母子家庭で住まいを探すとき、候補は色々あると思いますが、まず最初に頭に浮かぶのは、賃貸のアパートではないでしょうか。
母子家庭は経済的に苦しい家庭が多いので、住む所も家賃のなるべく安いところが中心になってきますが、ご存じのように、交通の便がいい、都会にあるなど、条件のいい物件はどうしても家賃が高くなってしまします。特に母子家庭の場合、子供の学校や病院などの近くに住まないと不安になりがちで、無理をしてでもよい物件に、と考えるでしょう。
人気なのは、家賃が安くて部屋もそこそこ広く、交通の便などもそれほど悪くない公営住宅ですが、たいていはいつも満室で空き待ち、空きが出ても抽選で高倍率でなかなか当たらないし、部屋は、世帯人数は考慮されるものの、抽選に当たるまで確認できない、といった面があり、誰にでもおすすめ、とはいきません。
では、最近注目されている「UR賃貸」はどうでしょうか?
UR賃貸というのは、「独立行政法人都市再生機構」っていう、国が作った会社が管理する賃貸住宅で、「UR賃貸住宅」というホームページを見ると、全国で約71万戸ある、と書いてあります。「UR」と聞いて、テレビのCMを思い出した人もいるのではないでしょうか?
このUR賃貸、かなりお得に借りることができるようになっているのですが、さらに国が管理するだけあって管理もいきとどいていることから、じわじわと人気が高まってきています。また、母子家庭のための優遇制度があるのも見逃せないところです。
そこでUR賃貸について詳しく調べてみました。その結果、
確かに母子家庭のための優遇制度は助かる、でも条件が…
というわけで、順番にみていきますね。
UR賃貸住宅とは?
UR賃貸住宅とは、先に書きましたが、独立行政法人都市再生機構が管理する賃貸住宅で、範囲としては、大都市近郊の団地から都市部のタワー住宅まで、地域は北海道から九州まで、70万戸以上の戸数を管理しています。
また物件の種類ですが、新規物件のほか、公団住宅のリニューアルやリフォームなど、再利用する物件もあり、様々です。リニューアル、リフォームも通り一辺倒でなく、最近は凝ったデザインを採用してみたりと、その時代のニーズに合ったやり方をしているのも、人気が出てきている理由でしょう。
このことから、UR賃貸は戸数が多いのと新しめ、というのはわかりますが、それだけでは話題になりませんよね。ではUR賃貸住宅は、ほかの賃貸住宅とは何が違うのでしょうか?
UR賃貸住宅はほかの賃貸と何が違う?
UR賃貸住宅がほかの賃貸と違うと言えそうなのは、
- 礼金・仲介手数料なし
- 保証人なし
- 更新料なし
があります。
礼金・仲介手数料なし
これを聞いただけでは、では必要なのは家賃だけ?と思いますよね。でも違います。敷金は必要です。月額家賃の2ケ月分を入居時に払う必要があります。
とは言っても、この2つの支払いがいらないのは、母子家庭のような世帯にとっては大きな助けでしょう。
保証人なし
何かにつけて保証人のことになると困るケースが多い母子家庭にとって、保証人がいらないのは大変ありがたいですね。UR賃貸住宅は国の法人が管理しているからで、国が保証人の替わりになっている、と言ってもいいかもしれません。
更新料なし
賃貸住宅によっては、毎年、あるいは何年かごとに契約の更新が必要で、そのたびに更新料が必要、という物件もありますが、UR賃貸物件では、最初に契約をしたらそれ以降は基本、自動更新で更新料もなしとなっています。
このほかにUR賃貸住宅の特徴としては、
- 新築物件でなければ、入居は申し込みの先着順
- ほとんどが鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造で耐震性も安心
- 退去時、通常の使用に伴う損耗等の復旧費用をURが負担
があります。
新築物件でなければ、入居は申し込みの先着順
新築でなければ早いもの勝ちなので、これは!と思う物件を見つけたら、何はともかく申し込みですね。
ほとんどが鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造で耐震性も安心
最近よく問題になる耐震性も、国が管理しているのですから安心して住むことができます。
退去時、通常の使用に伴う損耗等の復旧費用をURが負担
見過ごされやすいのが、住宅を引き払う時の復旧費用です。気を付けていても、住み続けるうちにどうしてもボロくなっていってしまうもの。出るときになってお金が足りない、というケースは結構耳にしますが、UR賃貸住宅なら、その費用をURがもってくれます。
このように、一見いいことづくめのUR賃貸住宅で、母子家庭の方に是非、と言いたいところですが、実はそう簡単にはいきません。申し込みをするには条件があり、その条件が結構きついんです。
UR賃貸住宅を申し込みできる条件
UR賃貸住宅を申し込みできる条件は5つ
UR賃貸住宅を申し込みできる条件は次の5つで、全部に当てはまらないといけません。
