母子家庭の生活保護で支給される家賃の上限はいくら?

生活保護を受けるとなると、持ち家は所有できないため、住居は賃貸となります。借りるための家賃は住宅扶助という形で支給されますが、必要な家賃が全額支払われるということはなく、支給額には上限が設定されています。

またその家賃は全国一律ではなく、実際の家賃相場に合わせるため、都道府県、指定都市、中核市によって細かく設定されています。例えば、東京に住もうと思えば家賃は高く、地方の農村部に住むのであれば、家賃はそれほど高くはない、といった具合です。

母子家庭になると子供のための部屋が欲しいなど、単身での暮らしよりも広い部屋を必要とすることが多いことから、世帯数に応じて家賃の支給額は増額されることになっています。

注意したいのは、住宅扶助で支給されるのは家賃のほか、礼金、敷金、住宅維持費などに限定されており、毎月支払いが必要になる、電気代、水道代などの光熱費は対象にはなっていない点です。光熱費は、住宅扶助と一緒に支給される生活扶助から支払うことになります。

ここでは、母子家庭の生活保護で支給される家賃の上限について、順番にみていきます。

目次

母子家庭の生活保護で支給される家賃の上限金額は?

住宅扶助で支給される家賃は4種類からなり、それぞれ上限の金額が設定されています。

基準額

基準額は級地ごとに以下のように上限額を定めています。

級地区分支給額(上限)
1級地、2級地13,000円
3級地8,000円

級地というのは、全国を物価や地価の違いに従って6つの地域に分ける指標で、物価、地価など生活費が高い順に、1級地-1、1級地-2とし、3級地-2が最も生活費が安い地域としています。

例として、1級地-1、1級地-2に該当する都道府県、市町村を下表に示します。

【1級地-1】

都道府県市町村
埼玉県川口市、さいたま市
東京都23区、立川市、八王子市、その他20市
神奈川県横浜市、川崎市、鎌倉市、その他4市、1町
愛知県名古屋市
京都府京都市
大阪府大阪市、豊中市、堺市、その他14市
兵庫県神戸市、尼崎市、西宮市、その他4市

【1級地-2】

都道府県市町村
北海道札幌市、江別市
宮城県仙台市
埼玉県所沢市、戸田市、その他4市
千葉県千葉市、市川市、船橋市、その他3市
東京都青梅市、武蔵村山市
神奈川県横須賀市、平塚市、小田原市、その他6市
滋賀県大津市
京都府宇治市、長岡京市、向日市
大阪府岸和田市、貝塚市、和泉市、その他5市、1群、1町
兵庫県姫路市、明石市
岡山県岡山市、倉敷市
広島県広島市、呉市、その他1市、1群、1町
福岡県福岡市、北九州市

厚生労働省のホームページの「級地区分」に全国の級地が掲載されているので、自分の住む地域の級地を確認することができます。

特別基準額

家賃が上記の基準額を超える場合に適用されるのが特別基準額で、都道府県、あるいは指定都市、中核市ごとに、厚生労働大臣が定める額を上限としています。

代表的な都道府県、市の特別基準額は以下の表のようになっています。それぞれの都道府県、市に対し、級地ごとに決められています。

居住地(都道府県)1級地、2級地3級地
北海道29,000円24,000円
東京都53,700円40,900円
神奈川県46,000円43,000円
長野県37,600円31,800円
愛知県37,000円36,000円
京都府41,000円38,200円
大阪府42,000円30,800円
広島県35,000円33,000円
香川県設定なし33,000円
福岡県32,000円26,500円
沖縄県32,000円32,000円

級地制度と同様に、厚生労働省のホームページにある「住宅扶助について」に全国の都道府県、指定都市、中核市の特別基準額が掲載されているので、自分の住む地域の特別基準額を確認することができます。

