お子さんが学校に行かなくなる、いわゆる不登校となってしまった場合、何が原因だと考えますか?
そう聞かれると、「家庭に問題があるのでは?」と言う方は多いでしょう。特に母子家庭としてがんばっているお母さんになると、「やっぱり父親がいないから?」と心配になることも多いと思います。
母子家庭では経済的な不安が強く、お母さんが働いているお宅がほとんどだと思います。すべてはお子さんのためとはいえ、専業主婦の家庭と違って子供との時間を十分にとれないと自覚しているので、そういった発想になってしまうのでしょう。
では、本当に母子家庭には不登校の子どもが多いのでしょうか。
ある調査では、子どもを持つ世帯のうち、ひとりでも不登校となってしまった家庭は、母子家庭では約11%と言われています。ついで父子家庭が約10%、両親がそろっている家庭は約4%となっています。
割合から見ると、やはりふたり親世帯よりは多いとは言えるでしょう。父子家庭よりも多いですが、ひとり親世帯のうち80%以上は母子家庭であり、そもそも母子家庭の数が多いのが不登校の割合が高くなっている要因です。
実際のところ、子どもが不登校となるにはさまざまな理由があり、家庭環境だけが原因になっているわけではありません。
親の愛情をしっかり受け取れていない、世間体を気にして無理をさせてしまったなど、たしかに母子家庭で起こりやすい原因も多いでしょう。ですがそれ以外にも、過保護や過干渉、教育熱心すぎる親という、母子家庭であることとは直接関係がない問題の場合もあります。
学校内でのいじめや、友達や先生との関係性、勉強についていけない、なじめないなど、家庭の外で起きた問題も多いと考えられるでしょう。
そのため、もしお子さんが不登校になってしまったら、「自分のせいかも」と思いつめすぎず、まずは専門家に相談して、原因は何か、しっかり解明して改善していくことが大切となってきます。
令和時代に入って不登校の子どもは連続的に増えており、今や決して珍しい状況ではありません。令和元年の調査では、中学生の25人に1人は不登校とされており、「同じように悩んでいる人は多い」ということがわかります。
そういった背景から、近年、不登校に関する相談先が増えており、それぞれ専門家が対応してくれますので、1人で抱えてしまわずに、困ったら助けを求めましょう。
不登校になった原因によってどうしたらいいか対策は変わってきますが、テストの回答とは違って答えは一つではありません。原因は同じであっても、子ども一人ひとりに合った対策をしないと不登校を解決することはできません。
専門家であれば、子どもひとりひとりの性格や特性、生活などを見て、その子にとっての真の原因は何か、どうしたらいいか、適切に判断しアドバイスをすることができます。
ここでは、不登校を相談できる場所をいくつかご紹介します。
母子家庭に不登校の子は多い?考えられる原因とは?