- 申込者本人の平均月収額が基準月収額以上ある
- 日本国籍、またはURが定める資格を持つ外国籍の人
- 単身者もしくは現に同居し、または同居しようとする親族がいる
- 申込者本人を含めた同居世帯全員が、URが定める入居開始可能日から1か月以内に入居でき、物件内で円満な共同生活を営むことができること
- 申込者本人を含めた同居世帯全員が暴力団員などではない
- 5. は問題ないでしょう。3.も母子家庭なら母親と同居する子供がいるので問題はなし、4.は入居時期にさえ気を付けていれば大丈夫。で、問題なのは1.です。
1.は、要は、ある一定以上の収入がないと申し込みできないですよ、ということを言ってますよね。収入は多くはないけどある、という母子家庭の方は多いと思いますが、この基準月収額というのがやっかいで、下表のように決められています。
家賃額 | 基準月収額 |
82,500円未満 | 家賃額の4倍 |
82,500円~200,000円未満 | 330,000円 |
200,000円以上 | 400,000円 |
家賃が一番安い82,500円以下であっても、家賃額の4倍もの月収がいるんですよ。家賃7万円なら、7万円x4=28万円の月収です。母子家庭でなくても、安定的にこれくらいの月収はきびしいですよね。
ということもあり、実は平均月収が基準月収額よりも少ない世帯のために、以下の救済制度が別にもうけられています。
救済制度
救済制度には次の3つがあります。
- 家賃等の一時払い制度
- 貯蓄基準制度
- 収入基準の特例
家賃等の一時払い制度
一定期間分の家賃と共益費をまとめて前払いする(一時払い)と、その期間中は家賃が割引される制度で、収入の条件がなくなるので、最初に払うお金があれば、月収が足りなくても入居することができます。
ただし、一時払いが認められる期間は最低1年ですので、家賃7万円ならその1年分=7万円x12=84万円プラス、共益費を用意する必要があります。実際は、さらに引っ越しの費用などもあるので、相当な金額の貯金が必要になります。
貯蓄基準制度
申込者本人の貯蓄額が、基準貯蓄額以上ある場合、基準月収額を超えていなくても入居することができます。ただこの基準貯蓄額は、なんと家賃の100倍! 家賃7万円ならその100倍=700万円もの貯蓄が必要なので、こちらはさらに難しそうです。
収入基準の特例
申込者本人の平均月収額、貯蓄額がいずれも基準額より少ない場合の救済制度で、基本は、少ない度合いが基準の1/2以上の世帯が対象ですが、ここに母子家庭のための優遇制度があります。
母子家庭のUR賃貸住宅の優遇制度
先に、収入基準の特例は少ない度合いが基準の1/2以上の世帯が対象、と書きましたが、満18歳以上の学生、父子母子家庭、障がい者、高齢者の方であれば、基準の1/2以下でも申し込みすることができる、となっています。
これが母子家庭のUR賃貸住宅の優遇制度です。所得や貯蓄の多くない世帯の方にも入居ができるようにと考えられた制度なのですが….
実は母子家庭であれば誰でも申し込みできるわけではありません。ここでもやはり、次のような条件があります。
・扶養等親族の平均収入額が基準月収額以上あること、または貯蓄額が基準貯蓄額以上あること。
・扶養等親族が、家賃等の支払について、申込者本人と連帯して履行の責を負うことを確約すること。
言い換えますと、自分では月額所得、貯蓄額とも条件にあてはまらないのであれば、親族で当てはまる人がいて、その人が支払いの責任を負ってくれるのであれば借りられますよ、ということです。
手厚いバックアップをしてくれる親族がいることが前提になりますが、このような母子家庭のための優遇制度はあります。
母子家庭も利用できるUR賃貸住宅の家賃割引プラン
ここまで、UR賃貸住宅を借りる条件と母子家庭のための優遇制度を見てきました。結果は、やっぱり借りるのは無理…と思われた方は多いかもしれません。
でも少し待ってください。実はUR賃貸住宅には、ほかにも色々と家賃を割引してくれるプランが用意されていて、利用できる条件も母子家庭にとってそれほどきびしくありません。
そのため、入居する時に頑張って貯金しておいて、入居したら割引を受けて家賃を下げる、という方法も考えることができるんですよ。
参考までに、いくつか紹介します。
そのママ割
満18歳未満の子供と同居し、扶養している世帯が対象で、3年間の定期借家契約となり、かなり安い家賃で借りることができます。
子育て割
子育て世帯で世帯所得が月25.9万円以下の世帯が対象で、25,000円の減額を上限とし、家賃が20%割引になります。
このほかにも割引制度がありますが、母子家庭が利用できそうなのは上の2つくらいと思います。
UR賃貸住宅は、きれいで部屋も大きめ、生活に便利な地域に立っていることが多いことから母子家庭の方も気になっている人は多いと思いますが、借りるための条件には十分注意が必要ですね。