また、この特別基準額の上限を使っても家賃に足りないときは、特別基準額に対し、世帯員数に応じた一定の係数をかけた額まで上限が引き上げられることになっています。

世帯員数計算式
2~6人特別基準額×1.3
7人以上特別基準額×1.3×1.2

ただしこの上限の引き上げが適用されるのは、世帯員数や世帯員の状況、あるいは住宅事情によりやむを得ないと認められた場合に限定されています。

認められる理由としては、母子家庭で、仕事をしているので子供の学校の近くに住みたいが家賃が特別基準額を超えてしまう、定期的に病院に行かなくてはいけないが、今住んでいる所は家賃は安いが病院から遠いから、家賃は特別基準額を超えるが近くに引っ越したい、といった事情などがあります。

敷金、礼金

母子家庭になって引っ越ししなくてはいけなくなった、といったケースでは、新たに賃貸契約をすることで敷金や礼金の支払いが必要になることがあり、そういう場合には住宅扶助で支給されることになっています。

支給額には上限があり、上記の特別限度額の3倍で、その範囲内で実費が支給されます。

住宅維持費

住んでいる賃貸物件の補修などをする際に必要となる費用が住宅維持費で、補修と認められるのは、水道設備の修理、電気関係の設備の修理、畳の張替え、家屋の修理などです。

支給額には上限が設定されており、1世帯当たり、年額117,000円以下となっています。住宅維持費は住宅の維持にかかる保養ですから、これは、母子家庭のように世帯員数が2人や3人になっても変わりません。

母子家庭の生活保護で支給される家賃の上限の計算例

個々の支給額が明確になりましたので、ここで、母子家庭で実際に住宅扶助で支給される家賃の上限はいくらになるのか、計算してみます。

例①

世帯員構成:母子家庭 母親32歳、子供1人・3歳
居住地:東京都
住居の級地:2級地

東京都の家賃の相場は、4.3万円~8.2万円(SUUMOホームページ関東版より)となっているので、基準額では住める所はなく、特別基準額が適用されます。

東京都の2級地の特別基準額は単身世帯で53,700円、2人世帯では1.3倍されることから、特別基準額の上限は

53,700円×1.3=69,800円

となります。

敷金、礼金はこの3倍まで認められるので、上限額は

69,800円×3=209,400円

となります。

SUUMOホームページ関東版のページによれば、家賃相場が69,800円以下のところは、千代田区、大田区、杉並区、豊島区、北区、荒川区など、数多くあることがわかります。

例②

世帯員構成:母子家庭 母親43歳、子供2人・13歳、9歳
居住地:大阪府
住居の級地:3級地

大阪府の家賃の相場は、2.9万円~5.6万円(SUUMOホームページ関西版より)となっているので、例①と同様に基準額では住める所はなく、特別基準額が適用されます。

大阪府の3級地の特別基準額は単身世帯で30,800円、3人世帯では1.3倍されることから、特別基準額の上限は

30,800円×1.3=40,000円

となります。

敷金、礼金はこの3倍まで認められるので、上限額は

40,000円×3=120,000円

となります。

SUUMOホームページ関西版のページによれば、家賃相場が40,000円以下のところは、住吉区、東住吉区、平野区、堺市東区、堺市中区などがあります。

ただし、家賃相場には狭い物件から広い物件まで含まれているので、家賃は支給額以内におさまるけど、部屋が狭くて子供と住めないという可能性もあり、最終的には広さとの兼ね合いになります。

特別基準額の詳細と計算方法

特別基準額とは、生活保護を受ける母子家庭の家賃上限を決定するための基準となる金額のことです。この金額は、各自治体が設定しており、母子家庭の生活状況や住む地域によって異なります。

特別基準額の詳細とその計算方法

特別基準額は、母子家庭が生活保護を受ける際に、家賃の上限を決定するための重要な要素です。この金額は、各自治体が独自に設定しています。それぞれの自治体は、地域の物価や生活状況を考慮して特別基準額を決定します。

