母子家庭として、お子さんとふたり、力をあわせてがんばっているお母さんは多いと思います。
母子家庭の大きな問題は、やはり経済的な不安です。ひとり親世帯の貧困率は全体の50%とも言われ、全世帯の半分は、水準よりも低い所得の中でやりくりして暮らしている、ということになるのです。
中でも子供のためにパートなどを余儀なくされる母子家庭世帯の年収は約300万円弱、父子家庭の約600万円と比べると、世の中のシングルマザーの方がどれだけ頑張っているのかがわかると思います。
そんな母子家庭のお母さんが、病気をしたら、しかも入院手術をするということにでもなったら、どうでしょうか?
母子家庭において、被服医療費は家計の10%を占める大きな負担です。お母さんが入院手術となれば、手術費用が必要なだけでなく、働き手もいなくなるわけですから、さらに深刻な問題となるでしょう。
地方自治体では、そんながんばっている母子家庭のお母さんの医療費を支えてくれる制度がありますので、ご紹介したいと思います。
母子家庭が利用できる手術費用をサポートしてくれる制度とは?
母子家庭が利用できる入院手術費用をサポートしてくれるのは「ひとり親家庭医療費助成制度」です。
ひとり親家庭医療費助成制度とは
入院手術費用は、外来などの通院と同じ「医療費」に含まれます。母子家庭の医療費は、「ひとり親家庭医療費助成制度」を利用すれば、入院手術費用までしっかりフォローしてもらえますので、いざという時にあわてないように覚えておきましょう。
この制度は、条件を満たした母子家庭などのひとり親世帯を対象とした、医療費をサポートする地方自治体の取り組みです。住民税を課税しているか非課税かによって、全額負担、または1割負担に別れます。
重い病気であれば手術費用も高額なので、「1割負担でも厳しい」と思うかもしれませんが、この支援には自己負担費用の上限金額が決められているので、どんなに大変な病気をしたとしても手術費用はある程度で抑えられます。その際は、とりあえずかかった手術費用全額を自分で支払っておき、後から市区町村窓口で申請をすれば、差額を返還してもらうことができます。
負担の上限金額は、地方自治体によりますが、個人の外来ならば12,000円まで、世帯の外来ならば44,400円などと決まっています。
対象となる医療費
この制度では、支援してもらえる対象が決まっています。
- 診療費
- 入院費用(上限がある場合もあり)
- 処置や手術費用
- 処方されたお薬代
- コルセットなどの治療に使った材料費
- 訪問介護ステーション代
などです。反対に、医療費に含まれないものはこちらです。
対象とならない医療費
- 入院時の個室や差額ベッド代
- 美容整形
- 特別な歯科治療
- 健康診断
- 予防接種
- 中絶や避妊
- マッサージ
- 学校でけがをした際に、「災害救済給付制度」の対象となるもの
- 高額療養費制度(ひと月にあった医療費が、一定の金額以上だった場合、免除する制度)の対象となるもの
ひとつの助成金や給付金でフォローしてもらえた場合の費用は、重ねてこちらの助成の対象とはならない、ということです。
母子家庭の手術費用、助成制度を利用する条件とは?
こちらの助成制度は、市区町村などの自治体が行っているものなので、地域によって少しずつ条件が違います。おもなものはこちらです。
- 母子家庭や父子家庭などのひとり親で、18歳未満の子供がいる人
- 所得が限度額を下回っている人
- 健康保険に加入している人
- お子さんを家庭で養っている(福祉施設などを利用していない)人
母子家庭になった理由は関係ないので、離婚したから不利というようなことはありません。また、所得の限度額も地域によって違うので、自分の住んでいる市区町村の役場で確認しておく必要があります。
たとえば新宿区ならば、子供1人で230万円、2人で268万円、3人で306万円、それ以降は、1人増えるごとに38万円ずつ増えてゆくというイメージです。
ここでいう「所得」とは、お給料の満額(年収)ではなく、所得控除や経費、障がい者(扶養)控除などを差し引いた金額のことを言います。ちなみに別れた配偶者から養育費をもらっている場合は、1年間の養育費の合計金額の80%を所得と考える自治体もあるので、思いがけず対象外とならないように、こちらもよく確認しておきましょう。
母子家庭の方はすぐに申請、手術費用の負担を減らそう!
「ひとり親家庭医療費助成制度」を申請する時は、住んでいる地域の市区町村窓口へ出向きます。用意するものは、
- 申請者と子供の戸籍謄本
- 申請者と子供の健康保険証
- 身分証明書(個人番号がわかるものなど)
- 住民税課税(非課税)証明書
- 児童扶養手当を利用している人は児童扶養手当証書
- 母子のどちらかに障害がある人は、障害認定診断書
などです。事前に準備していくと、申請がスムーズに行われるでしょう。必要な書類も市区町村によって違うので、注意してください。
申請をして、助成されると決定されれば、1ヶ月ほどしてから「ひとり親医療証」が届きます。診察や入院の際などに、健康保険証とひとり親医療証を提示すれば、医療費、手術費用が助成されます。
もし、急な都合で住んでいる地域以外の病院で、高額な手術費用が発生してしまった時も、領収書をとっておき、後から窓口で申請すれば払い戻しをしてもらえます。
万が一、申請が通らなかった時は、「小児医療費助成制度」などを利用すれば、子供の分だけですが診察や手術費用を助成してもらえるので、満足な治療を受けられるでしょう。
母子家庭でも資格が消滅すると高額な手術費用が個人負担に
こちらの助成制度は利用者の条件があるため、生活の中で気づかずに対象外となってしまうと高額な手術費用を支援してもらえなくなってしまいます。申請の際には必ず確認しておき、生活の状況が変わりそうになった時は注意をしましょう。資格が消滅する条件はこちらです。
- 母子家庭や父子家庭のひとり親でも、所得が限度額を上回った人
- 子供が18歳以上となった人
- 再婚や事実婚をした人
- 生活保護を受けている人
- 市区町村から引っ越した人
- 子供が、里親や施設などに預けられた人
- 刑務所にいる人
- 母子のどちらかが死亡した場合
生活保護を受けている人にはもともと医療扶助があり、手術費用などは支援されますので、そちらを利用すると良いでしょう。こちらでも、二重の援助は受けられない、ということになります。
また、「事実婚」には、新しいパートナー、又は以前の配偶者との同棲も含まれます。母子家庭としては経済的に楽にはなりますが、状況が変わっているのに支援を受け続けると、後に返金することになりますので、覚えておいてください。
母子家庭が手術費用を助成してもらう場合は自治体のルールを必ず確認
母子家庭の方にとって、入院手術費用は大きな負担です。手術の時は、病気のことだけでも不安でいっぱいなものです。だから、お金の心配だけでもなくなれば、少しは心が軽くなり、安心して治療に専念できるのだと思います。
現代の自治体には、がんばっている母子家庭のお母さんを支えてくれる制度が豊富にあります。困った時は遠慮なく頼って、お子さんとの生活を豊かにしてください。
ひとり親家庭医療費助成制度は自治体によって、対象となるもの、所得上限金額、利用できる人の条件、助成のされ方などが、少しずつ違います。市区町村窓口で必ずしっかり確認をして、安心して利用し、心の負担を軽くしてもらえたらと思います。