母子家庭の人の中には、経済的に厳しく住む場所すら安心して確保できない、そのような不安を抱えている人は結構いると言われています。
また母子家庭になった時、同じ家に住み続けられなくなる事があります。離婚した相手の物件で出て行かなければならないという理由の他、収入が大きく低下したことで今までと同じ家賃では生活が難しくなる、という場合もあります。
安心して住む場所を確保できない状態となっては仕事に打ち込むこともできません。そしてその状況が、悪循環を引き起こしてしまう点には注意が必要でしょう。
このような経済的理由で転居する時、その世帯の経済状態に応じ、安価な家賃で利用出来る公営住宅は大きな助けになりますよね。
公営住宅には県営住宅や市営住宅などがあり、基本的には各都道府県、もしくは市などが運営していますが、もし東京に住んでいるのであれば、公営住宅は都営住宅ということになります。
ここでは都営住宅について、どのような住宅でどのような人が応募できるのか、募集に関することや母子家庭に有利な制度などはあるか、あるならどのような内容なのか、見ていきたいと思います。
母子家庭で都営住宅に応募、都営住宅とは?
都営住宅とは
まず、都営住宅というのはその名の通り、東京都が管理している住宅の総称で、東京都住宅供給公社、通称JKK東京が運営しています。
どれくらいあるかその戸数ですが、データとしてはちょっと古いですが、2016年時点、東京23区内で約16万戸ほどありました。東京都の人口は増え続けているので、おそらく今はもっと増えていると思われます。
都内に在住する低所得者に提供することを目的としており、一般的な相場の約3分の1程度の家賃で借りることができるのが、その最大の特徴であり魅力です。
また、収入がない、あるいはかなり少ない世帯については、家賃の3分の1負担から、さらに減額してもらえる減免制度を受けられることもあります。さらに、場合によっては支払いを免除してもらえるケースもあります。
都営住宅に住める条件
都営住宅に住める条件は次の三つです。
- 東京都に住んでいること
- 住宅に困っていること
- 年収が決められた基準内であること
東京都に住んでいること
東京都が管理運営している住宅ですから、東京都在住は絶対条件です。
住宅に困っていること
経済的な理由で住まいが見つからない世帯が対象です。
年収が決められた基準内であること
都営住宅は所得が少ない世帯が対象ですが、その具体的な年収が決められています。また何人の世帯かによって、収入の基準は変わります。
家族の人数 | 年間の所得金額 | 年間の給与収入(年収) |
2人 | 0~227万円 | 0~351万円 |
3人 | 0~265万円 | 0~399万円 |
4人 | 0~303万円 | 0~447万円 |
5人 | 0~341万円 | 0~494万円 |
たとえば母子家庭で子供が二人の世帯の場合、年収が399万円以下であれば条件に当てはまります。
母子家庭で都営住宅に応募、いつできる?
都営住宅をはじめとする公営住宅は、基本的には「応募→抽選」の形をとっています。希望する都営住宅に応募し抽選で当たれば、住む権利をもらうことができます。
応募はそれほど難しくはありませんが、相手はお役所なので書類の間違いや締め切り遅れなどの融通はききません。決められた手順に従ってきっちり対応する必要があります。
募集時期
都営住宅の募集には次の2種類があります。
- 毎月募集
- 定期募集
毎月募集
都営住宅の募集は毎月あります。これは、入居希望する時期は世帯によって違うことから、応募する機会の拡大を図るためで、毎月定例的に入居者を募集しています。
実際の募集状況や募集実績は、JKK東京の運営する公社住宅募集センターのウェブサイトに掲載されていますので、具体的な募集日程などは自分で確認することができます。
募集戸数は、令和4年度時点で毎月200戸づつ出ている状況です。
200戸の中には単身者向けも含まれるため、全ての物件から選べる訳ではありませんが、そのうちの40戸は「若年夫婦・子育て世帯(ひとり親世帯含む)」向け募集として確保されているので、母子家庭の場合は、一般の単身ではない世帯より多くの物件から選ぶことができるようになっています。
毎月応募できるので、抽選で落ちても次の月にすぐ応募することができ、入居までの時間を短縮することができます。
定期募集
先の毎月募集とは別に年4回、定期募集というのがあります。令和4年では、2月、5月、8月、11月が募集時期になっています。
戸数については毎月募集のような開示はありません。また応募できる対象ですが、家族もしくは単身者であれば4回全部に応募することができます。
定期募集の特徴として、毎月募集より良い物件が多いことがあげられます。その意図は不明ですが、そのためか、定期募集に応募が集中する傾向があります。
母子家庭で都営住宅に応募、その方法は?
