【2025年版】母子家庭の大学奨学金制度まとめ|無償化との違いと申請の流れ

奨学金を活用して大学進学を目指す母子家庭の高校生と母親のイメージ写真

「母子家庭だけど大学に行かせられるだろうか…」「奨学金ってどれを使えばいいの?」そんな悩みを持つ方に向けて、母子家庭が使える奨学金制度を徹底的に解説します。

この記事では、国の給付型奨学金(JASSO)を中心に、大学独自・自治体・民間の制度まで、母子家庭が利用しやすい支援を網羅しています。

実際に支援を受けて大学に進学した実例や、申請の流れ、注意点まで解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

このページでわかること

目次

奨学金がなぜ必要か

母子家庭の大学進学においては、奨学金の活用がほぼ前提となっています。その理由は明確で、進学に必要な学費・生活費の総額が、世帯年収に比べて非常に高額だからです。

文部科学省「子供の学習費調査」によると、私立大学(文系)の進学にかかる費用は、4年間で平均約400万円にのぼります。一方、母子家庭の平均年収は約250万円(厚労省「全国ひとり親世帯等調査」)であり、年収の1.5倍以上の進学費用を自己負担することになります。

母子家庭の大学進学にかかる費用と支援制度の内訳
私立文系大学に進学する際にかかる費用と奨学金・減免制度の組み合わせ例(モデルケース)

このような背景から、奨学金(特にJASSOの給付型)や大学の授業料減免制度を利用しなければ、進学そのものが難しくなるケースが多くあります。進学を実現するためには、早い段階から制度を理解し、申請の準備を進めることが重要です。

大学進学に必要な費用とは

大学4年間で必要な費用は、進学先によって大きく異なります。国公立大学の場合、入学金28万2,000円と年間授業料53万5,800円で、4年間の総額は約243万円となります。

一方、私立大学の学費は4年間で平均約400万円ですが、学部によって異なります。具体的には以下の通りです。

  • 文系:約119万円(入学金約25万円、授業料約81万円、施設設備費約13万円)
  • 理系:約157万円(入学金約26万円、授業料約114万円、施設設備費約17万円)
  • 医歯系:約489万円(入学金約82万円、授業料約295万円、施設設備費約112万円)

これらに加えて、受験料、教科書代、交通費、一人暮らしの場合は生活費も必要となり、トータルで数百万円の費用がかかります。

支援がなければ進学が困難な現状

母子家庭の平均年収は約260万円程度とされており、大学進学費用を準備することは非常に困難です。国公立大学でも4年間で約240万円~260万円、私立大学では約400万円以上の費用がかかるため、奨学金や支援制度の活用が不可欠となっています。

経済的理由で進学を諦めることがないよう、国や自治体、民間団体がさまざまな支援制度を用意しており、これらを効果的に組み合わせることで、母子家庭でも大学進学は十分可能です。

無償化制度と奨学金の違いとは?

母子家庭が大学進学を目指す際、「奨学金」と「無償化制度(高等教育の修学支援制度)」の違いが分かりづらいという声は少なくありません。この2つは別制度ですが、併用して支援を受けられる仕組みになっています。

簡単に言えば、無償化制度は大学に支払うお金を減らす制度給付型奨学金は本人の生活費を支援する制度です。両方を合わせることで、大学進学にかかる負担を大幅に軽減できます。

高等教育の修学支援制度(無償化)とJASSO給付型奨学金の違いを比較した日本語の図表。支援内容、対象者、申請方法などの違いをわかりやすく視覚的に示している。
高等教育の修学支援制度(無償化)とJASSO給付型奨学金の違いを比較した図。支援の中身や対象範囲、申請の流れなどを視覚的に整理しています。

制度の違いを表で比較

比較項目高等教育の修学支援制度(無償化)JASSO給付型奨学金
主な支援内容授業料・入学金の減免生活費相当の給付金
支援の提供先大学・短大・専門学校本人の銀行口座へ給付
申請方法高校を通じて一括申請同上(予約採用)
対象の収入区分第Ⅰ〜第Ⅲ区分(住民税非課税〜年収約380万円)同上
返済義務なしなし
同時利用◯(自動的にセットで申請)

母子家庭の多くは第Ⅰ区分または第Ⅱ区分に該当することが多く、最も手厚い支援を受けられる可能性があります。「無償化+給付型奨学金」のセットで進学費用の大部分をカバーできるのが特徴です。

これらの制度は、高校3年時の「予約採用」で一括申請となっているため、時期を逃さず情報収集と準備を進めることが重要です。

母子家庭が使える奨学金の種類

どの制度から検討すべきか迷っている方へ

母子家庭の方が利用しやすい奨学金制度は、収入状況・進学先・通学スタイルによって変わります。以下を目安に読み進めてください:

  • 年収が300万円未満:まずはJASSOの給付型奨学金(+無償化制度)をチェック
  • 大学ごとの支援も確認したい:大学独自の奨学金制度へ
  • 地方在住で支援があるか知りたい:自治体の奨学金制度を確認
  • 条件に合わなかった・不採用だった:民間財団や教育ローンも選択肢に

