在宅ワークで調べるとよく出てくる仕事のひとつに、テープ起こしがあります。
テープ起こしというのは、録音された音声を文字にする作業で、古くはテープに音声が記録されていたことからそう呼ばれています。今はICレコーダーに記録するのが主流ですが、テープ起こしという言い方はそのまま使われています。
また、文字にするのも古くは紙に手書きでしたが、今はもちろんパソコンを使って入力する作業になります。
特に資格などは不要で必要なスキルもないことから、パソコンがあれば誰でもできるので、母子家庭の在宅ワークとして始める人も増えてきています。
今はクラウドソーシングを使えば仕事をネットで見つけることができるので、そういう点でも始めやすくなったと言えますよね。
ただネックがひとつ。それは報酬です。
誰でもできる仕事というのは報酬もそれなり、というのはテープ起こしでも同じで、実際にかかる労力にくらべると、どうしても収入は低く抑えられてしまいます。
でも中には結構な収入を得ていて、テープ起こしで生活している人もいます。
そういう人は単価の高いテープ起こしを取れているからでしょう。最初は無理でも、経験を重ねていくうちに収入を増やしていける可能性があるのもテープ起こしという仕事です。
では、どうしたらテープ起こしで生活はできようになるのでしょうか?
テープ起こしの仕事の内容
テープ起こしと一言で言っても、ただ単に音声を文字にすればいいというわけではありません。仕事を提供してくれるクライアントの要望に従う必要があります。
具体的にはテープ起こしの作業は次の4種類に分かれます。
- ケバ取り
- 素起こし
- 整文
- 要約
順番に見ていきます。
ケバ取り
会話というのは必要なことだけしゃべっているということはなく、「え~」とか「その~」など、本来の内容とは関係のない擬音語のようなフレーズがたくさん発せられています。
そのまま文章にすると読み物として見づらくなると判断された場合、そういったフレーズを全てカットするのがケバ取りです。
素起こし
録音された音声をそのまますべて文章にします。ケバ取りではカットした「え~」などのフレーズもすべて文字にします。
素起こしの文章は読みづらいときもありますが、読み物に臨場感が出るという特色があります。
整文
ケバ取りでは本文に関係のないフレーズをカットしますが、文章的には話し言葉のままです。
事象を説明しているような場合は書き言葉にした方がわかりやすいので、文末を「ですます調」に変更します。この作業が整文です。
要約
会話の内容は全ては必要ではなく、必要な要点が間違いなく表現されればいい、というような読み物もあります。
そのような場合、整文した文章を内容を変えないように要約します。これが要約です。
手間がかかるにつれて報酬は増えていきます。
素起こし<ケバ取り<整文<要約
という順になります。
テープ起こしに必要なスキル
最初に、テープ起こしは特別なスキルは必要ない、と書きましたが、全くの未経験で始めるときにはいらなくても、経験を積んでいくうちに必要になってくるスキルがあります。
それは、タイピング力と語彙力、そして国語力の3つです。
タイピング力
文字通り、キーボードを早く打つスキルです。一般的にはブラインドタッチができることが望ましく、キーを見ながらではテープ起こしの効率は著しく悪くなります。
誰でも最初からブラインドタッチができるわけでないので、もしまだできないのであれば、テープ起こしの仕事をやっていくうちにマスターするようにします。
それまでは、録音時間の短い仕事や納期の長い仕事しかできず、収入もなかなか増えませんが、ここが踏ん張りどころと思って頑張るしかないです。
語彙力
語彙力というのはweblio辞典では
「どれだけ多くの言葉を知っているか」および「どれだけ言葉を使いこなせるか」に関する能力、を意味する表現。単語の知識ならびに運用能力。
と定義されています。
会話などを聞いていてわからない言葉や単語が出てきたとき、それが正しいかどうか調べなくてはなりません。そのため、知らない単語、言葉が多いと調べるのに時間がかかり、効率が落ちてしまいます。
そのため、多くの言葉を知っていることがテープ起こしには有利になりますが、これもすぐに何とかなることではないので、日ごろから新聞などを見て知見を広げるくらいしか対策はありません。
実際にはタイピング力と同じように、数をこなして知識を積み上げていくのが現実的な対応でしょう。
国語力
国語力というのは、会話などを聞き、その内容を頭の中で瞬時に理解し整理する能力です。
テープ起こしは、録音された音声を一字一句拾っていく仕事ですが、そのとき、何を言っているのか、どんなことを話しているのかも同時に理解してい必要があります。
それは、素起こしやケバ取りまではいいですが、整文や要約になると意味のわからない文章になってしまう可能性があるからです。
こちらも、最初のうちは何度も繰り返して聞かないと理解できないですが、続けていくうちにできるようになっていきます。(ただ仕事の性格上、適性も関係してくるので、続けてもできない人もいます。)
在宅ワークでテープ起こしで生活するなら、これだけは欲しい3種のツール
テープ起こしのイメージは、録音された音声を再生しては止め、また再生して…というように、実際の作業は非常にシンプルです。作業はシンプルですが、再生という行為は物理的に時間を要し、数えきれないほどの再生⇔停止を繰り返します。
