが大切です。

家計状況の変化と支援額の見直し

大学無償化制度では、毎年家計状況が確認され、支援区分(第Ⅰ〜第Ⅲ区分)や支援の継続可否が見直されます。家計状況が変わると、支援額も変わる可能性があるので注意が必要です。

基本的に、毎年夏頃に「在籍報告兼継続願」という書類を提出し、そこで家計状況や学業状況を報告します。家計状況については、前年の所得(住民税情報)をもとに判定されることが多いです。

母子家庭の場合、以下のような変化が支援額に影響を与える可能性があります:

支援額に影響を与える家計の変化
  • お母さんの収入の増加や減少
  • お子さん自身のアルバイト収入の変化
  • 家族構成の変化(再婚、きょうだいの独立など)
  • 転居や住居費の変化
  • 病気や障害など特別な事情の発生

アルバイト収入が支援に与える影響

お子さん自身のアルバイト収入も、支援額に影響を与える可能性があります。基本的に、学生本人のアルバイト収入が年間104万円(給与収入の場合)を超えると、本人も「生計維持者」とみなされ、家計判定に影響します。

ただし、学生のアルバイト収入については一定の控除があります。大学生等の場合、年間130万円までの給与収入であれば、基本的に支援区分への影響は小さいとされています。

とはいえ、アルバイトに時間を取られすぎて学業がおろそかになり、成績不振で支援が打ち切られるというリスクもあります。アルバイトと学業のバランスをしっかり考えることが大切です。

アルバイト収入については、あまり心配しすぎなくても大丈夫ですよ。学業に支障が出ない程度のアルバイトなら、むしろ社会経験としてプラスになることも多いです。ただ、収入が大きく増えた場合は、奨学金窓口に相談してみるといいでしょう。

再婚した場合の支援継続条件

母子家庭のお母さんが再婚した場合、家計状況が大きく変わる可能性があります。再婚相手の収入も含めた世帯全体の収入で支援区分が判定されるため、支援額が減額されたり、場合によっては支援対象外になったりすることもあります。

再婚を考えている場合は、お子さんの教育費についても計画的に考えることが大切です。支援が減額または打ち切りになった場合の対策を、あらかじめ検討しておくとよいでしょう。

また、再婚した場合は速やかに大学の奨学金窓口に報告する必要があります。報告が遅れると、後から支援金の返還を求められる可能性もあるので注意しましょう。

再婚後も引き続き経済的な支援が必要な場合は、大学独自の奨学金制度や、日本学生支援機構の貸与型奨学金(第一種・第二種)への切り替えなども検討できます。状況が変わったら、まずは大学の奨学金窓口に相談することをおすすめします。

休学・留年時の支援継続条件

大学生活の中で、病気やケガ、精神的な問題、家庭の事情などにより、休学や留年をせざるを得ない状況になることもあります。そのような場合、大学無償化制度はどうなるのでしょうか?

基本的に、休学中は支援(授業料等減免・給付型奨学金)が停止されます。これは、休学中は授業料が免除されたり、減額されたりすることが多いためです。休学期間が終了し、復学した時点で支援を再開することができます。

留年の場合は、その理由によって扱いが異なります。病気やケガ、災害など、やむを得ない事情による留年の場合は、申請により支援の継続が認められることがあります。しかし、単純な成績不振による留年の場合は、支援が打ち切られる可能性が高いです。

休学する場合、どのような手続きが必要ですか?

まず、大学の学生課で休学手続きを行います。その後、奨学金窓口で給付型奨学金の休止手続きを行う必要があります。休学が決まったら、できるだけ早く両方の窓口に相談しましょう。復学する際も同様に、大学の学生課と奨学金窓口の両方で手続きが必要です。

留年しそうな場合、どうすればいいですか?

留年が見込まれる場合は、できるだけ早く大学の学生課や奨学金窓口に相談することをおすすめします。特に病気やケガなど、やむを得ない事情がある場合は、医師の診断書など、その事情を証明する書類を準備しておくと良いでしょう。場合によっては、大学の学生相談室やカウンセリングセンターにも相談することで、適切なサポートを受けられる可能性があります。

支援が打ち切られた場合、他にどのような選択肢がありますか?