次のセクションで、それぞれの制度を詳しく紹介しています。

JASSOの給付型奨学金(授業料減免制度)

JASSO(日本学生支援機構)の給付型奨学金は、返済不要の支援制度で、世帯年収や資産の条件によって受給額が変わります。母子家庭の場合、特に第Ⅰ区分の対象になりやすく、授業料・入学金の減免と奨学金給付が同時に受けられるのが特徴です。

区分年収の目安支給月額(自宅外)授業料減免入学金減免
第Ⅰ区分~270万円75,800円全額全額
第Ⅱ区分~300万円50,600円2/32/3
第Ⅲ区分~380万円25,300円1/31/3

この制度は「高校3年の春」に予約申込を行い、進学先決定後に確定する流れです。

JASSOの貸与型奨学金(第一種・第二種)

JASSOには、返済義務のある貸与型奨学金もあり、利息の有無や年収制限に応じて第一種・第二種に分かれます。

  • 第一種(無利子):成績基準あり、世帯年収の上限目安:300〜400万円
  • 第二種(有利子):年収上限目安:概ね1100万円

返済は大学卒業後に開始し、15〜20年程度かけて分割返済します。第一種は無利子なので返済総額は借りた額と同じですが、第二種は利率上限3%(実質は0.3〜0.5%前後)です。

母子家庭での利用時は、返済期間や月額返済額のシミュレーションを事前に行うことが重要です。

大学独自の奨学金制度

多くの私立大学では、独自の給付型・減免型奨学金制度を設けています。中には、母子家庭など経済的困難な家庭を対象とした専用支援もあります。

  • 早稲田大学:「めざせ!都の西北奨学金」など経済的困難者対象の給付型支援あり
  • 立命館大学:授業料全額免除の「学業特別奨学生」など制度充実
  • 近畿大学:入試成績・家計状況に応じて最大100%免除型の支援あり

給付額や採用人数、申請条件は大学により異なるため、必ず進学予定校の奨学金ページを確認しましょう。

自治体の奨学金制度

各都道府県・市区町村でも、独自の奨学金制度が用意されています。地方自治体では、地元出身者向けや一定の成績要件を満たす家庭を対象にした支援が多く、貸与型が中心ですが、無利子・返済猶予ありなどの柔軟な制度もあります。

申請時期や提出先が教育委員会や社会福祉協議会である場合もあるため、早めの情報収集が必要です。

民間団体・財団の奨学金

ベネッセ、あしなが育英会、交通遺児育英会など、さまざまな民間財団が給付型奨学金を実施しています。

  • 交通遺児育英会:保護者を亡くした家庭対象の支援
  • ベネッセ育英会:年収制限と進学意欲が要件。給付型
  • 地方銀行・信託銀行財団:居住地や学校により対象限定の制度もあり

採用枠が少ないため、募集要項とスケジュールをこまめに確認することが大切です。

奨学金以外に活用できる支援制度

奨学金のほかにも、母子家庭の進学を支える制度が複数あります。併用を検討することで、さらに経済的負担を軽減できます。

  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金(厚生労働省)
    高校卒業後に大学・短大・専門学校へ進学する子どものために、母子家庭を対象とした無利子の進学貸付が利用できます。世帯の所得や子どもの進学先に応じて上限が異なります。
  • 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
    世帯年収が一定以下の家庭を対象とした教育資金貸付制度です。母子家庭では金利優遇があるほか、保証人不要枠もあり、進学初年度のまとまった資金確保に有効です。

これらはJASSOや大学独自の奨学金とは制度上の性格が異なりますが、併用により入学金・授業料・生活費などを柔軟にまかなうことができます。

金額や条件の比較

母子家庭が利用しやすい奨学金制度として、代表的なものに「JASSO給付型奨学金」があります。この制度では、世帯の収入状況に応じて3つの区分(第I〜III区分)に分かれており、それぞれ支給額や授業料減免額が異なります。

下記は、JASSO給付型奨学金における区分別の支給金額・減免額の目安です。

私立大学(自宅外通学)のケースで比較した例を以下に示します。

区分年額給付額
(私立・自宅外)
授業料減免上限入学金減免上限
第I区分(住民税非課税世帯)約91万円約70万円約26万円
第II区分(準ずる世帯)約60万円約47万円約17万円
第III区分(対象上限世帯)約30万円約24万円約9万円

収入だけでなく、世帯人数や通学形態(自宅通学・自宅外通学)によっても給付額は変動します。また、無償化制度(高等教育の修学支援制度)との併用も可能です。

奨学金を活用して進学した実例

年収250万円のケース

家族構成:母親と本人の2人世帯
世帯年収:250万円
進学先:私立大学文系、一人暮らし

母子家庭の大学進学における私立文系4年間の学費と各種支援の内訳。支援総額360万円に対し自己負担は約40万円
母子家庭の私立文系大学進学モデルケースにおける、学費総額と奨学金・授業料減免などの支援内訳。自己負担は全体の1割以下に抑えられています。

