母子手当の不正受給がバレる!? 養育費を隠して申請するリスクとは

離婚して母子家庭になり、元夫から養育費をもらっている方は多いと思います。収入が限られていることが多い母子家庭にとっては、生活のためには養育費は非常に大切ですよね。

養育費以外にも、今は国や自治体などから母子家庭をはじめとするひとり親世帯を経済的に支援してくれる制度は沢山あり、支援の条件に当てはまる必要はあるものの、様々な支援を利用しているという人は少なくないでしょう。

そういった支援制度のひとつに「母子手当」があります。

母子手当は正式には「児童扶養手当」という名称ですが、母子手当と言った方がイメージがしやすいので、通称としてこちらが使われることもあります。

この母子手当を受けるにはいくつか条件があり、そのひとつが所得です。決められた金額より少ないことが母子手当を受ける条件で、扶養家族の人数などで金額は細かく分かれています。

そしてその所得には、自分が働いて得た収入だけでなく、養育費を合算することになっています。そのため、自分の収入だけなら母子手当がもらえるけど、養育費を一緒にすると所得が条件を超えてしまい、そのために母子手当はもらえない、ということも当然起こります。

本来母子手当は、生活の困窮している家庭を支援するための制度ですから、養育費をもらって収入がある程度あれば支援の必要はない、ということになりますが、中には、養育費をもらい、母子手当の所得条件を超える収入がありながら、養育費のことを隠す人もいます。

これは不正受給と呼ばれ、立派な違反行為です。

ですが現実問題として、養育費をもらっても生活は苦しく、少しでも収入を増やしたい、という思いから、こうした不正受給をしている方も実際にはいるかもしれません。

では、もしこの不正受給がバレたらどうなるのでしょうか?

そこでここでは、養育費をもらうことで所得制限を超えているにもかかわらず、母子手当を受給していることがバレたらどうなるのか、解説したいと思います。

目次

母子手当の受給、養育費をもらっていたらどうなる?

母子手当を受けるには、決められた所得より少ないことが条件、と先に書きました。

具体的には下表の金額が決められています。

扶養親族の数本人の所得
(全額支給)
本人の所得
(一部支給)
配偶者および
扶養義務者の所得
0人49万円未満192万円未満236万円未満
1人87万円未満230万円未満274万円未満
2人125万円未満268万円未満312万円未満
3人163万円未満306万円未満350万円未満
4人201万円未満344万円未満388万円未満

上表の金額は、養育費をもらっていても変わりません。養育費をもらっている時は、自身の所得に養育費がプラスされ、その金額で判断されます。

ただし、もらっている養育費が全額プラスされるのではなく、80%に減額して加算することになっています。月5万円の養育費をもらっているのであれば、5万円x80%=4万円がご自身の収入に加算されます。

母子手当の受給、養育費をもらっていることがバレたら?

養育費をもらっていてそれを申告しないでいても、いずれバレる可能性はあります。母子手当の不正受給がバレたときは、次の措置がとられます。

  • 不正受給をしていた期間に受け取った母子手当をすべて返金
  • 3年以下の懲役、または30万円以下の罰金

例として、東京都江戸川区のホームページでは、不正受給への対応が次のように明記されています。

偽りの申告、必要な届出をしないなど、不正な手段で手当を受給した場合は、お支払いした手当を返還していただくとともに、法35条に基づき、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることがあります。

【偽りの申告の例】

  • 異性と同居し生計が一緒であるが、申告をせず手当を受給している(住民票を登録していなくても、実際に生活をともにしている場合も含む)
  • 児童の父又は母から養育費をもらっているが、申告をしていない
  • 住民票の住所に住んでいない など

他の地域、自治体でも基本的には同じ対応がとられます。

給与収入がある母子家庭で子供が一人いる場合、母子手当を受給できるのは大体年収の目安は350万円までです。そのため、養育費を申告すると手当が減額されたり、もらえなくなることを心配して申告するのをやめよう、と考える人もいます。

しかし、母子手当は児童扶養手当法に定められ、税金で支給されているもので、適正な申請や受給が行われるように、厳正な審査が行われます。受給資格があるかや、どのように生計を立てていて、収入の状況などの調査を行います。

預金通料・給料明細の開示を求められることもあり、隠しとおすことは難しく、バレる確率は非常に高いです。当たり前のことですが、バレなければいいと考えず、ルールに従って申請するようにしましょう。

またこのほかにも、担当者の質問や調査、書類の提出などに応じないなどルールが守られてないことが分かると、母子手当の支給をされなかったり差止めが行われたりしますので、指摘を受けたときは真摯に対応するようにしましょう。

母子手当の受給、慰謝料は養育費に含まれる?

