母子家庭の医療費助成制度を徹底解説|対象・金額・申請方法まとめ【2025年版】

母子家庭の医療費助成制度を説明するグラフィック。机上の聴診器と一万円札の前に、母子がぼかして映っている。

母子家庭では、子どもの医療費が家計に大きな負担となることがあります。そんな中、医療費助成制度は非常に心強い支えとなります。

この記事では、2025年時点の制度内容をもとに、以下のポイントを詳しく解説します。

  • 制度の対象になる世帯と子どもの条件
  • 実際にどれくらい医療費が助成されるか
  • 申請手続きに必要な書類と流れ
  • 他制度との違いや併用の可否
  • 自治体ごとの制度の違いや注意点

ひとり親家庭が安心して医療を受けられるよう、制度の仕組みや活用方法を丁寧に解説しています。

目次

母子家庭の医療費助成制度とは?

ひとり親家庭が医療機関を安心して利用できるよう、医療費の自己負担を軽減する支援制度が整備されています。まずはその全体像をわかりやすく解説します。

母子家庭の医療費助成制度(正式名称:ひとり親家庭等医療費助成制度)は、ひとり親とその子ども、または両親がいない子どもを養育している人が、病院などで診察を受けた際に発生する健康保険の自己負担分の一部について、自治体が助成する制度です。

この制度を利用することで、たとえば毎月6,000円前後かかっていた保険医療費が軽減され、その分を貯金や教育費に充てることができます。申請して医療証(受給者証)を交付されれば、医療機関の窓口で提示するだけで助成が受けられ、「病院代が心配で受診を控えていた」という不安を軽減できます。

対象となる世帯・子ども

どのような家庭や子どもが医療費助成の対象になるのか、条件や年齢制限、例外的なケースについて確認しておきましょう。

母子家庭の定義

この制度の対象となるのは、ひとり親家庭の父または母、あるいは両親のいない児童を監護・養育している方と、その扶養を受けている子どもです。

たとえば、離婚して母親が子どもを育てている場合はもちろん、配偶者が亡くなっている、重度の障害を持っている、生死不明である、または1年以上子どもを遺棄しているといった状況も対象となります。

実際に子どもを養育していれば、祖父母や他の保護者が監護している場合でも対象となることがあります。離婚理由や婚姻状況は問われません。

助成の対象年齢

原則として18歳に達した最初の3月31日までの子どもが対象です。ただし、政令で定める障害がある場合は20歳未満まで支援が継続されます。

高校卒業後は原則対象外となりますが、障害のある子どもの場合は成人まで支援が延長されるため、経済的にも安心して継続的な医療を受けられる仕組みになっています。

父母がいないケースや再婚家庭は対象か

両親がいない場合に祖父母や親族が養育しているケースは対象となります。一方で、再婚や事実婚によって生活をともにしている場合は、原則として「ひとり親家庭」とはみなされず、制度の対象外となります。

ただし、交際中で同居していても「事実婚」とは判断されないケースもあり、状況に応じて個別に判断されます。
なお、児童福祉施設への入所や里親制度のもとで暮らす児童はこの制度の対象外となり、別の支援制度が適用されます。

どのくらい医療費が助成されるのか

実際に制度を利用した場合、どれだけ医療費の負担が軽くなるのかは気になるところです。ここでは、自己負担の割合や具体的な金額例、助成対象外の医療内容について詳しく解説します。

自己負担の有無と割合

医療費助成制度では、住民税が課税されているかどうかによって自己負担の割合が異なります。住民税非課税世帯の場合、基本的に医療費の自己負担はなく、全額助成されます。

一方、住民税課税世帯の場合は自己負担1割が原則であり、ただし多くの自治体では上限額が設けられています。たとえば大阪市では、1医療機関ごとに1日500円(月2日限度)までの負担で済み、それを超える分は不要です。

このように、世帯の所得状況に応じて段階的な支援が受けられるのが特徴です。

入院・通院・薬局での支払い例

支払い例を見てみましょう。ある自治体では、小児科の通院1回につき500円の負担で済み、薬局での処方については無料となっています。複数の医療機関を受診しても、各機関ごとに1日最大500円の負担が適用されます。

月に5回受診した場合でも、月の上限が設定されているため、合計2,500円程度で収まる場合がほとんどです。また、「入院」「通院」「歯科」などの診療科目ごとに助成の扱いが異なる場合もあります。

ただし、入院中の食事代や差額ベッド代などは別途自己負担になることがあります。入院が長期に及ぶ場合でも、自己負担額には限度が設けられており、家計への影響を最小限に抑えられるよう設計されています。

助成されない医療(美容・歯科矯正など)

助成の対象は保険診療に限られます。美容整形、自由診療、歯列矯正(審美目的)、予防接種、健康診断、差額ベッド代、容器代など、保険適用外の医療行為については助成対象外です。

また、2024年(令和6年)10月以降、ジェネリック医薬品があるにもかかわらず、あえて先発医薬品を選んだ場合は「選定療養費」が発生し、この部分も助成対象外となります。