不登校については国も重要な問題ととらており、「不登校に関する調査研究協力者会議」という場で、実態調査や対策検討、支援策の策定などが行われています。
不登校になる原因は様々で、テレビ等でもよく取り上げられますが、第三者的な見方をした推定がほとんどです。
それに対して文部科学省では、実際に不登校になった児童や家族、学校に直接その原因をヒアリングし、その結果から対策を検討しています。不登校の原因としては、その結果が真の原因に近いと言えるでしょう。
この調査では、不登校になったと考えられる原因を次の二段階に分けているのが大きな特徴で、子どもがどのように感じていたか、その変化もわかるようになっています。
- 最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ
- 最初のきっかけとは別の、学校に行きづらくなる理由
さらに、不登校の間の子どもの気持ち、親から見た子どもの状況、親の対応、子どもの相談相手と相談時期などもヒアリングされており、不登校の実態がとてもよくわかります。
最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ
(以下、文部科学省「不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年度)」より抜粋)
- 先生のこと(先生と合わなかった、怖かった、体罰があった、など)
- 身体の不調(学校に行こうとするとおなかが痛くなった、など)
- 生活リズムの乱れ(朝起きられなかった、など)
- 友達のこと(いやがらせやいじめ、など)
先生や友達のことが多いのは予想が付きますが、身体の不調や生活リズムの乱れなどは、周りからはなかなかわからない原因ではないでしょうか。
不登校の間の子どもの気持ち
- ほっとした・楽な気持ちだった
- 自由な時間が増えてうれしかった
- 勉強の遅れに対する不安があった
- 進路・進学に対する不安があった
- 学校の同級生がどう思っているか不安だった
安心した反面、同時に不安を抱えていた子どもも多いことが分かります。
学校を多く休んだことに対する感想
- もっと登校すればよかったと思っている
- しかたがなかったと思う
- 登校しなかったことは自分にとってよかったと思う
不登校を悔やんでいる子どもが多い一方で、よかったと思っている子どもも同じくらい多いので、子どもによって大きな違いがあることがわかります。
欠席時の子どもの状況(保護者回答)
- インターネットやゲームを一日中していた
- 極度に落ち込んだり悩んだりしていた
- 原因がはっきりしない腹痛、頭痛、発熱などがあった
- 家から出でなかったり他人との関わりを避けたりしていた
子どもにも相応の反応が出ていた、ということでしょう。また、外を出歩くこともそれほどなかったようです。
子どもとのかかわり(保護者回答)
- 日常会話や外出など、子どもとの普段の接触を増やした
- 子どもの気持ちを理解するよう努力した
- 子どもの進路や将来について不安が大きかった
- 子どもにどのように対応していいのかわからなかった
親としてできることは何でもしてあげよう、という姿勢が痛いほどわかります。一方で、大きな不安を感じていた保護者は多い状況もわかります。
相談しやすい方法
- 直接会って話す
- メール・SNS(LINEなど)
子どもの方も、何らかの会話を求めていた子が多いことがわかります。
最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由(上位回答)
- 勉強が分からない
- 先生のこと
- 生活リズムの乱れ
多いのは、授業が進むにつれて勉強についていけなくなることで、不登校の大きな原因になってきます。
学校に戻りやすいと思う対応(上位回答)
- 特になし
- 学校の友達からの声掛け
- 個別に勉強を教えてもらえること
この中で、「特になし」と回答した子供は5割を超え、予想以上に多い結果になっています。子供には自分で解決策が見つからない、ということでしょう。
休みたいと感じ始めてから実際に休み始めるまでの間に、どのようなことがあれば休まなかったと思うか
- 特になし
- 学校の友達からの声掛け
「特になし」が5割以上と「学校に戻りやすいと思う対応」と同じくらい多い回答になりました。
学校に行きづらい、休みたいと感じ始めてから実際に休み始めるまでの期間
- 1か月未満 27.3%
- 1か月以上6か月未満 19.8%
- 1年以上 13%
- わからない 29.9%
全体の約半分の子供が、休みたいと感じ始めてから半年以内で休み始めています。
相談した相手
- 家族
- 誰にも相談しなかった
一番身近な家族に相談する子供がいる一方で、誰にも相談しないという子供もかなりいました。
支援機関等の対応への評価(保護者回答)
利用した 26%
利用できる環境であるが利用していない 22.5%
利用できる環境にない 38.5%
支援機関を利用したのは四人に一人と、大多数の保護者は個人でなんとかしようとしていたことがわかります。
母子家庭には不登校の子は多い?どこに相談すればいい?