元夫から養育費のほかに慰謝料をもらっている母子家庭の方もいるでしょう。慰謝料は養育費と同じように所得に合算されるのでしょうか?

答えはNoです。慰謝料は養育費には含まれず、母子手当を受ける上での所得には合算されません。

母子手当は自分から申請することで受給できるようになりますが、申請する時には、自身の所得のほかに養育費は報告しなくてはいけませんが、慰謝料の申告は必要ありません。

これはつまり、慰謝料は母子手当の所得制限には含まれないことを意味しています。日々の生活費にもなる養育費は所得とされますが、慰謝料は離婚による一時的な痛み代で生活費ではない、ということなのでしょう。

また、慰謝料を離婚する時に一括でもらっていても、分割して毎月もらっていても、どちらも母子手当の所得には合算されません。

母子手当の申請方法は?

母子手当を受けるための申請の手続きに際しては、必要書類を揃えないといけません。そしてその書類は自治体ごとに違うので、事前に問い合わせをして確認しておけば間違いがありません。

必用書類としては

  • 請求者と対象児童の戸籍謄本
  • 請求者と対象児童・世帯全員の住民票の写し
  • 請求者・扶養義務者の前年の所得証明書
  • 預金通帳
  • 請求者・対象児童・世帯全員のマイナンバーカード
  • 健康保険証
  • 年金手帳

などがあります。

受給資格者の認定を受けたら、毎年8月に現況届を提出し、受給資格の確認をします。

また、もし複数の勤務先から給与を受け取っている場合は全ての所得の申告が必要なので、忘れないようにします。

最新の法改正:養育費不払い解消推進法

2023年4月から「養育費の支払確保及び円滑な面会交流の促進に関する法律」(養育費不払い解消推進法)が施行されました。主なポイントは以下の通りです:

  • 養育費の取り決め義務化:離婚時に養育費の取り決めを行うことが努力義務となりました。
  • 情報提供制度の創設:養育費の支払い状況に関する情報を、行政機関が収集・提供できるようになりました。
  • 養育費立替払い制度の検討:国は養育費の立替払い制度の創設を検討することが明記されました。

この法改正により、養育費の確実な受け取りが促進され、それに伴い母子手当の申請時にも養育費の正確な申告がより一層求められることになります。

養育費と母子手当の関連性

養育費の80%が所得にどう影響するか

養育費は、子どもの生活を支えるために非共有親から受け取る金額です。しかし、この養育費は所得として計算され、母子手当の受給資格に影響を与えます。具体的には、養育費の80%が所得として計上されます。

例えば、あなたが月に5万円の養育費を受け取っているとします。この場合、その80%である4万円が所得として計算されます。この4万円は、母子手当の受給資格を決定する際の基準となります。

母子手当は、一定の所得があると受け取ることができない制度になっています。そのため、養育費を受け取ることで所得が増え、母子手当の受給資格がなくなる可能性があります。

また、養育費は、非共有親が子どもの生活費を支えるために支払うものです。そのため、養育費を受け取ることで、子どもの生活費を補うための母子手当が必要ないと判断される可能性もあります。

このように、養育費の80%が所得として計算されることは、母子手当の受給資格に大きな影響を与えます。養育費を受け取ることで生活が楽になる一方で、母子手当の受給資格を失う可能性があるため、注意が必要です。

養育費を受け取っている場合の母子手当の受給条件

母子手当を受けるためには、一定の所得制限があります。その所得には、自分が働いて得た収入だけでなく、養育費も含まれます。したがって、養育費を受け取っていることを隠して母子手当を受ける行為は不正受給となり、法律に違反する可能性があります。不正受給が発覚した場合、受け取った母子手当を全額返還する義務があります。さらに、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあります。