ただし、弱視の治療用眼鏡など、医師が治療上必要と認めたケースについては、例外的に助成対象となる場合もあります。対象になるか不明な場合は、事前に医療機関または自治体の窓口で確認しておくと安心です。

所得制限と判定基準

医療費助成制度を利用するためには、世帯の所得が一定の基準を下回っている必要があります。ここでは、所得制限の金額や計算方法、各種控除の取り扱いについて詳しく説明します。

所得制限の具体的な金額

2025年現在、ひとり親家庭医療費助成制度の所得制限額は、児童扶養手当の基準に準じて設定されています。扶養している子どもの人数に応じて制限額は変動し、収入そのものではなく、所得(=収入から控除を差し引いた額)で判断されます。

さらに、元配偶者などからの養育費は、年間合計の80%を所得として計上されます。多くの自治体では、今後の改正により制限額の引き上げも予定されています。

扶養人数ごとの制限額表

以下は東京都の例です。自治体によって若干異なりますが、おおよその目安として参考になります。

  • 扶養親族0人:所得制限額192万円
  • 扶養親族1人:230万円
  • 扶養親族2人:268万円

扶養人数が1人増えるごとに、おおむね38万円ずつ上限が引き上がります。実際の判定では、控除や扶養状況を加味して細かく審査されます。

扶養控除や寡婦控除の取り扱い

所得の算出にあたっては、以下のような各種控除が適用されます:

  • 障害者控除(1人につき27万円)
  • 特別障害者控除(1人につき40万円)
  • 寡婦控除(27万円)
  • ひとり親控除(35万円)
  • 勤労学生控除(27万円)
  • 医療費控除・雑損控除・小規模企業共済等掛金控除・配偶者特別控除など

たとえ収入が制限を超えていたとしても、こうした控除の影響で所得額が制限内に収まる場合もあります。特に「ひとり親控除」や「寡婦控除」は、母子家庭にとって大きな調整要素になります。

判定が複雑に感じる場合は、自分で判断せず、役所の窓口で相談することをおすすめします。

申請方法と手続きの流れ

制度を利用するには、医療証(受給者証)の交付申請が必要です。ここでは、申請時に必要な書類や手続きの流れ、オンライン申請の可否などを整理して説明します。

必要書類一覧

申請に必要な書類は以下の通りです。自治体によって細かい違いがありますので、事前確認が安心です。

  • 申請書(自治体で配布)
  • 申請者と児童の戸籍謄本(1ヶ月以内)
  • 健康保険証の写し
  • 住民税課税証明書または非課税証明書
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 児童扶養手当証書・遺族年金証書(該当する場合)

すでに児童扶養手当を受給している場合は、必要書類の一部が省略されることがあります。逆に、受給していない場合は戸籍謄本や所得証明の提出が必須です。

状況によっては追加書類が求められることもあります。念のため、事前に役所へ電話確認をしておくとスムーズです。

窓口での申請〜医療証の発行まで

申請手続きは、お住まいの市区町村役所(こども家庭課・福祉課など)で行います。必要書類を揃えた上で、窓口に提出します。

提出後は1〜2週間程度の審査を経て、「ひとり親家庭等医療費受給者証(通称:医療証)」が郵送されます。医療証が届いた日から助成を受けられます。

申請後すぐに病院を受診した場合、助成が間に合わないケースもありますが、その場合はいったん自己負担し、後日「償還払い」の手続きで医療費を返金してもらうことができます。

オンライン申請・郵送申請の有無

近年、多くの自治体でオンライン申請(ぴったりサービス)や郵送申請に対応しています。スマートフォンやPCから24時間申請可能な自治体も増えています。

たとえば保険変更や現況届など、継続的な届出業務もオンライン化が進んでおり、忙しいひとり親世帯にとって大きな助けとなっています。

ただし、初回の申請については窓口での対面提出が必要な自治体もあります。郵送申請の場合は自治体の公式サイトから「申請書・届出書」をダウンロードの上、必要書類とともに送付する形式となります。

いずれにしても、お住まいの自治体の公式ホームページで最新情報を確認のうえ、申請方法を選ぶようにしましょう。

制度を利用した支援事例

実際に医療費助成制度を利用した家庭では、どのような支援が得られたのでしょうか。ここでは自己負担がゼロになったケース、一部負担になったケース、他制度と併用した事例を紹介します。

自己負担0円で済んだ通院例

非課税世帯のAさん(40代・母子家庭)は、小学生の子どもの喘息治療で月3回通院しており、毎回の診察と吸入薬処方に通常なら約2,000円かかっていました。しかし、医療証の交付を受けたことで、すべての診療と薬剤費が全額助成され、自己負担は0円に。年間では7万円近い軽減につながったそうです。

一部自己負担になったケース

住民税課税世帯のBさん(30代・母子家庭)は、医療証を提示しても、1回あたり500円の自己負担が生じました。ただし、通院は月2回程度だったため、月額の医療費は1,000円以内に収まりました。「経済的に厳しい中でも、医療を受けさせてあげられる安心感が大きかった」と話しています。

生活保護や他制度との併用例

中学生の子どもを養育しているCさんは、生活保護と障害者医療制度も併用していました。Cさんの場合、医療費は全額公費負担となり、さらに通院交通費の支給も受けていました。

