母子家庭では、子供と助け合って毎日を何とかやりくりしている方も多いと思います。
どんなに仕事が大変でも子供が楽しそうに学校へ通っていてくれれば、「頑張ってよかった」と感じますよね。しかしその一方で、「お金がないからやりたいことをあきらめさせていないか?」と心配にもなることもあるでしょう。
ひとり親世帯は年々増え続けており、その80%ほどは母子家庭です。そしてその半数は生活水準が低いと言われています。世の母子家庭の方がどれほどがんばって毎日を切り盛りしているのか、この調査結果からうかがえると思います。
そんな経済格差と並び、近年大きな問題となってきているのが子供の「体験格差」です。
体験とは、音楽や運動などの習い事や旅行など、学校外で子供が体験する経験のことをさしています。
ある調査によると、年収300万円以下の世帯では1年間そういった体験をしていない子どもがなんと約30%もおり、さらにその半数は「物価の高騰などでさらに減りそう」と答えているのです。
今の時代、習い事をしている子供は全体の約80%。中でも学習塾が約40%と非常に多く、経済&体験格差がのちの教育格差も生んでしまう可能性もあり、母子家庭の方は増々心配になってしまいますよね。
経済的に厳しい母子家庭の方に覚えておいてほしいのは、自治体によっては、こういった学校外の習い事をサポートしてくれる支援もあるということです。
支援方法は助成や補助金など様々ですが、今回は、塾などの習い事を対象とした母子家庭の方が利用できる補助金についてご紹介したいと思います。
母子家庭にクーポンを配布、習い事を補助金でサポート
まずご紹介するのは、学習塾などの習い事をサポートする自治体の補助金「スタディクーポン事業」です。
こちらは小学生、中学生、高校生を対象にしており、経済的に困難な母子家庭世帯などの子供たちの学習機会を広げるために導入された補助金制度です。
もともとは震災被災地域の子供たちに向けた支援でしたが、渋谷区がスタディクーポンとして導入し、後に国立市、千葉市、千葉県南房総市、大阪市、佐賀県上峰町、那覇市など、現在では7つの自治体で行っています。
まず個人や企業からの寄付が公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」に送られ、母子家庭などの経済的に厳しい状況の子供たちにクーポンという形で補助金が配布されます。
子供たちは学習塾などの習い事に行き、クーポンで支払いをします。その後、団体が、クーポンの分を現金で学習塾に支払うという形になります。
クーポンでもらえるので一時的に立てかえる必要もなく、塾代なとを準備できない母子家庭のお子さんには嬉しい補助金制度と言えるでしょう。
補助金額は、こちらです(国立市の例)
- 小学生、中学1、2年生:10万円
- 高校1、2年生:15万円
- 中学&高校3年生:20万円
対象には、学力向上を目標とした学習塾などの習い事や家庭教師も含まれます。各自治体で確認をしてみましょう。
母子家庭に習い事の補助金を無利子で貸し付け
次にご紹介するのは、中学、高校3年生を対象とした塾の費用や受験料の貸し付けを行う東京都の補助金制度「受験生チャレンジ支援貸付事業」です。
この貸付は無利子、受験後に高校や大学に入学できれば返済は不要という補助金のようなありがたい貸付支援です。
対象となるのは学習塾、各種受験対策講座、通信講座、補習教室などの学習に関する習い事だけでなく、高校、大学への受験費用にもあてられます。
補助金の貸付金額には上限があり、次の様になっています。
- 学習塾などの受講料:上限20万円(対象となる学習塾に限る)
- 受験料(中学3年生):上限27,400円(対象となる高等学校に限る)
- 受験料(高校3年生、又は準じる方):上限8万円(対象となる大学に限る)
「高校3年生、又は準じる方」とは、高校中途退学者、高等学校卒業程度認定試験合格者、定時制高校4年生、浪人生なども含まれます。
「対象となる学習塾」とは、一定期間有償で学力の指導を行うもの。「対象となる学校」とは、学校教育法に規定する高等学校、大学、短期大学、専修学校など幅広く含まれますので、まずは窓口で相談してみましょう。
この補助金が利用できる条件はこちらです。
- 都内に1年以上住んでいること
- 所得、資産の規定あり
- 税金などの滞納がないこと
- 数年続けて貸し付けを受けていないこと
- 連帯保証人を用意できること
連帯保証人がいない方は世帯の人を借受人とすることもできます。数年続けては利用できませんが、中学3年生で利用して、高校3年生で利用することはできます。
母子家庭の子供さんは、お母さんのために補助金を獲得しようとやりがいを感じてくれるでしょう。
母子家庭の習い事を支援する自治体の補助金制度
母子家庭などの経済的に困難な世帯へ、習い事の補助金政策を独自で打ち立てている自治体もありますので、例をご紹介しておきます。
江戸川さくら塾
東京都江戸川区が行っている、生活が厳しく学習塾などの習い事へ行けない母子家庭などの子どもを支援する事業です。対象は中学1~3年生で、以下の条件があります。
- 児童扶養手当受給世帯、または相当する所得の世帯の子ども
- 他の学習塾や家庭教師、通信講座などを利用していないこと
- 受験生チャレンジ支援などの補助金を受けていないこと
指導はボランティアの大学生などによる、ひとりひとりのペースに合わせた個別指導型学習です。もちろん費用は無料なので、経済的に厳しく貸し付けの条件に当てはまらなかった母子家庭の子供さんでも安心です。
大阪市、習い事・塾代助成事業
大阪市が独自に行っている習い事の補助金事業です。対象は大阪市内在住の小学5年生~中学3年生までの子供たちで、学力だけでなく、個性や、各種才能を伸ばす機会を提供するための制度です。
補助金の金額は月額上限1万円で、学習塾、家庭教師などの学習面だけでなく、英会話、音楽、パソコン教室、絵画教室などの文化面、水泳、ダンス教室、野球などのスポーツ面の習い事まで、幅ひろく使えます。
所得制限はありますが、貸付ではないのでもちろん返済は不要です。
まずはホームページで「大阪市習い事・塾代助成カード」の申請をし、カードを送付してもらいましょう。カードをもって習い事に通い、各教室が大阪市へ料金を請求するというシステムです。
こちらも一時的に支払う必要がない補助金制度なので、母子家庭の子供さんでも安心でしょう。
このほかにも色々な補助金制度があると思いますので、お住いの地域の自治体に確認してみましょう。
母子家庭に知ってほしい習い事の補助金制度
母子家庭の各種援助は知っていながらも、「習い事は義務教育ではないから補助金は出ない」と思い込んでいる方も多いと思います。
ですが近年は、母子家庭などのひとり親世帯の子供への自治体の支援はとても手厚く、企業によっては学習塾自体が独自にひとり親世帯の割引を行っていることもあります。
子供のころに体験を多く積ませると、子供の人間関係力、共生感、意欲などをアップさせてくれると言われています。習い事も単にその分野の能力を上げるだけでなく、考える力を育む効果もあります。
確かに母子家庭の方は経済的に厳しいこともあるかもしれませんが、こういった公的援助や補助金の情報を知っているだけで未来が開けることもありますので、ぜひ積極的に利用してほしいと思います。