母子家庭をはじめとするひとり親家庭には、経済的に困窮している世帯も多いことから、国や自治体などから家賃や光熱費、学費などを対象に、様々な救済制度が用意されています。
日常の生活費の中でも食費や光熱費、学費といった出費はある程度予測がつき、計画的に使うことができますが、突発的に必要になる出費のひとつが医療費でしょう。
自分自身がケガをしたり病気になることもありますし、子供はよくケガをしたり病気になったりするので、その度に病院のお世話になりますよね。
地域によっては子供の医療費は無料というところもありますが、大人の場合はそういうわけにはいきません。健康保険に加入していれば医療費を全額払うことはありませんが、それでも何割かは自己負担、つまり自腹になります。
かかった医療費全額ではないものの、病気の種類やケガの程度、処方される薬によっては、かなりの自己負担を強いられることは珍しいことではないでしょう。
そしてこれが定期的に医療機関にかからないといけないとなると、医療費の家計への負担は一気に高まります。場合によっては医療機関にかかるのをあきらめなくてはいけなくなるかもしれません。
そうならないために各自治体が用意しているのが、ひとり親家庭等医療費助成制度です。このひとり親家庭等医療費助成制度を利用することによって、医療費の負担を軽減することができます。
ひとり親家庭等医療費助成制度って何?初めて聞くけど…という方もいるかもしれません。
そこでここでは、ひとり親家庭等医療費助成制度はどのような制度か、使い方などをを詳しく解説していきます。
ひとり親家庭等医療費助成制度ってどんな制度?
まず、ひとり親家庭等医療費補助制度というのはどのような制度なのか、見ていきます。
千葉県のホームページでは、ひとり親家庭等医療費補助制度は次のように説明されています。
ひとり親家庭等医療費等助成事業の概要
千葉県では、ひとり親家庭の父母等の経済的負担と精神的不安を軽減することにより、ひとり親家庭の父母等の自立を促進し、かつ、ひとり親家庭等の福祉の向上を図るため、保険医療に係る医療費の助成を実施しています。
この助成の実施主体は市町村で、市町村ごとに条例等で助成方法等を定めています。県は市町村に補助金を交付し支援しています。
助成対象者
ひとり親家庭の親とその児童、父母のいない児童、父母のいない児童を監護する養育者
助成対象となる医療費
医療保険の適用となる医療費が助成対象となります。
なお、学校管理下での負傷又は疾病など、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付の対象となる医療費については、ひとり親家庭等医療費等助成事業の助成対象となりませんのでご注意ください。
- 入院・・・保険診療の一部負担金額、食事療養標準負担額及び生活療養標準負担額
- 通院・・・保険診療の一部負担金額
- 調剤・・・保険調剤の一部負担金額
県や市町村によって、表現の仕方や助成の内容などが若干変わりますが、おおよそはこのような内容の制度になっています。
詳しくは、ご自身の住む地域の市町村に確認してみましょう。
ひとり親家庭等医療費助成制度の利用方法ですが、この助成を受けるためには、ひとり親家庭等医療費受給者証の交付を受ける必要があります。
そこで次に、ひとり親家庭等医療費受給者証はどうすれば交付してもらえるのか、見ていきます。
ひとり親家庭等医療費受給者証の交付はどうすればいい?
