母子家庭は経済的にも苦しい家庭が多く、自分や子供がケガや病気などで病院に行きたくても、治療費が心配で行くのをためらう場合もあります。
そんな時に頼りになるのが「ひとり親医療証」の制度です。
この制度はその名の通り、母子家庭をはじめとするひとり親世帯を対象に、医療費の優遇、免除をするためのもので、経済的な支援を目的としています。
ただし、この制度は母子家庭世帯なら誰でも受けられる、というわけではなく、いくつか条件があり、またその条件に当てはまっていても助成が受けられないケースがあるなど、結構複雑です。
医療費は、普段は意識していませんが、いざ病院に行かなくてはいけなくなったというときに大きな負担になりますよね。もしこのひとり親医療証のことを知っていれば、すこしても負担を軽減することができるでしょう。
そこでここでは、ひとり親医療証の助成が受けられる条件について、詳しく解説していきますので、ひとり親で医療費が心配な方はぜひ参考にして下さい。
ひとり親医療証の所得制限、どんな条件がある?
ひとり親医療証の助成は、正式には「ひとり親家庭等医療費助成制度」と言い、大阪府のホームページでは、次のように定義されています。
親が離婚したり、死亡した等の児童の家庭に対して、必要とする医療が容易に受けられるよう医療費の自己負担額の一部を助成する制度です。
また、基本的には市町村によって実施されています。
ひとり親医療証の助成の対象となる人
ひとり親医療証の助成の対象なる人は、基本的には次の3つのパターンです。
- 母子家庭の母親と子供
- 父子家庭の父親と子供
- 父親母親ともいない子供
この場合子供とは、小学校以上で18歳になった年度の3月31日までが対象で、小学生未満の子供は対象にはなりません。
また市町村によってはこの3つ以外でも対象になる人もいますので、実際には居住地の窓口に確認してみましょう。例として東京都中野区では、次の方を対象としています。(中野区ホームページより)
- 父母が離婚した児童
- 父または母が死亡した児童
- 父または母が重度の障害を有する児童(身体障害者手帳1・2級程度)
- 父または母が生死不明である児童
- 父または母が法令により1年以上拘禁されている児童
- 父または母が裁判所からのDV(配偶者からの暴力)保護命令を受けた児童
- 父または母に1年以上遺棄されている児童
- 母が婚姻によらないで懐胎した児童
ただし、この条件に当てはまっていても助成の対象にはならない場合があるので、次にどういうケースでは対象にならないか、見ていきます。
ひとり親医療証の助成の対象とならない人(東京都中野区ホームページより抜粋)
- 申請者または扶養義務者(申請者の同居親族)の所得が所得限度額以上(所得制限)の方
- 健康保険に加入していない方
- 生活保護を受給している方
- 児童が児童福祉施設等に「措置」により入所、または里親に委託されている方
- 事実婚状態(異性と同居等)と認定された方
その他の地域でも表現は若干異なりますが、同じケースが助成の対象からはずれることになっています。
以上挙げた条件の中でも、世帯の状況によって変わるのが所得制限です。
ひとり親医療証の所得制限はいくら?
まず、ひとり親でも所得が一定金額以上ある場合は対象外となります。そして扶養家族が何人いるかによって所得制限による限度額が変わってくるのが基本ですが、それ以外にも、養育費が関係している地域もあります。
そこで次に、所得制限の具体的な所得額について見ていきます。この所得制限額は給与所得控除・社会保険料を差し引いた金額です。
扶養親族等の数 | 父または母および 孤児でない子の養育者 | 孤児等の養育者、配偶者、 扶養義務者の所得限度額 |
0人 | 1,920,000円 | 2,360,000円 |
1人 | 2,300,000円 | 2,740,000円 |
2人 | 2,680,000円 | 3,120,000円 |
3人 | 3,060,000円 | 3,500,000円 |
4人 | 3,440,000円 | 3,880,000円 |
5人 | 3,820,000円 | 4,260,000円 |
4人以上子どもがいる場合は、1人増えるごとに扶養人数3人の金額に38万円を加算した金額となります。
ここで注意したいのは自治体によっては、父親から養育費を貰っている場合だと、それも所得として加算されることで、中には養育費のうちの80%を加算するところもあります。
ひとり親医療証の助成が受けられる条件はわかりました。では、どれくらい医療費は助成されるのでしょうか?
ひとり親医療証の所得制限、助成される医療費は?
ひとり親医療証の助成内容は、主に何割は自己負担と割合で決まっているところと、何円までは自己負担と最初から自己負担の上限が決まっている自治体があります。
例えば東京都中野区の場合、かかった医療費の1割が自己負担です。しかしそれだけだと高額医療では個人の負担が大きくなってしまうので、自己負担の上限金額が次のように決められています。
外来
自己負担の月額上限は1万8000円、年間の上限額は144000円
入院
自己負担の上限額は5万7600円
もし一つの病院だけでなく複数の病院を受診している時には、自己負担の限度額は合計金額となります。
また北九州市の場合は、保険診療による自己負担額から一定の金額を除いた分を助成してくれるほか、薬局での自己負担もなくなります。
利用者の自己負担の、自治体により非課税世帯では医療費は無料になるところもあります。他にも何円までの自己負担の自治体だと、小学生と中学生は月に500円まで、高校生だと月800円まで、親は月に800円までです。
ひとり親医療証は国ではなく自治体の制度になることから、これまで見てきたように住んでいる自治体で助成内容などが違うので、確認は欠かせないですね。
医療費が無料・自己負担の何割・上限額の何円までと決まっていて、母子家庭世帯にとっては経済的な負担をかなり減らすことができます。
ただし、医療費の助成といっても全ての医療が対象になるわけではなくて、対象外になる医療費もあります。
ひとり親医療証の所得制限、助成が受けられない医療費はある?
一般的に対象となるのは診察・入院・薬・訪問看護ステーション、対象外になるのは健康診断・予防接種・歯医者の特別治療・個室などの差額です。
注意したいのは、治療の途中で状況が変わった場合です。
最初はひとり親医療証で助成を受けていても、途中で次の事に当てはまったときは、助成は受けられなくなります。
- 生活保護を受ける
- 健康保険に加入しなかった
- 子供が児童福祉施設などに入所
- 所得上限額を超えた
これ以外にも、申請した自治体から転出したり、結婚をしてひとり親にならなくなった場合です。
結婚については婚姻届を提出しているかだけでなく、事実婚が認められた場合も対象外となる自治体もあります。
最後にひとり親医療証を受けるまでの手順です。
ひとり親医療証の所得制限、申請の手順は?
ひとり親医療証を受けるためには、ひとり親本人の申請が必要で、必要書類として健康保険証・戸籍謄本・児童扶養手当証を揃えます。
中には住民税課税(非課税)証明書や、個人番号がわかる書類の提出も必要なこともあるので、先に窓口で確認しておいた方がいいでしょう。
申請が通ると医療証が届くので、これを医療機関に受診するときに健康保険証と一緒に出します。
医療証は申請をした自治体でしか使えませんが、住んでいる自治体以外の病院で受診したときには後から申請して払い戻しを受けることができます。このとき、領収書が必要になるので、必ず保管しておきましょう。
申請後に医療証が届く前に受診した時にも後から助成を受けられますが、こちらも後からの申請となるので領収証が必須となります。