大学無償化制度の支援が打ち切られた場合でも、日本学生支援機構の貸与型奨学金(第一種・第二種)への切り替えや、大学独自の奨学金制度、民間の奨学金制度などを検討することができます。また、母子家庭の場合は、母子父子寡婦福祉資金貸付金の教育資金も利用できる可能性があります。支援が打ち切られそうになった場合は、すぐに大学の奨学金窓口に相談し、他の選択肢について相談することをおすすめします。

休学や留年は、経済的な面だけでなく、精神的な負担も大きいものです。特に母子家庭の場合は、経済的な余裕が少ないことが多いため、支援が途切れることへの不安も大きいでしょう。困ったときは一人で抱え込まず、大学の学生課や奨学金窓口、学生相談室などに相談することをおすすめします。大学には様々なサポート体制が整っていますので、積極的に活用しましょう。

実際に支援を受けている母子家庭の体験談

ここまで、大学無償化制度の条件や申請方法について詳しく解説してきましたが、「実際にこの制度を利用している人はどんな経験をしているんだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。制度の内容を知るだけでなく、実際に利用している母子家庭の体験談を聞くことで、よりリアルなイメージを持つことができます。この章では、大学無償化制度を利用している母子家庭の体験談をご紹介します。同じような状況にあるお母さんたちの体験から、参考になるヒントや励ましを得ていただければ幸いです。

申請から認定までの実体験

実際に大学無償化制度を利用した母子家庭のお母さんたちの体験から、申請から認定までのリアルな声をご紹介します。これから申請を考えている方にとって、参考になる情報があるかもしれません。

Aさんの場合(40代・子ども1人・関東地方在住)

「高校3年生の夏に予約採用で申請しました。最初は書類の多さに圧倒されましたが、高校の先生が丁寧に教えてくれたので助かりました。特に所得証明書の取得や、マイナンバー関係の書類準備は慎重に行いました。10月頃に採用候補者に決定し、第Ⅰ区分(満額支援)に認定されました。子どもが私立大学に進学しましたが、授業料と入学金が全額免除され、給付型奨学金も毎月支給されています。正直、この制度がなければ大学進学は諦めていたかもしれません。」

Bさんの場合(30代・子ども2人・関西地方在住)

「上の子が大学に進学する際、高校では予約採用の説明を聞き逃してしまい、大学入学後の在学採用で申請しました。4月の入学時は入学金や授業料を全額支払う必要があり、親戚から借りてなんとか工面しました。5月に申請し、7月に認定されて第Ⅱ区分(2/3支援)となりました。遡って4月分から支援が受けられることになり、一度支払った入学金や授業料の一部が返金されました。予約採用に比べると少し手間取りましたが、無事に支援を受けることができて安心しています。」

Cさんの場合(50代・子ども1人・九州地方在住)

「予約採用で申請し、当初は第Ⅲ区分(1/3支援)と判定されました。しかし、申請後に私が病気で働けなくなり、収入が大幅に減少しました。そこで『家計急変』の申請を行ったところ、第Ⅰ区分(満額支援)に変更されました。急な状況変化にも対応してもらえて本当に助かりました。ただ、家計急変の申請は書類準備が大変だったので、余裕をもって取り組むことをおすすめします。」

これらの体験談から分かるように、申請方法や状況はそれぞれ異なりますが、制度を利用することで大きな経済的支援を受けることができています。特に注目すべき点としては、以下のようなことが挙げられます:

体験談から学ぶポイント
  • 可能であれば予約採用で申請するのがおすすめ
  • 書類準備は早めに取り組み、不明点は積極的に相談する
  • 家計急変の制度も覚えておくと安心
  • 高校や大学の担当者からのサポートを積極的に受ける

申請から認定までの流れは複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ確実に進めていけば大丈夫です。困ったことがあれば、高校の先生や大学の奨学金窓口に相談することをおすすめします。

支援を受けて感じたメリットと注意点

実際に大学無償化制度を利用している母子家庭の方々は、どのようなメリットを感じているのでしょうか?また、利用する上で気をつけるべき点はあるのでしょうか?実体験に基づくメリットと注意点をご紹介します。

実感されている主なメリット

大学無償化制度を利用している母子家庭のお母さんやお子さんが実感しているメリットとしては、以下のようなものが挙げられています:

・経済的な負担の大幅な軽減

「授業料と入学金が免除され、さらに給付型奨学金も受けられるため、教育費の心配をせずに子どもの大学生活を応援できるようになりました。特に返済の必要がないことが、大きな安心感につながっています。」

・子どもの選択肢の拡大

「この制度のおかげで、子どもが本当に学びたい学部・学科を選ぶことができました。以前は費用面から選択肢を狭めていましたが、支援のおかげで可能性が広がりました。」

・精神的な余裕の創出

「毎月の家計のやりくりに追われる中で、大学の授業料がどうなるか不安でしたが、この制度のおかげで精神的にかなり余裕ができました。子どもも安心して勉強に集中できているようです。」

・母子ともに前向きな気持ちになれる

「経済的な理由で子どもの夢を諦めさせるのではないかと罪悪感を抱いていましたが、この制度のおかげで子どもの進路を前向きに考えられるようになりました。子どもも『お母さんに負担をかけたくない』という気持ちから解放され、学業に専念できています。」

