母子家庭の多くは、経済的に苦しい生活を強いられているといわれます。その主な原因としては、収入が少ないことがあげられます。
母親ひとりで生活すべてをこなし、そこに子供の世話が加わります。生活のためには働いて収入を得なくてはなりませんが、生活のことや子供の世話などで働くことができる時間が限られているでしょう。
そのため、長い時間拘束される正社員で働くことは難しく、アルバイトやパートを選ぶことになり、その結果、収入は限られてきます。
このような母子家庭世帯が多いことから、国や自治体では、経済的に支援する制度を設けています。
経済的に苦しい母子家庭の人が利用できる公的制度には、様々なものがあります。
その中でもまず利用を検討するべきなのは、「児童扶養手当」です。子育てのための経済的支援で、収入の少ない世帯が支給の対象です。
そのほかにも住宅手当や医療助成制度などがあり、収入が少なければ利用が可能になっています。
ただ、これらの公的手当を受けても生活が困窮してしまう可能性もゼロではないでしょう。そのような時、最終的な支援制度として利用を考えたいのが「生活保護」です。
生活保護受給時には、公的な手当ては収入とみなされるものの、条件を満たしてさえいれば児童扶養手当などと同時に生活保護を受給できます。
ただし、生活保護の受給が始まった時点で基本、自立に向けた取り組みをしなければなりません。
その場合、もし生活に支障をきたすような持病がある方の場合、まずすべきことは病気の治療です。一方で、病気が軽度であったり健康状態に問題がない人は、経済的な自立に向けて就職活動をする義務が生じます。
これは母子家庭の人に限ったことではなく、生活保護受給者全員に課される義務です。
ただ、そこまで困窮した状態からいきなり、正社員や派遣社員としてバリバリ働くことはなかなかできません。そのため、最も現実的なのは、パートやアルバイトとして働き始める、というものです。
このとき、ケースワーカーから働くように指導されていたとしても、パートで働くことで生活保護が受けられなくなり、かえって生活が困窮するのではないか、そのような不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、生活保護を受給している母子家庭の人がパートで働く際に知っておくべき注意点を紹介します。
母子家庭で生活保護をうけながらパートで働くときの注意点とは?
世帯収入が最低生活費以下になること
生活保護を受給している母子家庭の人がパートで働く際の注意点は、生活保護の継続には世帯収入が最低生活費以下であることが必要、という点だけです。
つまり、パートで働き始めたからと言って、すぐに生活保護の受給が止まることはない、ということです。
ここで言う最低生活費というのは、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算され、住んでいる地域や家族の年齢などによって変わってきます。
実際には働き方にもよりますが、パートで得られる収入が最低生活費を超えることは実際にはなかなかないでしょう。そのため、生活保護を受けていたとしても、働ける人はまずは自立向けた取り組みとして働くことを目指しましょう。
生活保護は、ずっと支援を続けることが目的ではなく、自立のために今の苦しい生活を援助するのが本当の目的だからです。
その際、自分が生活保護受給者であるかどうかは自分から話さない限り、職場に知られることはありません。その事実を話す義務もないので、受給の事実を気にすることなく働くことができます。
収入は必ず担当ケースワーカーに申告する
なお、パートを始めた時点で、どんなに少額であっても収入をすべて担当ケースワーカーに申告する必要がある点には注意が必要です。
たとえ収入がどれほど少額であっても、申告せず生活保護を受け取る行為は不正受給に該当します。収入は必ずわかるので、隠す行為にはデメリットしかありません。
基本的に毎月の生活費が増えることにもつながるので、少しでも収入を得たら逐一ケースワーカーに報告しましょう。
母子家庭で生活保護をうけながらパートで働く、少しでも生活が楽に
生活保護受給中のパートやアルバイトで得た給料収入は、ほかの収入とは扱いが異なるのも特徴です。正しく申請すれば、収入認定額から交通費などの必要経費に加えて、各種控除を受けられます。
このように、給料収入だけ特別な扱いにしている背景には、勤労に必要な必要経費の補填とともに、勤労意欲の増進や自立助長の意図があります。
つまり、働いて自立して生活できるようになるまで、国はしっかりサポートするつもりでいてくれるのです。
必要経費でまとまったお得感を味わうことはまずできないものの、各種控除を適用してもらえると、パートで得た給料があった方が、生活保護のみで生活するより圧倒的に経済的に楽になれます。
将来的に経済的な困窮から抜け出し自立した生活をするためにも、最初は少額の稼ぎでも構いません。少しずつでも働くことが大切です。
母子家庭で生活保護をうけながらパートで働く、世帯収入の計算方法
パートで生活費を増やしたいものの、しばらくは生活保護の受給を続けていたい。そう考えている母子家庭の人もいるかもしれません。そして、その際に気になるのが、パートやアルバイトでいくらまで収入があってよいか、という点でしょう。
前述通り、世帯収入が最低生活費以下であれば生活保護を受け続けることができますが、その世帯収入の計算は少し複雑な点には注意が必要です。
具体的には、
「生活扶助+加算額+住宅扶助+教育扶助+生業扶助(高等学校等就学費)+介護扶助+医療扶助」
が最低生活費です。
さらに母子家庭で児童手当などの支給を受けている場合、その額も加味されます。その場合、公的手当の収入分だけ支給額は減額されます。
たとえば、最低生活費25万円で児童手当を5万円受け取っている場合、世帯の収入が20万円以下なら生活保護が継続される、といった具合です。
最低生活費の詳細は家庭の状況によって変わってきますが、おおよそ20万円前後になることが多いです。
ただ、あくまでこの数字は目安に過ぎません。生活保護の受給を続けたい人は、自分に適用される最低生活費をしっかり確認した上で、計画的に働くのがおすすめです。
母子家庭の生活保護、パートからはじめて少しずつ自立を
生活保護は経済的に困窮している母子家庭にとって大変助かる制度ではありますが、できれば利用しないにこしたことはありません。
どうしても困った、自分一人では何ともならない、といったときは生活保護に頼った方がいいですが、同時に少しずつでも自立した生活ができるよう、パートなどの仕事からはじめ、少しずつ態勢を整えていくことを目指していきましょう。