母子家庭で親と同居、世帯分離するとデメリットはある?

母子家庭になった時、状況によっては元の家に住み続けられなくなる場合があります。

それまで住んでいた家にまだ住宅ローンが残っているけど、収入がない、あるいは少なくて返済を続けることができない、賃貸だけど家賃が高くて払えない、住んでいた家にそのまま残りたくないなど、様々な理由があるでしょう。

そのような時、家を出て新しく住む場所を探すことになりますが、希望する物件を探すのは時間がかかるでしょう。また家賃のほかにも敷金などのお金もかかり、必要書類の準備などの手続きなどもあって、簡単ではありません。

子供のことを考えると、すぐにでも住む所を決めたいですよね。そこで、まず差し当って自分の実家、つまり親の家に身を寄せ、同居を考える人も多いのではないでしょうか。

親と一緒に住めば、家賃はかからないし光熱費や食費などの負担も少なくなり、経済的にはかなり助かるでしょう。また、自分が働きに出ている間、子供の面倒を親に見てもらえる、というメリットもあります。

行政上の手続きとしては、住む場所が変われば住民票を移動しなくてはなりませんが、その時、自分を親の扶養家族にするかどうか、よく考えて決める必要があります。

母子家庭の母親の年収が130万円以下なら親の扶養家族にでき、そのことによるメリットも色々あります。

その一方で、母子家庭を対象にした支援制度の多くは収入を条件にしています。親と同居し扶養家族になると収入が増え、条件からはずれてしまう場合の対応として、世帯分離するという方法があります。世帯分離すれば母子家庭世帯の収入は変わらない、と考えるのがその理由です。

しかし実際には、すべてがそういう判断になるわけではありません。中には世帯分離しても同居と判断されるケースもあります。つまり世帯分離にはデメリットもある、ということです。

そこでここでは世帯分離のデメリットについて、詳しく見ていきます。親と同居を考えている母子家庭の方は、是非参考にして下さい。

目次

世帯分離とは?

母子家庭と世帯分離の関連性は深く、その背景や影響を理解することは非常に重要です。以下では、世帯分離の基本的な概念やその歴史的背景について詳しく解説します。

世帯分離とは何か

世帯分離とは、一つの家族が二つ以上の世帯に分かれて生活することを指します。特に母子家庭では、経済的な理由や子供の教育環境など、さまざまな要因から世帯分離を選択する家庭が増えています。しかし、その背後には多くのデメリットが存在し、母親や子供たちにとって大きな負担となることも少なくありません。

日本の場合、高齢化社会の進行とともに、高齢者が一人暮らしをするケースや、成人した子供が親とは別の住居で生活を始めるケースが増えています。また、都市部の高い家賃や仕事の都合、子供の教育環境など、経済的・社会的な要因も影響しています。

特に母子家庭においては、経済的な困難や子供の教育のために、祖父母や親戚との同居や近くに住むことを選択するケースが増えています。しかし、このような生活形態は、家族間のコミュニケーションの減少や、子供の心理的な負担を引き起こすことが指摘されています。

さらに、世帯分離は、家族の絆や支え合いの重要性を再認識させる一方で、新たな生活スタイルや価値観の形成を促しています。近年では、世帯分離を選択する家庭が増える中で、そのメリットとデメリット、そしてそれに伴う新しい家族の形成やコミュニケーションの方法についての研究や議論が進められています。

世帯分離の歴史的背景

日本の家族構造は、明治時代から戦後の高度経済成長期にかけて、大家族から核家族へと変化してきました。この変化は、都市化、産業化、そして教育制度の変革など、さまざまな社会的・経済的要因によって進行してきました。

戦後の高度経済成長期には、都市部への人口集中や企業の中心的な役割が強まる中で、単身赴任や都市部での一人暮らしが増加しました。この時期、核家族化が進行し、家族の形態が多様化してきました。

しかし、バブル経済の崩壊後の1990年代以降、経済的な困難や非正規雇用の増加、高齢化社会の進行など、新たな社会的課題が浮上しました。これに伴い、母子家庭や高齢者の一人暮らしが増加し、家族間での経済的・物理的な距離が生まれることとなりました。

特に都市部では、土地や住宅の高騰、子供の教育環境や介護の問題など、多くの要因が絡み合い、祖父母との同居や親子の世帯分離が進行しています。このような背景から、現代の日本においては、さまざまな形態の家族が存在し、それぞれが異なる課題や問題を抱えているのが現状です。