私も実際に子どもがこの制度を利用していますが、毎月の給付型奨学金があることで、子どもがアルバイトに時間を取られすぎずに済んでいるのがとても良いと感じています。学業とバイトのバランスが取りやすくなりましたね。

利用する上での注意点

一方で、制度を利用する上での注意点やデメリットとしては、以下のような声が聞かれます:

・定期的な書類提出の負担

「毎年、在籍報告や所得に関する書類提出があり、その準備が少し大変です。特に書類の提出期限は厳格なので、スケジュール管理が重要です。」

・成績維持へのプレッシャー

「支援継続のためには一定の成績を維持する必要があるため、子どもにとってはプレッシャーになることもあります。特に大学入学当初は環境の変化で成績が安定しないこともあるので、心配になることがあります。」

・収入増加による支援減額の懸念

「仕事で昇進や収入増があった場合、支援区分が変わるかもしれないという心配があります。子どものためにもっと稼ぎたいという気持ちと、支援が減ることへの不安のバランスが難しいと感じることがあります。」

・対象外の費用への対応

「授業料や入学金は免除されても、教科書代、実習費、サークル活動費、通学費など、大学生活では様々な費用がかかります。これらの費用についても計画的に準備する必要があります。」

これらの体験談から、大学無償化制度は大きなメリットがある一方で、いくつかの注意点もあることがわかります。制度を最大限に活用するためには、これらの点を事前に理解し、対策を考えておくことが大切です。

例えば、成績維持に関しては、大学入学後早い段階から学習習慣を確立するようサポートしたり、大学の学習支援サービスを積極的に利用するよう促したりすることが有効かもしれません。また、授業料以外の費用については、母子父子寡婦福祉資金貸付金などの他の支援制度と併用することで対応できる場合もあります。

よくある質問と回答

大学無償化制度について、母子家庭のお母さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。制度を利用する際の参考にしてください。それぞれの家庭の状況は異なりますので、詳細については各相談窓口でご確認いただくことをおすすめします。この章では、特に母子家庭ならではの状況に焦点を当てた質問と回答を紹介します。経済状況の変化や家族構成の変動など、母子家庭特有の事情に関する疑問にお答えします。

途中から母子家庭になった場合の申請方法

お子さんが高校在学中や大学在学中に離婚や死別によって途中から母子家庭になるケースも少なくありません。そのような場合、大学無償化制度をどのように申請すればよいのでしょうか?

高校生の子どもがいる状態で母子家庭になった場合、いつ大学無償化制度に申請できますか?

高校3年生の予約採用の時期(5〜6月頃)に申請するのが基本ですが、家計が急変した場合は「家計急変」の申請が可能です。離婚や死別で家計が急変した場合、その時点での収入見込みで判定されるため、通常より有利な条件で支援を受けられる可能性があります。まずは高校の進路指導の先生や奨学金担当の先生に相談しましょう。家計急変の申請には、離婚届受理証明書や戸籍謄本など、母子家庭になったことを証明する書類が必要です。

子どもが大学在学中に母子家庭になった場合はどうすればよいですか?

大学在学中に母子家庭になった場合も、「家計急変」として申請することができます。大学の学生課や奨学金窓口に相談し、家計急変の申請手続きを行いましょう。家計急変の申請は随時受け付けられており、認定されれば申請した月の分から支援が開始されます。必要書類としては、母子家庭になったことを証明する書類(離婚届受理証明書や戸籍謄本など)と、今後の収入見込みを証明する書類(給与明細や雇用契約書など)が必要です。

母子家庭になって間もない場合、前年の所得ではなく現在の収入で判定してもらえますか?

はい、可能です。通常、支援区分は前年の所得をもとに判定されますが、家計急変の申請をすることで、現在の収入見込みで判定してもらうことができます。例えば、前年は夫婦共働きで収入が高かった場合でも、離婚により収入が大幅に減少した場合は、現在の状況で判定されます。この制度は、予期せぬ状況変化で経済的に困難になった家庭を支援するための重要な仕組みです。

途中から母子家庭になった場合の申請については、状況によって手続きが異なる場合があります。不明な点があれば、高校の進路指導の先生や大学の奨学金窓口に相談することをおすすめします。また、自治体の母子・父子自立支援員に相談することで、大学無償化制度以外の支援についても情報を得ることができます。

兄弟姉妹が同時に大学に通う場合の支援

母子家庭で複数のお子さんが同時期に大学に通う場合、経済的な負担はさらに大きくなります。このような場合、大学無償化制度はどのように適用されるのでしょうか?

兄弟姉妹が同時に大学に通う場合、それぞれが支援を受けられますか?