そこでこの2つの行為を効率的にできればテープ起こしの効率もあがり、仕事をたくさんこなせるようになり、テープ起こしで生活することも可能になってきます。
それが、この3つのツールです。
- 音声再生ソフト
- テープ起こし用フットスイッチ
- 音声認識ソフト
音声再生ソフト
昔とは違い、今は音声はデジタルデータでやりとりされるので、手持ちのパソコンにダウンロードし、付属しているソフトでも再生はできます。
しかし実際に始めてみるとわかりますが、音声の質はまちまちで、明瞭で聞き取りやすい会話もあれば、マイクが遠くて何を話しているのかとても聞きづらい、周辺のノイズがいっぱい入ってきて肝心の音声が聞き取れない、といった音源のほうが多いくらいです。
そんなとき、人の音声以外のノイズなどを電気的に除去してくれる再生ソフトがあれば、驚くほど聞き取りやすくなります。
また、きれいな声でなくてもいいので、何を言っているのかがわかるように音質をコントロールしてくれる機能もあれば、おおよその音源は聞き取りができるようになります。
音声再生ソフトはネットを探すとたくさんでてきます。耳の聞こえ具合は人によって千差万別なので、どのソフトがいいかは難しいところです。無料のソフトもあるので、まずは無料のソフトから始め、それでもまだ足りなければ有料ソフトを考えてみるのがいいでしょう。
テープ起こし用フットスイッチ
テープ起こし用フットスイッチというのは、パソコンに接続し、足で音声の再生や停止、巻き戻しなどの作業をするための機材です。
手で同じことをすると、文字を入力するためのキーボード操作をいったんやめて、ということになり、仕事の効率が落ちてしまいます。足で音声の再生や停止、巻き戻しができれば文字入力に支障はなく、効率アップにつながります。
テープ起こし用フットスイッチもネットを探すとたくさん出てきます。安い物もありますが、使用頻度が高いので、あまり安い物は避けた方が賢明です。
音声認識ソフト
音声認識ソフトというのは、人の発した声を言葉に変換してくれるソフトです。
身近なところではスマホなどの音声認識で、スマホに話かけると答えを返してくれる、といったところに音声認識ソフトは使われています。
ということはこのソフトをテープ起こしに使えば、面倒な聞き取りをしなくても自動で文章に変換してくれるのでは?と期待しますよね。
実際、完璧ではありませんが、ある程度は音声認識ソフトを使うことで、テープ起こしの作業を簡略・効率化することが可能です。
最終的には人の耳で聞いて修正が必要ですが、最初から最後まで人の耳で聞いて文章化するよりも早く終わることができます。
音声認識ソフトにも色々あり、認識精度もまちまちです。多少聞き取りにくい音声でも結構正確な文章になることもあれば、その逆もありうるのがソフトというツールの宿命でしょう。使っていくうちに得意不得意といった特性がわかるようになるので、音声で使い分けるのもひとつの方法です。
ほとんどは有料でそこそこ値が張りますが、あると便利なツールです。
裏ワザ的な使い方としては、聞き取りにくい音声で音声認識ソフトでもうまく文章にならないとき、その音声を聞きながら自分の声でICレコーダーに録音して音声認識ソフトにかける、という方法があります。
自分でICレコーダーに録音すれば音声としてははっきりしているなので、音声認識ソフトもうまくはたらく可能性が高くなります。
在宅ワークのテープ起こしの収入
テープ起こしの報酬の基準はクラウドソーシングであるLancersによると、
- 素起こし 240円/分
- ケバ取り 200円/分
- 整文 240円/分
- 要約 260円/分
となっています。60分の音声のケバ取りで12,000円と、なかなかの報酬です。
しかしこの報酬の仕事はほとんどなく、たいていは40円~50円/分でテープ起こしの仕事が発注/受注されているのが現実です。
実際、テープ起こしの仕事の経験者に聞いた収入は、1,000円未満から100,000円以上まで幅広く、最高で700,000円という人もいて、受けた仕事によるところが大きいとは思いますが、可能性としてありうる収入ということがわかりました。
参考記事:母子家庭の在宅ワーク、文字起こし、テープ起こしは収入がいい?
話を聞いた中にはやってみたけどやめた人もいたりしますが、続けている人はその理由に、
- 空き時間にできる
- タイピングが得意、好き
- 特別な知識が不要
- 楽しい
- 報酬が妥当
といったことをあげていました。
やめた人はその理由として
- テープの音声がなかなか聞き取れず苦労した
- 報酬が少ない
- 忙しくなった
がありました。
空き時間にできるなどは、在宅ワークのいいところ、特別な知識がいらないのはテープ起こしという仕事に取組みやすさでしょうか。
またタイピングが得意なのは、続けていくのには大切なことなのかもしれません。
母子家庭の在宅ワーク、テープ起こしで生活はできる?
母子家庭の在宅ワーク、テープ起こしで生活はできるのか?
スキルが向上し、高報酬の依頼を選択できればある程度の収入が見込めそうで、実際にテープ起こしで生活をしている人もいます。
だだしかし、そういう人は多くはありません。月数万円の収入という人が最も多く、かけられる時間との兼ね合いもあるのでしょう。
そのため、母子家庭の在宅ワークとしては最初は副業で始め、徐々にスキルアップを図り少しづつ収入を増やしていくのが現実的でしょう。