世帯分離の背景

世帯分離の背景には、母子家庭の増加や経済的な側面が大きく影響しています。以下では、これらの背景について詳しく探っていきます。

母子家庭の増加の背後にある事情

日本の母子家庭の増加は、近年の社会的・経済的変動の中で顕著になっています。以下に、その主な要因を詳しく解説します。

1. 離婚率の上昇: 統計によれば、日本の離婚率は1970年代から急激に上昇し、2000年代にはピークを迎えました。この離婚率の上昇は、経済的な困難や夫婦間の価値観のずれ、家庭内の役割分担の変化などが影響しています。

2. 未婚の母の増加: 若い世代の結婚観の変化や、経済的な理由から結婚を避けるケースが増えています。その結果、未婚のまま子供を持つ女性が増加しています。

3. 経済的な困難: 非正規雇用の増加や経済の停滞により、家計が厳しくなる家庭が増えています。特に母子家庭では、一つの収入源での生計が困難となり、経済的なサポートが必要となるケースが増えています。

4. 夫婦間のコミュニケーション不足: 現代の忙しい生活の中で、夫婦間のコミュニケーションが取りにくくなっています。これが原因で、理解や信頼の欠如が生じ、結果として離婚に至るケースが増えています。

5. 社会的な価値観の変化: 伝統的な家族観や役割分担の変化、女性の社会進出など、社会全体の価値観が大きく変わってきています。これにより、家族の形態や役割が多様化し、母子家庭が増加する背景となっています。

これらの要因が絡み合い、母子家庭の増加という現象が進行しています。そして、その結果として、経済的・精神的な負担を軽減するための世帯分離が選択されるケースが増えてきています。

経済的な側面から見た世帯分離

世帯分離の背景には、経済的な側面が大きく影響しています。特に母子家庭では、収入の制約が大きく、生活の質を維持するための選択として世帯分離が行われることが増えています。

1. 収入の制約: 母子家庭の多くは、母親の収入のみで生計を立てています。日本の労働市場では、女性の平均賃金が男性よりも低く、非正規雇用の割合も高いため、経済的な困難が生じやすい状況です。

2. 都市部の高い生活費: 都市部では、家賃や公共料金、交通費などの生活費が高くなっています。特に家賃は、家計の大きな負担となり、世帯分離を選択する大きな要因となっています。

3. 子供の教育費: 子供の教育費は、塾や習い事、大学進学など、長期にわたる大きな出費となります。これに対応するため、祖父母との同居や親戚との共同生活など、経済的なサポートを受ける形での世帯分離が行われることが増えています。

4. 日常の生活費: 食費や医療費、衣服代などの日常の出費も、収入が限られている母子家庭にとっては大きな負担となります。このような経済的な困難を乗り越えるための方法として、世帯分離が選択されるケースが増えています。

これらの経済的な側面を考慮すると、世帯分離は、家計の負担を軽減するための現実的な選択として行われていることが理解できます。しかし、経済的な側面だけでなく、心理的な側面や子供の将来に与える影響など、多くの要因が絡み合っていることも忘れてはなりません。

母子家庭で世帯分離、デメリットばかりではない?

母子家庭で世帯分離するデメリットを見る前に、メリットを確認しておきましょう。メリットしては、次のことがあります。

  • 国民健康保険料が安くなる
  • 介護費用の自己負担を減らすことができる
  • 介護費用の自己負担の上限が下がる
  • 介護保険施設利用の負担が軽減される
  • 後期高齢者医療制度の保険料が下がる

一番目の国民健康保険料が安くなるのは、今現在夫婦世帯、もしくは親と同居しており、自分以外の家族が働いていて自分は働いていない場合、世帯分離すると自分の世帯の国民健康保険料が割り引かれる、というものです。母子家庭でこれから親と同居して、というケースでは該当しません。

またその他は、自分の扶養家族に介護が必要な人がいる、後期高齢者に該当する人がいる場合に限定されるので、一緒に住んでいるのは子供という母子家庭にとっては、メリットとしての実感はないでしょう。

母子家庭で世帯分離するデメリットは大きい?

次に、母子家庭で世帯分離した場合のデメリットです。デメリットについては、制度面生活面の両方に存在します。

母子家庭で世帯分離するデメリット、手続きの煩雑さ

制度面でのデメリット、まず第一は手続きの煩雑さです。

世帯分離の届け出は市区町村の窓口となりますが、届け出は本人、もしくは世帯主が行うことが前提で、そうでない場合は委任状が必要になります。

母子家庭で日中は仕事をしているので役所には行けない、という人は多いと思います。親も働いていれば同じでしょう。仕事を休むか親族に委任することになりますが、どちらにしても手間ですよね。

更に、必要書類として住民票を取得したり、書類の記入も必要になります。ある程度、まとまった時間がとれないとできないでしょう。

また届け出時には、世帯分離の理由も尋ねられます。

「生計を別々にする事になった」という理由以外の、介護費用の負担軽減などを素直に言ってしまうと、制度の趣旨に反するとして、受理されないことがあるので注意が必要です。