受給した支援

  • JASSO給付型奨学金:年額91万円(第1区分)
  • 授業料減免:年額70万円
  • 入学金減免:26万円
  • 大学独自奨学金:年額24万円

実質負担額

  • 4年間学費:約400万円
  • 支援総額:約360万円
  • 自己負担:約40万円

この事例では、ほぼ無償で大学進学を実現できています。

高校時代からの準備の流れ

  • 高校1年生:進路情報収集、奨学金制度の基礎知識習得、評定平均値3.5以上を目標に学業に専念
  • 高校2年生:具体的な進学先検討、奨学金制度詳細調査、夏休み期間にオープンキャンパス参加
  • 高校3年生春:JASSO予約採用申込(4~5月)、民間奨学金申込開始、進学資金シミュレーション実施
  • 高校3年生秋冬:採用候補者決定通知受領、大学受験、合格後の手続き準備
  • 大学入学後:進学届提出、振込開始、継続手続きの確実な実施

母子家庭が奨学金を申請する手順

奨学金の申請には、進学先や申込時期に応じた正しい手順を踏む必要があります。特に母子家庭の場合、給付型奨学金を確実に受けるには、準備の早さと申請内容の正確さが重要です。

高校在学中からの準備フロー

  • 高校1年生:進路情報を収集し、奨学金制度について基本的な知識を得る。評定平均値3.5以上を目指す。
  • 高校2年生:進学先を絞りながら、JASSO給付型奨学金の制度や申込要件を詳しく調べる。夏休みにオープンキャンパスに参加し、進学後の生活を具体的にイメージ。
  • 高校3年生の4~5月:JASSO「給付型奨学金」の予約採用申請が始まる。学校を通じて申込む必要があるため、担任の先生に早めに相談を。
  • 高校3年生の秋〜冬:採用候補者通知を受け取り、大学受験へ。合格後の進学届提出に向けて準備を整える。

申請に必要な書類の例

  • 住民票の写し
  • 世帯全員の課税証明書(所得証明書)
  • 成績通知表(評定平均値確認用)
  • 奨学金申込書(学校が配布)

申請する奨学金や自治体によって必要書類が異なる場合があるため、必ず進学予定校または在学高校の窓口で最新の案内を確認してください。

申請時の注意点

  • 申請期限を過ぎると一切受け付けてもらえないため、スケジュールを早めに確認する
  • 世帯収入の記入ミス・添付漏れがあると審査に通らない
  • 申し込む奨学金が給付型か貸与型か、内容を正確に理解しておく

進学後の手続き

  • 大学入学後に「進学届」を提出すると、奨学金の支給が正式に始まる
  • 毎年度、継続のための「適格認定」手続きが必要(学業・収入状況を報告)
  • 継続手続きを怠ると、翌年度以降の支給が止まることがある

奨学金は一度申請すれば終わりではなく、進学後も継続的に管理が必要です。特にJASSOの給付型では、学業成績・家計状況の確認が毎年行われるため、注意しましょう。

よくある質問(FAQ)

奨学金と無償化制度は併用できますか?

はい、JASSOの給付型奨学金は「高等教育の修学支援制度(無償化)」と連動しており、併用前提で支給されます。授業料減免+奨学金給付の形で支援されるため、併用可能です。

入学前にお金がない場合はどうすれば?

JASSOの奨学金は入学後に支給開始されるため、初期費用は教育ローン(公庫・銀行)や自治体貸付などで一時的に準備する必要があります。母子家庭向けの無利子貸付もあるため、併用が現実的です。

中退・退学したらどうなる?

給付型奨学金は「返還不要」ですが、虚偽申告・不正受給や無断退学の場合、支給停止・返還命令が出ることもあります。貸与型は返済義務が残るため、中退時点での残額返済が必要です。

成績や評定平均は必要ですか?

給付型奨学金では高校の評定平均などの要件は明記されていませんが、一定の学力や学業意欲の確認が行われます。貸与型(第一種)は成績要件あり。大学進学後も継続申請時に成績基準あり。

ひとり親でも全額支援を受けられますか?

母子家庭であっても、世帯年収が基準を超えていたり、資産要件を満たさないと支給対象外になります。年収270万円以下(第1区分)であれば最大支援が期待できます。

無償化と奨学金の違いは何ですか?

「無償化制度(高等教育の修学支援制度)」と「奨学金(JASSO給付型など)」は、支援の仕組みや対象が異なります。併用も可能ですので、制度の違いや仕組みを理解しておくと進学計画が立てやすくなります。

詳しくは、「奨学金と大学無償化制度の違い」をご覧ください。

まとめ|奨学金を活用すれば母子家庭でも大学進学は可能

母子家庭でも、適切な奨学金制度を選び、早めに準備することで、経済的な負担を最小限に抑えて大学進学が可能です。

特にJASSOの給付型奨学金+授業料減免制度は、収入が少ない家庭に強力な支援を提供しています。また、大学独自の奨学金や自治体・民間団体の支援も併用することで、実質的な無償進学が実現できます。

この記事で紹介した情報をもとに、ぜひ早めの情報収集と申請準備を進めてください。お子さんの未来を経済的な理由であきらめる必要はありません。

関連記事

目次