ひとり親家庭等医療費受給者証は各自治体から発行されるので、基本的には居住地の区役所などの窓口に出向き、申請することになります。
申請に必要な物は通常、以下の通りです。
- ひとり親家庭等医療費受給者証交付申請書
- 戸籍謄本などの児童扶養手当証書などひとり親家庭等であることを証明する書類
- 健康保険証
自治体によってはこのほかにも必要な書類があります。例えば京都府では、以下のものも必要になっています。
- 同居者及び扶養関係者等調書
- 前年の所得(申請日が1~7月までの場合は前々年の所得)が確認できる所得証明書、または、個人番号利用に関する申告書(本年1月2日以降(申請日が1~7月までの場合は前年1月2日以降)に転入された方)
このあたりは自治体で異なるので、必ず確認が必要ですね。
申請は郵送でも受け付けてくれるところもありますが、窓口への提出に限定しているところもあり、こちらも要確認です。
ひとり親家庭等医療費受給者証の使い方
ひとり親家庭医療費受給者証の使い方は至極簡単です。医療機関を受診する際に、ひとり親家庭医療費受給者証を健康保険証と一緒に受付に出して受診します。
この時、もしこの制度を利用出来ない医療機関であった場合は、翌月以降に医療機関で発行された領収書を添えてから自治体の窓口へと申請することで助成が受けられます。
助成金は申請時に指定した口座へ振り込みされますが、助成金の申請の権利は5年間でそれ以降は消滅するので、忘れずに申請しましょう。
ひとり親家庭等医療費受給者証は更新が必要?
ひとり親家庭医療費受給者証は一度受交付されたらずっと使えるわけではなく、更新が必要です。
更新の方法は、毎年10月から11月に「現況届」の提出が必要な自治体もあったり、不要な場合でも毎年助成資格証明書(医療証)の更新手続きは必須です。
使い方は通常の受診で使う健康保険証と一緒に出すだけですが、申請の仕方や自治体ごとに家庭の状況を説明するための書類規定があったりするので、確認が欠かせません。
ひとり親家庭等医療費受給者証の制度はどんな時に対象外になる?
ひとり親家庭医療費受給者証の制度で注意したいのは、使い方よりも適用対象外になる要件が細かいことで、これも自治体ごとに違い事前に調べておかないと利用できないこともあります。
対象外となるのは
- 生活保護を受けている
- 申請者と児童が健康保険に加入してない
- 児童が児童福祉施設などに入所・里親に預けられている
- 児童が父または母の配偶者に養育されている
- 申請者か扶養義務者の所得が所得制限額を超えている
などです。
中でも生活保護を受けている場合と所得制限を超えているときには対象外となるので注意が必要です。
また、健康診断や予防接種は保険の診療外になるので、使用は不可で払い戻しの対象外です。
他にも病院へ入院した時の食事代や保険適用外の費用となる予防接種・文書代金・入金での差額ベッド代などは助成の対象外となります。ただ、健康診断の結果で治療が必要となったときの医療費に関しては対象です。
対象外の時には、「小児医療費助成制度」が使えることがあります。
これは健康保険などに加入している0歳から中学卒業までの子どもに対して保険医療費の自己負担額をを助成するもので、住んでいる自治体により内容が違います。
ひとり親家庭等医療費受給者証の制度、払い戻しとは?
医療機関を受診した時に、ひとり親家庭医療費受給者証を忘れたままで医療費を支払てしまったという場合、手続きをすることで返金されます。これが払い戻しです。
提示しないで支払った場合には福祉課総務係で返還請求の申請を行い、県外の医療機関で受診した時も同様に返還請求申請をします。
申請では医療機関に支払った領収書・医療費受給者証・受給者の健康保険被保険者証、養育者名義の通帳またはキャッシュカードです。補装具代金がかかった場合には医師の診断書と領収書を用意します。
払い戻しの手続は医療費を支払った日の翌日から5年以内で、健康保険証を提示しないで全額自己負担をしたときや補装具等を作ったり、高額療養費に当てはまるときの申請期限は原則2年以内です。
2年以上経過したときは5年以内の領収書があっても払い戻しの申請は出来ません。
払い戻し申請では領収書の原本の提出が原則として必要ですが、健康保険証を提示しないで全額自己負担をしたときなどは、領収書のコピーを児童手当係へと提出します。
また、出した領収書の返却は出来ないので、控えが必要なときには申請をする前に自分でコピーを取っておかないといけません。払い戻しを受けた医療費は税金の医療費控除の対象外になります。