慰謝料と母子手当の関係性

慰謝料が母子手当の所得に含まれない理由

慰謝料は、離婚や別居による精神的な苦痛を補償するために支払われる金額です。しかし、この慰謝料は母子手当の所得には含まれません。その理由は、慰謝料が一時的な収入であり、定期的な収入とは異なるからです。

母子手当の所得制限は、定期的な収入に基づいて計算されます。そのため、一時的な収入である慰謝料は所得に含まれません。これは、慰謝料が一時的な収入であり、その後の生活を維持するための定期的な収入とは異なるからです。

また、慰謝料は、離婚や別居による精神的な苦痛を補償するものであり、子どもの生活費を支えるためのものではありません。そのため、慰謝料を受け取ることで母子手当の受給資格が失われることはありません。

しかし、慰謝料を受け取ることで生活が安定し、母子手当が必要ないと判断される可能性もあります。そのため、慰謝料と母子手当のバランスを考えることが重要です。

慰謝料を受け取っている場合の母子手当の受給条件

慰謝料を受け取っている場合でも、母子手当を受け取ることは可能です。しかし、その受給資格は所得制限によって決まります。母子手当の所得制限は、母子家庭の年収が一定額を超えると受け取ることができなくなります。

慰謝料は、離婚や別居による精神的な苦痛を補償するために支払われる金額であり、この慰謝料は所得として計算されません。つまり、慰謝料を受け取ることで所得が増え、母子手当の受給資格がなくなるということはありません。

しかし、慰謝料を受け取ることで生活が安定し、母子手当が必要ないと判断される可能性もあります。そのため、慰謝料と母子手当のバランスを考えることが重要です。

例えば、大きな慰謝料を受け取った場合、その金額を子どもの生活費に充てることができます。その結果、母子手当が必要ないと判断される可能性があります。

このように、慰謝料を受け取ることと母子手当の受給資格は密接に関係しています。慰謝料を受け取ることで生活が楽になる一方で、母子手当の受給資格を失う可能性があるため、注意が必要です。

母子家庭の現状:統計データから見る実態

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると:

  • ひとり親世帯の80.8%が児童扶養手当(母子手当)を受給しています。
  • 母子世帯の平均年間収入は348万円です。
  • 養育費の取り決めをしている割合は42.4%ですが、実際に受け取っている割合は24.3%にとどまっています。
  • 養育費の平均月額は43,707円です。

これらの数字から、多くの母子家庭が経済的に厳しい状況に置かれていることがわかります。

母子手当の受給、養育費がバレる心配より正しく申告を

母子手当の支給額は、所得によって全額支給と一部支給に分かれます。所得には養育費の8割を含めてから計算しますが、養育費の金額次第では、一部支給になったり支給の対象にならなくなったりするので、何とか隠したいといった気持ちはわからないでもありません。

しかし、母子手当というのはひとり親家庭の生活が安定し、子供が健全に育つことが目的であり、養育費をもらっている人は、国の支援よりもまず養育費を優先して生活設計をすることが求められています。

母子手当の目的は、経済的に困窮しているひとり親世帯の生活の安定と自立を促すことで、子供が小さいなどの理由があって十分に働けないときに活用出来ます。

ルールを守って正しく活用することで、苦しい生活の手助けになります。

国はひとり親世帯等の支援策は強化・実施していて、各都道府県や社会福祉協議会には支援相談窓口もあり、生活相談や就労支援など支援の内容も幅広いので、困っている場合は相談すると解決策も見つかるのではないでしょうか。

母子手当に関する注意事項と相談窓口

厚生労働省からの注意喚起

厚生労働省は児童扶養手当の申請に関して、以下のような注意喚起を行っています:

「虚偽の申請や不正受給は法律で罰せられます。収入の申告は正確に行ってください。養育費も収入として申告が必要です。不明な点がある場合は、お住まいの市区町村の窓口にお問い合わせください。」

相談窓口情報

母子家庭の支援や児童扶養手当に関する相談は、各都道府県・市区町村の福祉事務所で受け付けています。また、法テラス(日本司法支援センター)でも、養育費や母子家庭の支援制度に関する法律相談を無料で受けられる場合があります。困ったときは一人で抱え込まず、これらの窓口に相談することをおすすめします。

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