自治体によっては、医療助成に加えて交通費助成や医療用装具の助成も行っており、制度を組み合わせることでより幅広い支援が受けられる場合があります。

他の制度との違いや併用可否

母子家庭が利用できる制度は複数あります。ここでは、児童扶養手当や乳幼児医療制度、障害児医療制度との違いや、併用できるかどうかを整理します。

児童扶養手当との違い

児童扶養手当は、ひとり親家庭の生活を支える現金給付の制度です。一方、医療費助成制度は、医療機関での支払いを直接軽減する仕組みで、性質が異なります。

両制度は併用が可能であり、むしろ医療費助成を受ける際には児童扶養手当の受給者証が必要となるケースが多いです。児童扶養手当の申請が済んでいないと、医療費助成の手続きに遅れが出ることもあるため、優先して申請しておくとよいでしょう。

乳幼児医療制度との併用可否

乳幼児医療制度は、乳児・幼児の医療費を助成する制度で、所得制限がないケースも多く存在します。対象年齢は各自治体により異なりますが、0歳~就学前、あるいは中学生までが一般的です。

ひとり親家庭医療費助成制度との併用も可能ですが、制度の優先順位が定められており、乳幼児医療が先に適用され、不足分をひとり親制度で補完するという形式になります。

障害児医療との関係

障害のある子どもが対象となる障害児医療費助成制度と、ひとり親家庭の医療費助成制度は、併用が可能です。こちらも優先順位の関係により、障害児医療が先に適用される場合が多くあります。

たとえば、障害児医療で自己負担ゼロとなっていれば、ひとり親制度の適用は不要ですが、一部負担がある場合は、残りをひとり親制度で助成するという形になります。

どの制度が先に適用されるかは、自治体によって細かくルールが異なるため、実際の申請前に必ず確認しておくことをおすすめします。

自治体による制度の違いと注意点

医療費助成制度の内容は、全国で共通ではありません。ここでは、都道府県や市区町村による違いや、引越し時の取り扱いについて解説します。

都道府県別の助成内容比較

ひとり親家庭の医療費助成は、基本的には各都道府県が制度の枠組みを定め、市区町村が運用する形となっています。そのため、地域によって助成内容に差があるのが現状です。

たとえば、A県では中学校卒業までが対象なのに対し、B県では高校卒業まで対象となっている場合があります。また、医療機関ごとの自己負担額(月額上限)や、通院・入院時の交通費助成の有無も異なります。

同じ都道府県内でも、市区町村によって細かい条件が異なるケースがあるため、実際の運用は必ず地元自治体の公式ページや窓口で確認しましょう。

転居時の取り扱いと再申請の必要性

他の市区町村へ転居する場合、医療証は引越し前の自治体で交付されたものとなるため、原則として転出後は使えません。そのため、転居先で再度申請が必要です。

手続きの流れとしては、転出届を提出し、新住所の住民票が発行された後に、転入先の自治体で医療費助成制度の申請を行う形となります。

申請から医療証の発行まで数日かかるため、引越し時期と子どもの通院予定が重なる場合には注意が必要です。事前に医療機関と相談したり、いったん自己負担して後日償還払いを申請するなどの対応が求められるケースもあります。

よくある質問(FAQ)

医療費助成制度に関して、よく寄せられる疑問とその回答をまとめました。

Q. 助成対象外の治療はありますか?

A. あります。美容整形、歯列矯正(審美目的)、自由診療、予防接種、健康診断、差額ベッド代、選定療養費などは助成の対象外です。保険適用外の医療は基本的に助成されません。

Q. 収入が上限ギリギリでも受けられる?

A. 収入ではなく「所得」で判定されるため、各種控除(ひとり親控除・寡婦控除・障害者控除など)を加味した結果、制限内に収まれば受給できます。心配な場合は窓口で相談してみましょう。

Q. 更新手続きは毎年必要?

A. 原則として毎年、更新手続き(現況届)が必要です。自治体によって更新月が異なりますが、更新を怠ると受給資格を失う可能性があります。必ず期限内に手続きを行いましょう。

まとめ|母子家庭の医療費助成は制度を正しく使えば心強い支えに

ひとり親家庭の医療費助成制度は、所得や家族構成に応じて通院・入院・薬局での医療費負担を軽減できる心強い制度です。申請すれば誰でもすぐ使えるわけではなく、所得制限や申請書類などの条件がありますが、それをクリアすれば大きな支援となります。

また、児童扶養手当や乳幼児医療、障害児医療などと併用できるため、複数の制度をうまく組み合わせることで、より充実した医療環境を確保できます。

特に子どもが持病を抱えていたり、定期的な受診が必要な場合には、制度の活用が家計の安定に直結します。お住まいの自治体ごとの制度内容をしっかり確認し、必要に応じて申請しておきましょう。

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この記事の監修者

宮原悦子氏(行政書士・母子家庭支援専門アドバイザー)

行政書士として母子家庭やひとり親世帯への支援申請を数多くサポート。生活保護、医療助成、住宅支援などに詳しく、全国の自治体制度にも精通。実務経験15年以上。

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