はい、条件を満たしていれば、兄弟姉妹それぞれが個別に大学無償化制度による支援を受けることができます。つまり、2人のお子さんが同時に大学に通う場合、2人とも授業料等減免と給付型奨学金を受けられる可能性があります。申請はお子さんごとに個別に行う必要がありますが、家計審査は世帯全体で行われます。

兄弟姉妹が同時に大学に通う場合、支援額に影響はありますか?

兄弟姉妹が同時に大学などに通っている場合、「特別控除」が適用され、家計審査において有利になる可能性があります。これは、世帯の教育費負担が大きいことを考慮した措置です。具体的には、家計審査の際に「就学者控除」という形で、大学生1人につき年間約38万円、高校生1人につき年間約12万円などが控除されます。この控除により、収入が同じでも、兄弟姉妹が同時に就学している場合は、支援区分が上がる(より手厚い支援を受けられる)可能性があります。

兄や姉が大学を卒業すると、下の子の支援額は変わりますか?

兄や姉が大学を卒業すると、「就学者控除」が適用されなくなるため、下の子の支援区分が変わる可能性があります。例えば、これまで第Ⅰ区分(満額支援)だったものが、第Ⅱ区分(2/3支援)に変更される可能性があります。ただし、これは世帯の収入状況や他の控除要素によっても異なります。兄や姉が就職して独立した場合は、世帯構成が変わるため、その点も考慮されます。いずれにせよ、状況が変わった場合は、毎年の継続審査で再判定されることになります。

兄弟姉妹が同時に大学に通う場合は、それぞれが支援を受けられる可能性があり、さらに就学者控除によって有利になる可能性もあります。これは、教育費の負担が大きい多子世帯を支援するための重要な仕組みです。ただし、学年が変わったり、卒業したりする際には、再判定が行われるため、状況の変化には注意が必要です。

支援額の振込時期と使い方のアドバイス

大学無償化制度による支援には、「授業料等減免」と「給付型奨学金」の2種類があります。それぞれの支援がどのようなタイミングで行われ、どのように活用すればよいのでしょうか?

授業料等減免と給付型奨学金はどのようなタイミングで支援されますか?

授業料等減免は、大学等が学生から授業料を徴収する際に、あらかじめ減免した金額で請求される形となります。つまり、学生や保護者が一度全額を支払って後から返金されるのではなく、最初から減額された金額が請求されます(ただし、在学採用の場合は、一度全額を支払った後に返金される場合もあります)。

一方、給付型奨学金は、原則として毎月決まった日(多くは11日)に学生本人の口座に振り込まれます。ただし、初回の振込は認定後となるため、4月入学の場合でも5月や6月になることがあります。その場合、4月や5月分もまとめて振り込まれます。

給付型奨学金の効果的な使い方について教えてください。

給付型奨学金は、学生の学習や生活に必要な費用に充てることを目的としています。効果的な使い方としては以下のような例が挙げられます:

・教科書や専門書、学習用具などの学習関連費用

・通学定期券などの交通費

・自宅外通学の場合は、アパートの家賃や光熱費

・必要に応じたパソコンやタブレットなどの機器

・サークル活動や実習に必要な費用

・基本的な生活費や食費

特に母子家庭の場合は、家計の負担を減らすためにも、学業に関連する費用は給付型奨学金から支出するという考え方が有効です。また、一部を貯金して、急な出費や長期休暇中の費用に備えることもおすすめします。

支援額の管理は親が行うべきですか、それとも子ども自身に任せるべきですか?

これは家庭によって考え方が異なりますが、多くの場合、給付型奨学金は学生本人の口座に振り込まれるため、基本的には子ども自身が管理することになります。ただし、特に大学入学直後は、まだお金の管理に慣れていないこともあるので、親子でコミュニケーションを取りながら進めるのがよいでしょう。

例えば、最初の数ヶ月は一緒に家計簿をつけたり、月ごとの支出計画を立てたりすることで、子どもの金銭管理能力を育てることができます。また、定期的に話し合いの機会を持ち、困ったことがあれば相談できる関係を築くことが大切です。

大学生活は自立への重要なステップです。お金の管理についても、徐々に責任を持たせることで、社会に出た後の自立した生活に備えることができます。

支援額の管理や使い方については、親子でよく話し合うことが大切です。特に大学生活が始まったばかりの時期は、様々な出費や誘惑もあります。計画的なお金の使い方を身につけることは、学生生活を充実させるだけでなく、将来的な自立にもつながります。

また、母子家庭の場合は特に経済的な余裕が少ないことが多いため、緊急時の備えとして、給付型奨学金の一部を貯金しておくことも検討してみてください。病気やケガ、急な出費に備えることで、より安心して学生生活を送ることができます。

母子家庭のお母さんとして、お子さんの大学進学を支援することは大きな挑戦かもしれませんが、様々な支援制度を活用することで、その夢を実現することができます。

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