母子家庭では、経済的な理由が原因で生活に困っている方も多いため、救済のための制度が多く設けられています。
その中に、毎年12月に勤務先で行われる年末調整において、給与にプラスされる所得税還付金を増やせる「ひとり親控除」があるのはご存じでしょうか?
もし会社に勤務しているのであれば、還付金をもらうためには決められた条件に当てはまる必要がありますが、年末調整の時に忘れずに申請しましょう。
ただ、年末調整は会社から決められた用紙が配られてきて、該当するところを記入して提出するだけだったので、ひとり親控除を申告するやり方がわからない、という方もいるかもしれません。
そこでここでは、母子家庭をはじめとするひとり親世帯が年末調整で受け取ることができる、ひとり親控除による還付金について、対象になる条件や申告のやり方などについて詳しく解説したいと思います。
母子家庭が年末調整でもらえる還付金、ひとり親控除とは?
ひとり親控除は、国税庁のホームペ-ジで次のように定義されています。
対象項目
所得税
概要
納税者がひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。なお、ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されます。
税金には色々な種類がありますが、ひとり親控除は所得税が対象になっています。また、詳しい条件は後述しますが、納税する人がひとり親に限定されています。
母子家庭もひとり親世帯ですから、もちろん該当します。
母子家庭が年末調整でもらえる還付金、受け取れる条件とは?
母子家庭が受けられるひとり親控除の要件は、下記のとおりです。
ひとり親世帯で、納税者がひとり親であること
ひとり親控除制度の基本の条件です。
・生計を一にする(=養っている)子がおり、その子に収入がある場合は、所得48万円(給与年収に換算すると103万円)以下であること
家計の足しにするため、お子さんがバイトで収入を得ているようなケースも考えられますが、年収103万円を超えるほど多額になってくると、ひとり親控除の条件から外れてしまうので、注意が必要です。
また、以前の寡婦控除では子供以外の扶養家族、親や祖父母、孫などがいることが条件になっていましたが、ひとり親控除では子供のみになっています。
自身の収入、子供に収入がある場合は自身の収入と合算し、世帯の合計所得金額が500万円(給与年収に換算すると678万円)以下であること
ひとり親控除は生活に困っている母子家庭を救済する制度のため、世帯での合計所得金額は500万円以下、という所得制限が設けられています。
事実婚の夫がいないこと
住民票において、続柄が「夫(未届)」の事実婚配偶者が記載されていると、ひとり親控除の条件から外れます。
これは制度上、事実婚は実質的な結婚と見なされるからで、婚姻届を出していなければいい、という形式的な要件だけでは駄目で、実態としてひとり親であることが求められます。
母子家庭で事実婚の夫がいる方もいると思いますが、他の条件には当てはまっていたとしても、ひとり親控除の還付金は受け取れませんので、要注意です。
母子家庭で年末調整をすると還付金はいくらになる?
ひとり親控除をすることによって所得は35万円引き下げられます。その結果として、所得税も最大35万円x税率分だけ下がります。
例えば年収300万円の人の場合、所得税率は5.105%となります。ひとり親控除で35万円引き下げられるので、その分の所得税
35万円 x 5.105% = 17,868円
が還付金として戻ってくることになります。そして条件に当てはまれば毎年この金額が還付金として戻ってくるので、これは助かりますよね。
母子家庭が年末調整でもらえるのは還付金だけじゃない?
ひとり親控除では所得税の還付金のほかに、住民税も控除されることになっています。
住民税における控除額は30万円です。住民税率は10%のため、最大3万円の住民税の引下げ効果があります。
30万円 x 10% = 3万円
なお母子家庭の場合、年収204.4万円未満であれば住民税非課税の対象になるので、そもそも住民税は全くかかりません。
母子家庭が年末調整でもらえる還付金、手続きは難しい?
年末調整において行うひとり親控除の手続きですが、まず勤務先から配布される「扶養控除等(異動)申告書」という用紙において、一番上の欄に住所・氏名・個人番号(マイナンバー)など必要事項を記入します。
そして中ほどのC欄「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」において、「ひとり親」欄にチェックを入れてください。
なおひとり親と似たような意味を持つ「寡婦」欄もありますが、母子家庭の方はここにはチェックを入れないでください。
ひとり親控除は2020年にできた比較的新しい制度ですが、それ以前は「寡婦控除」にて同じように還付金を得ることができました。しかし母子家庭向けとして新たにひとり親控除を創設した際、扶養している子のいない、主に高齢の方向けに寡婦控除を残したという経緯があります。
このためひとり親控除創設後は、ひとり親控除と重複して控除を受けることはできないので、母子家庭が寡婦控除を活用することは通常ありません。
ひとり親控除は生計を一にする子がいることが要件ですので、子が16歳以上であればB欄「控除対象扶養親族」欄、16歳未満であれば下部の住民税に関する事項「16歳未満の扶養親族」欄に子の情報を記入します。
なお、母子両方の個人番号(マイナンバー)記入が必要になりますので、マイナンバーカードを確認して記載してください。
母子家庭が年末調整でもらえる還付金、注意点はある?
以上、比較的簡単な年末調整の手続きで母子家庭の方は還付金を受け取ることができます。
年末調整において得られる所得税還付金だけでなく、住民税においてもメリットがあることはすでに説明しました。
さらに年末調整でチェックしたひとり親の情報は、お住まいの市区町村に勤務先を通じて情報提供がされるため、ひとり親であることによる住民サービス(住民税非課税世帯向け給付金など)を受けるためにも役立ちます。
扶養控除等(異動)申告書にもれなくチェックして、生活を少しでも楽にできるようにしたいですね。