生活保護は、収入が全くない、あるいは少なくて最低限の生活をおくることができない世帯を対象に支給される制度で、需給の条件として収入の上限が決められています。そのため、もし収入が上限を超えれば、生活保護は打ち切られることになります。
生活保護の目的は経済的に困窮している世帯の自立を支援するなので、収入が増えて支給が打ち切りになるのは本来良いことなのですが、中には知らずに生活保護の受給の条件からはずれてしまい、生活保護を受けられなくなったり、受給の条件を満たさなくなったにもかかわらず、生活保護を受け続けるケースは少なくありません。
母子家庭で生活保護を受けている場合は、子供の年齢が支給の条件に大きく関係してきます。
ここでは、どのような場合に母子家庭で生活保護が打ち切りなるか、ひとつづつ見ていきます。
母子家庭で生活保護を受けることができる条件
どのような場合に打ち切りになるか見ていく前に、まず、母子家庭で生活保護を受けることができる条件をおさらいします。
世帯収入が最低限の生活費に満たないこと
最低生活費は地域によって定められています。収入が自分の住む地域の最低限の生活費より低いこと。
資産がないこと
資産というのは、換金するなどして生活費に充てることができるものを言い、貯金、家や土地などの不動産、金やダイヤモンドなどの貴金属、高額な時計、高級バッグなどのブランド品などが相当します。これらの資産がないこと、あるいは、資産の全て換金し、生活費に充てても最低限の生活が送れないこと。
他の制度を利用しても最低限の生活費に届かないこと
年金や国の融資制度、保険金、母子家庭では子供の児童手当、寡婦福祉資金などの制度を利用したとしても、最低限の生活費に届かないこと。
親族などから経済的な支援を受けられない、受けても最低限の生活費に届かないこと
身内などの親族がいない、いても経済的な支援をしてもらえない、あるいは、支援はあるけれども、最低限の生活費に届かないこと
働くことができないこと
自分に何らかの障害があったり、病気の治療のために働くことができない、母子家庭で子供に障害がある、病気でつきっきりになり働くことができない、といったケースです。
母子家庭で生活保護を受けることができる条件は、資産がないことをまず前提とし、それ以外のいずれかに当てはまること、となります。
母子家庭で生活保護が打ち切りになるケース
以下のケースに該当する場合、生活保護打ち切りの対象になります。
世帯収入が最低限の生活費より多くなる
給料があがった、パートなどの仕事を増やしたので収入が増えた、年金が支給されるようになったので収入が増えた、などの理由で世帯収入が最低限の生活費より多くなると、打ち切りの対象になります。母子家庭で結婚をし、相手の収入を合わせると 最低限の生活費より多くなる ときも、打ち切りとなります。
もし相続で親族の遺産をもらって最低限の生活費より多くなった、という場合も打ち切りの対象になりますが、安定した収入とは言えないため、一旦は生活保護を停止しますが、しばらくして再び生活保護が必要になったら、また生活保護を受けることができます。
もし正式に打ち切りになると、再度、生活保護を受けるためには最初から手続きしなくてはならず、時間がかかりますが、停止であれば、それほど時間はかからず生活保護を再開できるからです。
働けるのに働かない
自身が病気や怪我などで働けない、母子家庭で子供が病気の治療のため働けない、といった理由で生活保護を受けていて、病気や怪我が治り、働くことができるようになったにもかかわらず働かない場合、もし働くことで最低限の生活費より多い収入が得られることがわかっていると、打ち切りの対象になります。
担当のケースワーカーは、状況を確認するために定期的に生活保護受給者を訪問します。病気や怪我で働けないのであれば、治療の進み具合を確認し、健康だけど仕事に就けていないのであれば、就職活動の確認をします。
このため、病気や怪我が治っているのに働かないとその理由を問い、正当と判断できる理由がなければ、生活保護は打ち切りと判断されてしまいます。
また、就職活動をしていないのであれば、この場合もその理由が問われます。母子家庭で子供がまだ幼くて手が離せないなど、特に理由が認められないときはハローワークに行くように指導されますが、そういった指導を受けても就職に向けての活動をしないと、打ち切りの対象になります。
ケースワーカーや福祉事務所からの指導を拒否した場合
ケースワーカーや福祉事務所は、生活保護の受給者の自立を助けることを目的に、受給者の家を定期的に訪問します。
その際ケースワーカーは、病気で働けないのに病院に行かない、というような受給者に対して、病院に行くように指示を出す権限があります。
このような受給者の家への訪問や、ケースワーカーの指示や指導に従わない場合、生活保護の打ち切りの対象になります。
生活保護を不正受給している
生活保護の不正受給とは、生活保護を受ける条件に当てはまらない、あるいは当てはまらなくなったにもかかわらず、生活保護を受けることで、意図せずとも不正受給をしていることがあるので、注意しなくてはなりません。
不正受給の例としては、次のものがあります。
①貴金属や不動産などの資産があることを隠している
②給料あがった、親族の援助が得られるようになった、年金をもらえるようになった等で収入が増えたが、申告しなかった、あるいは申告するのを忘れている
③生活保護を受けるときに申請した人とは違う人と住んでいる
④生活保護を受けるために偽装離婚している、母子家庭になっている
⑤反社に属している
①、④、⑤は意図的な不正受給と判断されます。また、②や③は意図的ではないケースもありますが、不正受給であることには変わりません。
②については、収入が増えたときは、定期的に収入を報告する資料に記載するほか、収入があった時点で、必ずケースワーカーか福祉事務所に報告するようにします。
不正受給がわかると、生活保護が打ち切りになるだけではなく、不正受給がわかるまで支給された生活保護費の全額、もしくは一部の返還が求められます。
生活保護の受給者と連絡がとれなくなった場合
ケースワーカーや福祉事務所から何度連絡しても応答がなかったり、住んでいる所を連絡なしに変わるなどして全く連絡が取れない状況が続くと、生活保護は打ち切りになります。
連絡が取れなくなると、まず文書で通達があります。それでも応答がないと、次に弁明機会が与えられます。弁明機会というのは、連絡が取れなかった理由を説明する機会があたえられることで、正当な理由があると認められれば生活保護は継続します。
また弁明機会に来ないと、そのまま生活保護は打ち切りされることになっています。
生活保護を受けている間は、もし外泊をするときはケースワーカーか福祉事務所に連絡しておく必要がありますが、もし言わずに外泊し、その時にケースワーカーが来て外泊していることが分かった場合も、連絡がとれなくなったことに該当することになっています。
許可を得ずに車を所有している
車の所有は原則認められていませんが、本人や母子家庭で子供に障害がある、通院、通学には車がないとできない、といったケースに限定し、車の所有は認められています。
そのため、もし許可を得ずに車を所有していると、生活保護打ち切りの対象になります。
借金をして生活保護の支給金で返済した
生活保護を受けている間は、キャッシングやローンなどの借金をして生活保護費で返済することは認められていません。最低限の生活を送れるように、というのが生活保護の目的であるからで、発覚したときは、返済を止めるように指導されます。
指導を受けても返済を続けると、打ち切りの対象になります。
虚偽の報告をした
生活保護を申請する際、申請書類に嘘を書いた、ケースワーカーや福祉事務所に生活状況を報告する際に虚為の報告をすると、それがたとえ生活保護を受ける条件からはずれなくても、打ち切りの対象になります。