都営住宅の応募方法は、郵送、インターネットの2種類あります。
郵送
申し込み用紙に所定事項を記入し、JKK東京に郵送します。申込用紙はJKK東京のウェブサイト内からダウンロードが可能です。
インターネット
インターネット申し込みの場合は、東京都住宅政策本部の「都営住宅入居者募集サイト」から行うことができます。
審査で提出した書類に不備や変更がある場合、その都度、都営住宅の担当者から電話が来るのが一般的です。必要事項にしっかりと応えていけば、特に問題はないでしょう。
また、都営住宅の資格審査は、当選のはがきが手元に届いてから始まります。その時に申込時から状況の変化があったら、その旨を正しく伝えましょう。
何か変更があったからと言って、当選が取り消されることは基本的にありません。
母子家庭で都営住宅に応募、有利になる制度とは?
都営住宅には、母子家庭が有利に利用出来る制度があります。「ひとり親世帯入居サポート」と名付けられた制度で、収入審査の緩和と、「こどもすくすく割」という家賃の割引が受けられます。
ひとり親世帯サポート
都営住宅の収入審査には、月収基準が設けられています。これは困窮の度合いを見る「低ければ良い」ものではなく、支払い能力を見る「高い方が良い」ものです。
ひとり親世帯の場合、「児童育成手当」「児童扶養手当」も月収額に足して、収入審査を有利にする事ができます。それでも月収基準に達しない場合は「収入合算」「月収基準の特例」の制度もあります。
収入合算
例えば家賃が5万円の部屋を借りる場合、収入基準は家賃の4倍、20万円以上の月収が必要となります。
ですが、母子家庭の場合、例え月収が20万円未満でも、児童育成手当や児童扶養手当と合計して20万円を超えていれば要件を満たします。
更に月収が少なく要件を満たせない場合も、月収が基準の1/2以上という条件を満たした上で、
- 同居親族の収入と合算すれば、月収基準を満たす
- 同居しない三親等内の親族からの仕送りを合算すれば、月収基準を満たす(仕送りしている親族が連帯保証人になる必要はある)
このいずれかを満たせば、要件を満たした事になります。
例に挙げたケースの場合、収入が10万円以上20万円未満であることと同居親族の収入か仕送りが10万円以上あれば、収入合算で確実に基準を満たすことになります。
月収基準の特例
収入が一層少なく、月収が基準の1/2以上の場合は、
- 二親等内の同居しない親族、又は東京近郊に住む三親等内の同居しない親族が連帯保証人になる
- 連帯保証人となる親族の月収が、月収基準以上
であれば審査基準を満たします。
例のケースの場合、連帯保証人になってくれる親族の月収が20万円以上あれば、確実に基準を満たします。
こどもすくすく割
母子家庭で児童福祉手当、児童扶養手当を受給中であれば、こどもすくすく割の対象となります。
こどもすくすく割というのは家賃の割引制度です。賃貸契約の形態は10年間の定期借家契約(通常は満了後に再契約可能)で割引期間は、
- 3年間
- 子供が18歳になる年度末
の長い方の期間となります。期間中に子供が生まれた場合の延長はありません。
実際の家賃の割引率は20%(100円未満切捨)となり、この金額は入居審査の月収基準にも適用されます。
従って5万円の家賃の場合、実際の家賃は割引後の4万円となり、月収基準は20万円から16万円に引き下げられます。
こどもすくすく割の詳しい内容は、JKK東京のホームページにあるひとり親世帯入居サポートにありますので、参考にして下さい。
母子家庭で都営住宅に応募、利用できる制度とは?
母子家庭になると、何かと生活に困難がつきまといやすいですが、一方で母子家庭の生活を支えてくれる有利な制度もたくさんあります。
ただし、どの支援も自動的に適用になる制度はほとんどなく、自分で申請する必要があります。
何が使えて何が使えないのか、インターネットは重要な情報源になりますが、全国一律ではない、自治体単位のローカルなサービスについては、思わぬ見落としをする場合があります。
調べても不安が残る場合は、多少手間はかかるかもしれませんが、役所の窓口に出向いて問い合わせるというのも1つの解決法ではないでしょうか。