都市部では物価が高いことから、特別基準額も高く設定されていることが一般的です。これは都市部の家賃が高いので、生活保護を受ける母子家庭が適切な住居を確保できるようにするためです。一方、地方では物価が低いので、特別基準額も相対的に低く設定されています。

特別基準額の計算方法は各自治体によって異なりますが、一般的には、地域の平均的な家賃や生活費、物価指数などを基にして算出されます。これにより、生活保護を受ける母子家庭が安心して生活できるように配慮されています。

特別基準額は公平性を保つためにも重要です。地域や生活状況によって特別基準額が異なることで、生活保護を受ける全ての母子家庭が公平に支援を受けられるようになっています。

特別基準額は、生活保護を受ける母子家庭の家賃上限を決定するための基準となる金額であり、その計算方法や詳細は、地域の物価や生活状況を反映したものとなっています。これにより、母子家庭が安心して生活を送ることができるように配慮されています。

敷金、礼金と生活保護 – 母子家庭の家賃上限にどう影響する?

敷金や礼金は、家を借りる際に必要となる初期費用の一部です。これらの費用は、生活保護を受ける母子家庭の家賃上限にも影響を与えます。

敷金、礼金の支給範囲とその計算方法

敷金や礼金は、新たに家を借りる際に必要となる初期費用の一部です。これらは賃貸契約を結ぶ際に一時的に支払う費用で、契約終了時に一部または全額が返還されることがあります。敷金は、賃貸物件の修繕費用や未払い家賃を補償するための保証金の役割を果たします。一方、礼金は賃貸契約を結ぶ際に家主に対して支払うお礼の金額で、通常は返還されません。

敷金、礼金の費用は高額になることがあり、特に生活保護を受けている母子家庭にとっては大きな負担となります。そのため生活保護法では、敷金、礼金などの費用を考慮した家賃上限が設定されています。具体的には、敷金や礼金の額が特別基準額を超える場合、超えた分は家賃上限に加算されます。これにより、母子家庭が新たに家を借りる際の初期費用の負担を軽減することができます。

また、敷金や礼金の支給範囲は、賃貸契約の内容や地域の慣習により異なります。一部の地域や物件では敷金や礼金が必要ない場合もあります。そのため、具体的な支給範囲や計算方法は、各自治体の生活保護課や社会福祉協議会などに問い合わせることで確認することができます。

住宅維持費と母子家庭の生活保護 – 家賃上限との関連性

住宅維持費は、家賃だけでなく、光熱費や修繕費など、住宅を維持するために必要な費用のことを指します。これらの費用も、生活保護を受ける母子家庭の家賃上限に影響を与えます。

住宅維持費の詳細とその計算方法

住宅維持費とは、家賃だけでなく、光熱費や修繕費など、住宅を維持するために必要な費用のことを指します。これらの費用は、生活保護を受ける母子家庭の家賃上限にも影響を与えます。

光熱費は、電気、ガス、水道などの使用料金を指します。これらの費用は、季節や生活スタイルにより変動しますが、一定の範囲内で予測することが可能です。一方、修繕費は、住宅の維持・修繕に必要な費用で、これは予期せぬ故障や老朽化により発生します。これらの費用は、母子家庭が安心して生活を続けるために必要なものであり、生活保護法ではこれらの費用を考慮した家賃上限が設定されています。

具体的には、光熱費が高額であれば、家賃上限も高くなる可能性があります。これは、生活保護を受ける母子家庭が適切な生活を送るために必要な最低限の生活費を確保するためです。また、修繕費が必要な場合も、その費用を考慮した家賃上限が設定されます。これにより、母子家庭が安心して生活を続けることができます。

住宅維持費の詳細や計算方法は、各自治体の生活保護課や社会福祉協議会などに問い合わせることで確認することができます。これにより、母子家庭が生活保護を受ける際の家賃上限を正確に理解し、適切な支援を受けることが可能となります。

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