母子家庭で世帯分離するデメリット、国民健康保険料が増える

生活面のデメリットとしては、国民健康保険料の負担が増えることが挙げられます。

国民健康保険料は世帯ごとにかかります。つまり、親の世帯と自分の世帯それぞれに健康保険料がかかることになります。そのため、もし親に収入がある場合、自分の収入によっては負担が増えるケースがあります。

例えば札幌市の場合、親の1人が年収100万円、あなたも年収100万円で子供が1人の場合、親と自分が同一世帯であれば合計で154,900円になります。これが世帯分離した場合では、親と自分、各世帯の保険料がそれぞれ100,800円かかり、合算すると201,600円で、かなり額が増えてしまうのです。

母子家庭で世帯分離のデメリット、児童扶養手当はどうなる?

母子家庭の多くは児童扶養手当の支給を受けていると思います。この児童扶養手当は、世帯分離しないとどうなるのでしょうか?支給されなくなってしまうのでしょうか?

児童扶養手当の支給の基準は「家庭」

児童扶養手当は、親1人子1人の2人家族の場合、所得が87万円未満(給与収入で160万円)なら満額を受け取る事が出来ます。しかし、もし同居の親の所得が306万円を超えていた場合は、一部支給の対象にもなりません

ここで、自分の所得が87万円未満であるなら、世帯分離をすることによって自分の世帯の所得は87万円未満になります。

これで受給要件を満たすように見えますが、実際には児童扶養手当は世帯ではなく、同一建物に住む「家庭」を基準としている為、結局は親の所得も合算して判断されます。

つまり世帯分離してもしなくても、親の所得によっては児童扶養手当の支給は受けられなくなる、ということです。

毎月支給を受けていた児童扶養手当を受け取れなくなるのは、正直なところイタいですよね。でも、親と同居してもそのまま支給が受けられる方法があります。

児童扶養手当の支給を受けられる方法

それは、家計を親と完全に分けること、です。

具体的には

  • 住居を二世帯住宅にし、別々に生活する
  • 電気・ガス・水道などの生活インフラを親世帯と分離し、使用料の支払いも別で行う

実態として、親世帯と自分の家計が完全に独立している場合に限られます。

実際にそのようにして別家庭にして生活し、親と本当に別の財布で生活していたなら実態通りということになりますが、現実としては難しいでしょう。

なぜなら、親と一緒に食事をしたり、自分が仕事に行っている間は子供を見てもらったりしていたのを全て止めることで、親と同居する事で得られたメリットを全部捨ててしまう事になるからです。

だからと言って、もしその実態を隠して児童養護手当を受給していた場合、それは不正受給になってしまうので、絶対してはいけません。

親も子供と一緒にいられなくなり、子供もさみしい思いをするかもしれません。そうなると、児童扶養手当のためではあっても、完全に世帯・家計を分けるのは考え物ではないでしょうか。

尚、内縁関係の配偶者がいる場合、世帯に名前がなくても同居の実態があれば児童扶養手当の判断基準とされるので、同様の注意が必要です。

世帯分離が母子家庭の生活に及ぼす影響

母子家庭で世帯分離を考える際、その影響は生活のあらゆる面に及びます。生活費の変動、子供の世話、親との関係性の変化など、これらの要素は全て母子家庭の生活に深く関わっています。

世帯分離と生活費の変動

世帯分離は、生活費に大きな影響を及ぼす可能性があります。母子家庭では、一つの世帯から二つの世帯に分かれることで、生活費が増加することが一般的です。例えば、家賃や光熱費などの固定費が増えるだけでなく、食費や日用品の費用も増加します。また、世帯主となる母親が働きながら子育てを行う場合、子供の保育費や学費など、新たな出費が発生することもあります。

生活費の増加に対する対策

生活費の増加は避けられないかもしれませんが、計画的な予算管理により、その影響を最小限に抑えることが可能です。具体的には、毎月の収入と支出を詳細に把握し、必要な出費を計画的に行うことが重要です。

世帯分離と子供の面倒見の問題

世帯分離後、子供の面倒見は大きな課題となります。特に、母親がフルタイムで働いている場合、子供の学校の行事や病気の時の対応など、日常的な子育ての負担が増える可能性があります。また、子供自身も、親との生活環境が変わることで、心理的なストレスを感じることがあります。

子供の面倒見に対する対策

子供の面倒見の問題に対する対策として、地域の支援サービスを利用することが考えられます。例えば、地域の児童館や学童保育などのサービスを利用することで、子供の安全な場所を確保しながら、母親の仕事と両立することが可能になります。