不登校を相談する所としては、公的な支援機関、フリースクール等の民間施設、自宅学習などがあり、もし何らかの障害がある場合は、専門の相談機関、医療機関になります。
その中から、利用しやすい相談先を紹介します。
学校
一番初めに考えたいのが、通っている学校です。担任の先生は心配してくれているでしょうから、すでに連絡を取っている方も多いかもしれません。
不登校の問題が大きくなって以降、学校側の対応として心理学のプロ、スクールカウンセラーを置くようになっています。まずは担任の先生経由で相談するのをおすすめします。
ただ、スクールカウンセラーの方が毎日出勤していない学校もあるので、注意が必要です。保健室や図書室なら通える、という子供さんも多いので、様子を見て話してみましょう。
教育支援センター
教育支援センターというのは、不登校の子供のために教育委員会が設置した公的機関で、各地域の教育委員会等によって運営されており、平成29年度時点で全国に1142か所あります。
教員免許を持つ職員のほか、臨床心理士や社会福祉士の資格を持つ職員が在籍し、子供や保護者の状況に応じた指導を行っています。
プロの心理士による適応指導教室へ参加すれば、お母さんと子供、それぞれがカウンセリングを受けられますし、こちらに来ていれば学校で出席扱いとなることも多いので、ありがたい制度と言えます。
また、教育支援センターは公的機関なので、利用は基本的に無料です。
ただしこの機関が設置されていない地域もまだ多いことから、利用の審査にも時間がかかるので、事前の確認が必要です。
利用の条件
教育支援センターは各自治体によって運営されており、利用条件も自治体ごとに定められているので、確認が必要です。
例として東京都目黒区の場合、
区立小・中学校に在籍する長期欠席児童・生徒で、本人及び保護者が入級を希望し、在籍学校の校長が必要と認めるもの
となっています。
自治体によって細かい条件は違いますが、共通しているのは「本人の意思」です。保護者の意向ではありません。本人が不登校を何とかしたい、そのためにここに通いたい、と思う気持ちが一番重要です。
利用の手続き
教育支援センターに面談を申し込む
↓
保護者が在籍する学校の校長に「入室願書」を提出する
↓
校長が「入室申込書」を作成し、教育支援センターに提出する
↓
教育支援センターから「入室決定通知書」が保護者と校長に送付される
このように、在籍校の校長先生の助けが必要になります。
一般社団法人 不登校支援センター
不登校支援センターは、子供の不登校を克服し、復学をサポートすることを目的とした民間の支援施設です。
過去のカウンセリング件数は16万件、87.1%という高い解決率の不登校支援施設です。膨大なデータや心理検査をもとに、カウンセリングという手法を用い、子供を社会適応へ導いてくれます。
札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡に支部があり、遠方の方にはオンラインでの対応もあります。
公的機関である教育支援センターとは異なり、利用に際しては有料です。カウンセリングとコーチングで100分16,500円となりますが、初回は100分の無料カウンセリングがあるので、これを利用して相談を始めることになります。
支部ごとに無料のセミナーなど、様々な活動もよく開催されており、日程はホームページで確認することができます。
家庭教育支援センター、ペアレンツキャンプ
ペアレンツキャンプというのは、小中学生の不登校の復学支援を目的とし、ペアレンツキャンプメソッドという独自の家庭教育法を使って、子供の社会性を育てて復学を目指し、同時にお母さんの学びともなる家庭教育を提供する施設です。
母子家庭など忙しい方には、電話やメールでの相談も可能で、子供に無理のない訪問カウンセリングも実施しています。
復学支援の月額は40,000円ですが、初回の電話カウンセリングは無料なので、こちらもこれを利用して相談を始めることになります。
母子家庭には不登校の子は多い?解決には専門家の力を借りて
近年、不登校の子供はとても多いのですが、「その原因は母親」と思われがちです。それは、いままで母子家庭の母親として、お子さんのためにひとりで頑張ってきた方にとって、どんなにか辛い現実でしょう。
不登校がつらいのは、それを自分でなんとかしようと、お母さんがひとりで抱えてしまうところにもあります。
不登校は現代では決してめずらしい問題ではありません。専門家の力を借りて適切に家庭の問題に対応すれば、お子さんだけでなく、お母さんもずいぶん生きやすくなるのではないでしょうか。