世帯分離と親との関係性の変化

世帯分離は、親と子供の関係性にも影響を及ぼします。一緒に暮らしていた親と別居することで、親子のコミュニケーションの頻度や質が変わる可能性があります。これは、子供の成長や心理的な安定に影響を及ぼす可能性があります。

親との関係性の変化に対する対策

親との関係性の変化に対する対策として、定期的なコミュニケーションを保つことが重要です。例えば、電話やビデオ通話を利用して、親と子供が定期的に話す時間を設けることで、親子の絆を保つことが可能です。

世帯分離の母親や子供たちへの影響と対策

世帯分離は、母親や子供たちにさまざまな影響を及ぼします。以下では、その影響とそれに対する対策について詳しく解説します。

子供への影響と対処法

世帯分離は、子供たちの心理的・社会的な成長に様々な影響を及ぼします。以下に、その主な影響と対処法について詳しく解説します。

1. 心理的な影響: 子供たちは、親の不在や家庭環境の変化により、孤独感や不安、ストレスを感じることがあります。特に小さい子供は、安定した環境や親の愛情が必要であり、その欠如は心の成長に影響を及ぼす可能性があります。

2. 教育の影響: 世帯分離により、母親が忙しくなることで、子供の学業や習い事のサポートが難しくなることがあります。また、経済的な制約から、教育環境の選択が限られることも考えられます。

3. 社会的な影響: 子供たちは、友人や学校の先生との関係性を築く中で、自分の家庭環境が他の家庭と異なることを意識することがあります。これにより、自己評価が低くなることや、他者との関係性に悩むことが考えられます。

対処法:

1. 親子のコミュニケーションを大切にする: 定期的に子供の気持ちを確認し、話し合う時間を持つことで、子供の不安や悩みを早期に察知し、適切なサポートを行うことができます。

2. 外部のサポートを活用する: 学校のカウンセリングや地域の子育て支援センターなど、外部のサポートを活用することで、子供の心のケアや教育のサポートを受けることができます。

3. 安定した生活環境を提供する: 世帯分離による生活の変動を最小限に抑え、子供にとって安定した生活環境を提供することで、心の安定を図ることができます。

これらの対処法を取り入れることで、世帯分離の影響を最小限に抑え、子供たちの健やかな成長をサポートすることができます。

母親の心の負担とその対策

母子家庭や世帯分離の状況下での生活は、母親に多くの心の負担をもたらします。以下に、その主な負担と対処法について詳しく解説します。

1. 経済的なプレッシャー: 一つの収入源で家計を支えることが多い母子家庭では、日常の生活費や子供の教育費など、経済的なプレッシャーが増大します。特に、急な出費や収入の減少などのリスクに対する不安が常に伴います。

2. 子供の教育と成長の悩み: 子供の学業や将来の進路、友人関係など、子供の成長に関する悩みは、母親の心の負担となります。特に、親としての役割を一人で果たすことの難しさや、子供に十分なサポートを提供できているかの不安が生じることがあります。

3. 孤立感や社会的なプレッシャー: 世帯分離や母子家庭の状況は、周囲の家庭との違いや、社会的なプレッシャーを感じることがあります。これにより、孤立感や自己評価の低下、自己肯定感の喪失などの心の問題が生じることが考えられます。

対処法:

1. 地域の支援を受ける: 地域の子育て支援センターや母子家庭のための支援団体など、外部のサポートを活用することで、経済的な援助や心のケアを受けることができます。

2. 同じ状況の母親たちとの交流: 同じような状況の母親たちとの交流を深めることで、共感や励ましを受けることができます。また、情報交換や相談を通じて、具体的な対処法やサポートを得ることができます。

3. 心のケアの専門家を利用する: 心理カウンセラーや臨床心理士などの専門家を利用することで、心の問題を解決するための具体的な方法やアドバイスを受けることができます。

これらの対処法を取り入れることで、母親の心の負担を軽減し、より健やかな心で生活することができます。

母子家庭の世帯分離、デメリットばかりにとらわれないで

世帯分離のメリットとデメリット、どちらを重視すべきかは個々の家庭によります。気を付けるべきなのは、単純に金銭負担の多い少ないだけでは判断ができないことでしょう。

また、法制度は見直されていく事も忘れてはいけません。メリットを狙って世帯分離しても、制度見直し1つで無意味になったりデメリットに変わってしまう可能性もあるのです。

法制度は公平性が大切にされます。誰かに極端に得をさせるような状況があれば、いずれは修正されていきます。そんな曖昧な制度を追いかけて、母子家庭となりただでさえ仕事と育児で忙しい日々に、更に気がかりな事を増やすのは効率が良いこととは言えないかも知れません。

その後の生活変化を考え、長いスパンで、トータルで無理のないように考える事が大切ではないでしょうか。

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